【第16話】異世界には癒しがない!?
「ここが武器屋。奥には作業場が併設されているけど……危ないから近寄らないようにな」
「は、はい!」
俺は今メルにギルドの事を教えている。
エミリーは……レナに押し付けてきた。
「で、あそこがカウンター。クエストとかはあそこで受け付けている。まあレナは多分カウンターで働くことになると思う」
「カウンターですか……分かりました!」
(ああ……癒される……)
俺の周りにはドSのお姉さんとか、アホの子とか、挙句の果てにドレス姿のオッサンとか……常に心が休まらない状態だった。
それに比べメルは良い娘だし……見ていて癒される。
(ここがオアシスか……)
「あの……ソウマさん? その、何故そんなに見ているのですか……?」
メルが少し首を傾げながら聞いてきた。
「あ、いや可愛いなって思って……」
「あうう……かわいいだなんて……」
(可愛い!)
メルが顔を赤くして照れる。
(でもこれ他の人から見たらちょっとまずいよな……)
俺とメルの年齢は一つ違いだが、メルの見た目が幼く、周りから見れば、良くて年の離れた兄妹、最悪の場合、ロリコンに見えるかもしれない。
そんな事を考えていると、急に後頭部に衝撃を受けた。
「もう! ソウマさん! メルちゃん困らせちゃダメですよ!」
振り返ると、不機嫌そうな顔のレナが立っていた。
……その横には怪しく微笑むエミリーがいた。
「あう……で、でも! イヤじゃなかったので大丈夫です!」
(ええ子や……)
「んで? レナは何か俺に用でもあったのか?」
俺の後頭部を強打し、癒しタイムを中断したぐらいだ。
もちろん何か重大な用があったんだろう。
「もちろんですよ! えーとですね……むむむ? えっと……特になかっ」
「有罪!」
レナが言い終わらないうちにアイアンクローをお見舞いする。
「いだだだだ!? せ、せめて執行猶予をぉ!」
「情状酌量の余地なし! このまま逝けぇ!」
「ぎゃああああ!?」
俺の数少ない癒しを潰した罪は重い。
「あらあらぁ……仲良いわねぇ」
エミリーが俺達を眺めなが言う。
「ううう……仲が良いならこんな事されませんよ……」
俺のアイアンクローから開放されたレナがエミリーの元へ向かう。
「ふふっ。これは強力なライバル出現ねぇ。ソウマ君モテモテねぇ!」
エミリーの言うライバルは何のことか分からなかった。
いや、分かりたくなかった。
「はあ……俺がモテてるように見えますか?」
「少なくとも私は好きよぉ♪」
エミリーが恐ろしい事を口走った。
「それは仕事仲間としてですか!? そうですよね!?」
「もちろん異性として……? いや同性かしら……」
いくら元の世界で恋愛経験が無いからって筋肉隆々のオッサンは無理。
「あの……エミリーさんって男の人なんですか?」
メルがエミリーに話しかける。
メル……この筋肉、うっすら生えているヒゲ、男らしい低い声を聞いてここにいる生物を女だと認識する人はいないと思うぞ……。
「ふふふ……私はねぇ"オカマ"っていうとても珍しく、気高き種族なのよぉ」
「そうなんですか!」
メルの目が輝く。
頼むからこの純粋な子に変な事を教えこまないで欲しい。
「男の強さ……女の美しさ……その両方を兼ね備えた……いわば一種の"芸術作品"なのよぉ!」
「す、すごい……!」
美しさ……? 少なくとも男の強さは確実に備えていると思う。
「はあ……何が"芸術作品"ですか! ゲイ術作品の間違いでしょう!」
「あら、ソウマ君ったらうまいこと言うじゃない。ご褒美にイイことしてあ・げ・る♪」
――ゾクッ
背筋に冷たいものが走る。
「も、もうイヤだ……」
どうやら俺は1回癒されると10個試練が降りかかる体質みたいだ。




