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異世界には「アレ」がない!?  作者: 和口
第1章 ベスティア王国編
13/37

【第13話】異世界には自信がない!?

※この世界の通貨

1ゴールド=1円

「違うな……」


 スラッグさんが帰った後の5日間はほとんどの時間をギルドの作業場で過ごした。


 詳しい手順の載った本と睨み合いながら失敗作の山を見る。


 (手順は一応合っているはずなんだけどな……)


そんな事を考えながら慣れない氷魔法を使って鉄を冷却する。



――――――――――――――――――――――



「やっぱりダメか……」


 出来上がったのはやはり失敗作。

 形にはなっているが、スラッグさんの物と比べるとやはり見劣りする。


「あら? 頑張っているわね」


 作業場にルナさんが入ってくる。


「いや……それが全然ダメで……失敗作ばかりなんです」


 そう言って失敗作の山を指さす。


「これが失敗作? てっきり完成品をここに置いてるのかと……」


 ルナさんが不思議そうに失敗作を手に取る。


「えっ? で、でもスラッグさんの造った物と比べると……」


「はあ……あなたね、明らかに比べる相手が悪いわよ。相手は王国で一番の鍛冶屋よ? それと同じものを初心者が造れる訳ないじゃない」


 呆れたような顔でルナさんが言った。


 確かに、よく考えてみればそうだ。

 向こうは本職でその道を極めているのに対して俺は始めたばかりの初心者だ。


 同じものを造れるはずが無い。


「ほらほら! ボーッとしてないでさっさと働きなさい! そこの剣の山を仕上げたら早速武器屋に並べるわよ!」


「ええ!? でもこんなのじゃ売れないんじゃ……」


「だからね〜! "あの"スラッグに技術を伝授されたのよ? 売れないわけないじゃない」


 伝授……? スラッグさんには特に何も教えて貰ってないんですが……



――――――――――――――――――――――



「な、なんじゃこりゃ……」


 失敗作(?)の剣の仕上げを終えて作業場から武器屋に来たはいいのだが……


「テメェ! 今抜かしただろ!」

「ぬ、抜かしてませんよ!」


 武器屋の窓越しに見える長蛇の列。

 よく見るとその列の先頭はここの入口のようだ。


「ル、ルナさん……これは一体どういう事でしょうか……?」


「ふふふ……これを見てみなさい」


 そう言ってルナさんは新聞みたいな物を渡してきた。


「ええと? 【ベスティア王国一の鍛冶屋スラッグ。弟子は取らないと言っていたのは嘘か!? 辺境の若き鍛冶屋に技術を伝授】 ……って何ですかこれ!?」


 その新聞には俺とスラッグさんが作業場で一緒にいる写真が一面に掲載されていた。


「どこから情報が流れたかは知らないけど〜まあいいんじゃないかしら? これでギルドも少しは賑わうし、武器屋も繁盛するわね♪」


「でもちょっと取り上げられた位でこんな集まりますかね?」


「うーん……それもそうかも知れないけどベスティア王国じゃロクな記事が無いから……ちょっとしたニュースでも過敏に反応するんじゃないかしら♪」


 (楽しそうだな、ちくしょう……)


 そんな事を思っているとルナさんが武器屋のドアを思い切り開け、こんな事を言った。


「さあ! 皆さんお待たせいたしました! ベスティア王国の誇る鍛冶屋の一番弟子の造ったロングソード、販売開始です!」


「「「「「おおおおおおお!」」」」」


 凄い勢いで人が流れ込んでくる。

 ふと見ると、武器屋のカウンターでレナが会計を担当している。


「さあさあ! ソウマさんのロングソード! 1本2万ゴールドですよ!」


 レナ、その言い方は何だか意味深だからやめようか。

 というか2万ゴールドって高くないか?

 この世界の一般的な1日の食費が1000ゴールド程だから……20日分の食費に相当する。

 もっと安くないと売れないんじゃ……


「毎度ありがとうございま〜す♪」


「はいはい! あっ! すいません……お一人様一本までなので……」


 めっちゃ売れてた……


 何故売れるのかよく分からない俺は並べられている剣のうちから一つを抜き取った。


 やはりスラッグさんの物と比べると見劣りするな……とか思っている俺に鎧姿のおじさんが声をかけてきた。


「おう! 兄ちゃんが噂のスラッグの一番弟子のソウマってやつかい?」


「えっ? 確かにソウマは俺ですが……でも、一番弟子なんて……俺はただ、1回だけスラッグさんの仕事を見てただけなんです。正直コレが売れた後に返品されないか心配するくらいで……」


 もし、お客さんが買ったこの剣が使い物にならなくて魔物に怪我でもさせられたらと思うと……ゾッとする。


「ははは! 謙遜なんてしなくていいんだよ! そこらにいる買っていく冒険者だってバカじゃねぇからな。ちゃんとその剣が"良い物"だって分かってるから買って行くんだよ」


 そのおじさんの言葉を聞いていると何だか心の奥から熱い気持ちが湧いてきた。

 それがおじさんの巧みな話術のせいなのか、あるいは自分の造った物を褒められたからなのかは分からない。


 そんな事を考えていると……


「完売しました! ありがとうございます!」


「もう売り切れてしまったの。ごめんなさいね〜。またのご来店をお待ちしております」


 (完売……? 嘘だろ? ルナさんのドッキリか……?)


 状況が飲み込めていない俺におじさんが言う。


「ほらな? 言ったろ? 良いものを作れば誰もがそれを欲しがるし、悪い物なら誰も見向きもしない。それが商売ってもんだ」


 おじさんはそう言うと俺が持っていた剣を取り、代わりに袋を渡してきた。


「じゃあな、これからも頑張れよ"スラッグの1番弟子"」


 おじさんはそう言い残すと武器屋から出ていった。


 袋の中には代金である2万ゴールドが入っていた。

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