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異世界には「アレ」がない!?  作者: 和口
第1章 ベスティア王国編
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【第1話】異世界には説明がない!?

『もう……やめてくれ……』


 俺は駅のホームで嗤う彼女にそういった。

 電車の到着時刻を告げるアナウンスが鳴り響く。


『あなたは最後まで私を受け入れようとしなかった。これはその報いよ』


 彼女は狂気を感じさせる笑みを顔面に貼り付け、俺を見据える。


『もう俺に構わないでくれ! 何でお前は……俺を……』


『あら、でもどれだけ私と離れたってあなたは私の事を忘れない…………いえ、忘れられないわね』


 彼女はそう言うと、黄色い線を越え、1歩前に踏み出した。

――そしてそれを待っていたかのように電車が通り過ぎる。


 白い車体に赤い鮮血がよく映えた。



――――――――――――――――――――――



 頭痛と共にゆっくりと目を開ける。

 "また"あの夢を見ていたようだ。


 嫌な気分を紛らわそうと思い、大きく伸びをする。

 寝ぼけたまま、ベッドから這い出る。


 (……ベッド?)


 異変に気が付き、辺りを見回す。

 ログハウスを彷彿とさせる内装、几帳面に巻数順で並べられた本、小綺麗なベッド。


 そこは明らかに俺の部屋では無かった。

 俺の部屋は年中散らかっており、本もその辺に積み上げ、今にも崩れそうな状態だった。

――そして俺は生粋の布団派だった。


 昨日は確か学校から帰るなり、愛しの布団に身を投げ出し……そのまま就寝したはずだ。


 (どこだよここ!? まさか誘拐!?)


「…………!」


「………?」


 そんな事を考えていると、壁を1枚隔てて話し声が聞こえてきた。

 語調からして、何か言い争っているようだが……よく聞こえない。

 壁に耳を当てて、耳をすませる。


「……だからさっさと消した方が良いって!」


「えっ」


「えっ?」

「あら?」


 まずい、思わず声が出た。


 というか消す?まさか俺のことか?


 (だとしたら結構ピンチなんじゃ……)


「ねえ……今声が……」

「もしかしたら成功したんじゃないかしら?」


 ヤバイ


 反撃? それとも大人しくしてるのが吉か?


 そうこうしてるうちにドアの鍵が開く音がした。


 (どうしよう……無駄に抵抗しない方が身のためだよな?)


――ガチャッ


 部屋に入ってきたのは2人。


 1人目は黒髪のロング、モデルだと言われても違和感の無い整った顔立ちの女性。


 そして2人目、ほんの少しの幼さを感じさせる雰囲気に、短めの茶髪がよく似合っている女性。


 普通なら胸が高鳴る状況だが、黒髪の女性が持つデカイ包丁みたいなものを見据えてしまった俺は、別の意味でドキドキしていた。


「あれ? 人?」


「あら? 珍しいこともあるのね。まあ人"型"でもこれなら確実に仕留めれるしね〜♪」


 そう言って黒髪の人が包丁をぶん回す。


「危なっ!? 仕留めないでね!? 多分普通の人だよ! 多分……」


「あ、あの……」


「「はい?」」


 (おおう……息ピッタリ……)


「ウチあまり裕福な家庭じゃないし……身代金とかなら他を当たることをおすすめしますが……」


「「?」」


 2人ともキョトンとした顔をしていた。


 実際、俺の家は裕福では無く、物心つく前に父が蒸発、母は去年に他界してしまった為、祖父に学費を援助してもらい、アルバイトをして何とか生活している。

 当然、身代金には期待出来ないだろう。


「えーとね、何か誤解してるみたいだけどアタシ達は別にあなたに何かしようとしてる訳じゃなくて……」


「私はするけどね♪」


「えぇ……」


「お姉ちゃんは黙ってて!」


 (姉妹だったのか? その割には似てないな……)


「はぁ……そうだ、あなた名前は何て言うの?」


「ええと……木之創間(もくのそうま)って言います」


「ほらね! やっぱり人間じゃん!」


「ふぅん……変わった名前ね」


 どうやらこの人達は身代金目的の誘拐犯とかでは無いらしい。


 雰囲気からも悪い人では無さそうだが……


「えっと……それで俺は何故ここに?」


「えっと、実は……あなたはお姉ちゃんに召喚されたんです……」


「えっ?」


 (召喚? この娘は何を言ってるんだ?)


 召喚といえば……ファンタジーな世界のあれか?

 しかし召喚? 新手のドッキリか?


「ええと……とりあえずというか……ここはどこですか?」


「ここですか? ここはベスティア王国のサンベルク東区ですが……ちなみに、ソウマさんはどこ出身なんですか?」


 茶髪の方の女性が答えてくれた。

 しかし、ベスティア王国もサンベルクというのも聞いたことのない地名だった。


「えぇ……? 俺は日本の東京に住んでますが……」


「ニホン……? お姉ちゃん知ってる?」


「うーん……知らないわね……もしかして召喚酔いで記憶がグチャグチャになっている可能性も……」

 

「えぇ!? もしそうだったらあの人どうするの!? 騎士団に引き渡す訳にも行かないし……」


 2人の会話を聞いていると頭が痛くなってくる。

 「召喚」だとか「騎士団」だとか……まるで違う世界に来たみたいだ。


 ドッキリにしては手が込んでいるし、辺りを見渡しても、カメラらしきものは見つからない。


 それならば外から撮影しているのでは? と思い、窓から外を覗く。


――最初に目に飛び込んで来たのは路地だった。


 中世ヨーロッパを彷彿とさせる、レンガ造りの建物。


 首が2本の馬が引く馬車。


 オリに入れられ、運ばれる謎の生物。


 明らかに何かがおかしい。


 最初は誘拐、ドッキリ等を考えていたが、この景色を見てタイムスリップでもしたのかと思う。


 しかし、タイムスリップだとしても、過去に首が2本ある馬などいるわけが無いし、先程の謎の生物にいたっては怪物のような見た目だった。


「ど、どういう事だ……? ここはまるで……」

 

「だ、大丈夫? 顔色悪いわよ?」


 昔、ネットの掲示板で見た書き込みを思い出す。

 それは異世界に迷い込んでしまい、自分が帰れなくなったみたいな話だった。


 当時、その話を読んだ俺は、「帰れなくなったなら何でコイツ書き込んでんだ?」とか思い、信じていなかった。


 しかし、俺が今置かれている状況は、その書き込みとよく似ていた。


「だ、大丈夫です……」


 深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。


 もしも、あの書き込みのように、異世界に迷い込んでしまったのならば、もう二度と元の世界には戻れないのかもしれない。


 (元の世界か……)


――『あなたは私の事を忘れない』


 鮮明に蘇る凄惨な記憶。

 背中に走る嫌な感覚。


 事情が事情なだけに戻りたいと思わないし、出来れば考えたくもない。


「あの……ちなみに俺はなんで召喚されたんですか?」


 俺は、この世界で生きる決意をし、情報を少しづつ集めていくことにした。

 ダークな感じというか……暗い始まり方になってしまいましたが基本はコメディみたいな感じです!


 基本は……



※第1話を無断で大幅に改稿し、普段から読んで下さっていた方には多大なるご迷惑をおかけしました……

 改稿した第1話を読まなくても大丈夫なように、これからの展開は微調整していきます。

 最初から読んで頂いていた方々、誠に申し訳ありませんでした。

 

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