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第十二話 勇者は恋人を選ぶ時結構悩む

 櫻子が帰った後、部屋にやっと帰れた俺は、その日はもう九時半を回っていて、疲れが溜まっていたので、そのまま布団をしいて、ぐっすりと眠ってしまった。


 ______________________________________


 翌朝


「う……ん……あ?いい匂い……。はっ!?」


 朝、目を覚ました俺は何かを炒める音と匂いを感じた。


 とてもいい匂いだったが、勇子が作っている光景が目に入り、昨日のようなカラスと雑草の朝ごはんではないかと、不安に思い、飛び起きた。


「お、おはよう、勇子。な、何を作ってるんだ?昨日のゴタゴタで疲れているだろう?俺が作ってやるから休んだらどうだ?ハハ…」


 何かを炒めながら、勇子は上目遣いで俺をジッと見つめる。


「いや、私は言わば居候だ。何かをしなきゃ気がすまん。それに、分かってるぞ?カラスが本当は苦手なんだろ?気を遣わせてすまなかったな」


 ゆ、勇子……!! お前はそこまで俺のことを……!!


「今度はカエルを使った料理だ!!きっとお前も美味しいって思うぞぉ!!」


 満面の笑みで言われた……。やっぱ俺のこと分かってねーわ……。まぁ食べるけどね?……てか都会でよくカエル見つけてきたな……。


 ______________________________________


 人間の慣れは怖い、カエルも充分に拒絶する対象ではあるのだが、カラスよりはマシだと思ってしまった。


 つまり、カラスほどの抵抗感がカエルには無かったのだ。驚くべきことだ。


「カエルも初めて食べた……。なかなか……。いや、考えるのはよそう……」


 俺は、カエルの後味を感じながら、学校の準備をしていた。


「ん、そろそろヒメが来るな」


 そろそろ幼馴染のヒメが来る頃なので、それまで部屋でのんびりしてよう。


『ピーン ポーン』


「お?来たか?」


 俺は、ちょうどよくヒメが来たと思い、ドアを開けた。


「よぉヒ…め…?」


「ひめ?誰じゃ?それは。我は魔王じゃが」


「きっと魔王子ちゃんが可愛すぎて、お姫様に見えちゃったんだよ!!」


 だが、そこにいたのは、魔王子と、昨日と違って快活な、いつもの櫻子だった。


「なん……で?」


「我が知りたいわ!!こやつが朝から我を訪ねて来て、我とゆーまで登校したいと聞かんのじゃ!!」


「えー?魔王子ちゃんだって悠馬くんと行きたいくせに!!」


「ふん、そんなこと一言も言うとらんわ」


「ま、まぁ二人とも……ってあれ?」


 二人の後ろを見ると、ヒメがいるのが見えた。だが、距離をとってこっちに来ようとしない。


「……?おい、ヒメ何やって……?」


 ヒメは俺の呼びかけに気付いているようだが、一向に近づこうとしない。


「そ、そうだよねー。ユウくんも、もう高校二年生だもんねー。か、彼女くらい……できるよね。彼女の一人や二人……カッコいいもんねー……」


 そういってヒメは走って行ってしまった。


「お、おい、待て!!どうしたんだ!?」


 後を追わなきゃいけない。そう思った。ここで追わなかったら、ヒメとの距離が遠くなってしまう気がした。


「ちょっと!!悠馬くん!?……行っちゃった」


 ______________________________________


「おい!!待てって!!」


 ヒメはしばらく逃げていたが、追いつかれると分かったのか徐々に速度を緩め、歩きながら俺を待つようだった。


「おい、ヒメ?どうしたんだよ?」


 やっと追いついたが、ヒメは顔を伏せている。表情が読み取れない。


「何でもない……」


「何でもない訳ないだろう?何があったか言ってみろよ」


 相変わらず表情は読み取れない、だが、ヒメの様子は明らかに違う。体全体を震わせて、何かを堪えてるようだった。


「……悲しいの」


「え?」


「……ユウくんは……ずっと……私がそばにいてぇ……そばにいなきゃ……そう……思ってたのにぃ……私がいなくても……ユウくんは……大丈夫になってぇ……グスッ……悲しいのよぉ」


 ヒメは涙をこらえていたのだ。だが、話し始めると、堰を切ったように、とめどなく涙が溢れた。


 俺が遠くに行ってしまう?なんでそんなことを思ったんだろうか?そんな心配は不要だろう。


「なぁ。ヒメ?俺がいつ、ヒメが側にいなくても大丈夫って言ったんだよ?」


「……ふぇ?だ、だってあの二人は……」


「あ、あれはただの友達だ!!だけどヒメは昔からの幼馴染だし。俺にとって特別な存在っていうか……まぁ、あれだ。一緒にいて落ち着くんだ。これからも迷惑かけてやるから覚悟しろよ」


「ふぇ?そうなの?……良かったぁ。グスッ……ごめんね……ユウくん。私、安心したよ……」


 そう言って、ヒメはいつものように笑ってくれた。結局、俺はこの笑顔が有る限り、ヒメから離れることはないかもしれない。安心感がすごいね。


「そ、それじゃあもう結構きちゃったけどー、歩こうかー?ユウくん」


「あ、あぁそうだな」


 すっかりいつもの櫻子になったが、なんとなく照れくさそうだ。


 そうして、二人で歩き始めようとした時、何者かが俺の肩を掴んだ。


「のぅ?お二人さん?我も一緒でいいか?」


「すごーい!!悠馬くんってすごいモテるんだね!!やっぱりカッコいいよ!!」


 振り向くと、そこには魔王子と櫻子がいた。まさか全部聞いていたのか……?恥ずかしいぞこれは……。


「ねぇねぇ、あなたって悠馬くんの幼馴染の藤咲ふじさき 愛姫まなひめちゃんでしょ?」


「えー?なんで知ってるのー?私あなたと会ったことあったっけ?」


「フフッ、色々と知る手段はあるんだよ?」


 おおかた、俺の周辺をあらかじめ調べられているのだろう。……不安が押し寄せてくるな。


「ねぇ、魔王子ちゃん?愛姫ちゃんも、仲間にいれてあげようよ!!」


「ん?仲間?我のしもべに加えるということか?」


「もー、違うよ」


 櫻子は指を立てて、チッチッチと振る仕草をした。


「悠馬くんを愛する人として、友達になろうってこと!!」


 ……おい。それは本人の前で言う事じゃないんじゃないか?というか、ヒメはそんなんじゃないぞ。


「あなた達も悠馬くんの事が好きなのー?」


 ヒメが二人の顔を覗き込む。


「うん!!大好きだよ!!」


「わ、我は……まぁ、一応な」


 ……照れくさいわ!!というか、ヒメの好きはそういう好きじゃないだろ。幼馴染としての友達って感じの好きだろ。


「愛姫ちゃんも、悠馬くんを愛してるんでしょう?」


 全く聞いてられんな。世の中そう極端じゃないんだ。ここはヒメに助け舟を出してやるか。


「おい、さっきから聞いてれば、ヒメは幼馴染でそんなんじゃ…….」


「愛してるよー?ユウくんのこと」


 …………………はぇ?


「だってー、東京に来たのだってー、近くに引っ越したのだってー、ユウくんと離れたくないからだし。小学三年生くらいから好きだったんだけどなぁー。気付いてくれないんだもんなぁー。ふふっ」


「じょ、冗談だよなぁ?」


「ううん。じょーだんじゃないよ?いっつも通学の時はドキドキしてたんだよー?」


 ……え!?……ま、まじかぁぁああああああああ!?そんなことが!?


「クフフッ!!ここにも我の恋敵がいたようじゃなぁ!!」


「よーし、この勢いで、悠馬くんファンクラブでも作りますか!!メンバーはこの三人で!!今日の午後四時から!!魔王子ちゃんの部屋ね!!集まろう!!」


「な、なんじゃそれは!? 何でそんなモノに我が参加せねば……」


「おもしろそー。 ユウくんのちっちゃい頃の写真とか持ってこよーか?」


「むぅ、参加してやらんこともないのぉ」


 ……やばい。何故か俺のファンクラブが結成されようとしている。ちょっと嬉しいが…….。俺の個人情報がだだ漏れるだろこれは。


「それじゃ、私達は学校に行ってるから!!あとは愛姫ちゃんと、悠馬くんで頑張れ!!」


 そう言って、二人は俺たちを残して足早に投稿していった。


「ちょっ!?ちょっと待っ……」


「ねぇ、ユウくん?」


「な、なな、何?」


 落ち着け、動揺しているぞ。深呼吸、深呼吸。


「改めて言わせてね」


「え?」


 ヒメは俺の目をジッと見つめている。


「ずっと前から好きでした」


 空気を読んだかのように、風が二人の間を通り抜けた。俺は……なんて答えればいいんだろう。


「フフッ……こういうの照れくさいねー?」


「ひ、ヒメ、俺は」


「いいよ。言わないでも」


「え」


「私の気持ち、知ってもらいたかっただけだもん。すっきりしたよ。答えなんか聞かなくてもいいよー。だって私達って、側にいて安心しあえる。そういう関係でしょ?それなら友達だって、恋人だって変わらないよー?」


「で、でもさ」


「大事なのは、ずっと一緒に居られるってこと。簡単なようで意外と難しいもんだよー?」


「……そうか」


「じゃあ歩こっか?」


「あぁ。……俺からも一つ言わせてくれ」


「ん?」


「ずっと一緒にいような」


「……うん!!」


 そうして、俺たちはいつものように歩き出し

 た。いつものように。


 学校には五分遅れたけど。



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