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Night without the end  作者: 聖柊希美
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第五話 捜索

 争助達はまず、ドアが壊されていた被服室へと足を運んだ。


 「燐音ー、此処に居るのかー」


 中に入るなり、争助が叫んでみた。だが、やはりと言うべきか誰も出て来なかった。


 「此処には居ないのか?」


 「まだ分かんないよ。ちゃんと教室内を探してから出て行かない?」


 「それもそうね。じゃあ、教室を探してみましょう」

柊子がそう言うと、全員分かれて燐音を探し始めていった。

 だが、教室の下やロッカーの中などをくまなく探していったが、人影すら見つからなかった。


 「やっぱり居ねぇな。別の教室に居るのか?」


 「そうみたいだね。別の教室に行って、燐音を探してみようか」

蓮人がそう言い、三人は被服室を後にした。


 

 


 ……薄暗い明かりの中、私は目を覚ました。


 「此処は……?」

そうつぶやき身体を動かそうとすると、何故か身体が全く動かなかった。自分の身体を見てみると、椅子に座っている状態だったが、身体に鎖が巻き付けられていた。


 「何これ!?」

必死に鎖を解こうと激しく暴れたが、やはり鉄と言うべきか、全くびくともしなかった。幾度か繰り返したが、結果は同じだった。

 そんな事をしていると、前から何かが歩いて来ている足音が聞こえた。前を向くと、そこには私を襲い、気絶させたあの化物がいた。しかも、手には人の身体など簡単に真っ二つに出来るだろうという、巨大な刃物を持っているというおまけ付きで。


 「ヒッ!」

私は、死に物狂いで鎖から抜け出そうと試みた。しかし、その行動は虚しく終わった。

 化物は私の行動が癪に障ったのか、解こうとしている私の前に立つと、刃の背の部分で頭部を殴った。


 「きゃあっ!」


 鈍い音と共に、私の頭部は激しく揺れた。よほどの威力だったのか、頭部から血液が私の頬を伝った。私は、これから行われるだろう事を想像してしまい鳥肌が立った。

 そして化物は、私を殴った大きな刃物をもう一度振り上げた。そしてその刃物を私に向かって振振り下ろした……




 同時刻、争助達は一階の探索をしていた。二階を探索したが、燐音を見つける事が出来なかったからだ。

 

 「おーい燐音ー!くそッ、全然見つからねぇな。ホントにあいつ何処に行きやがったよ」


 「そう、だね。全然見つからないね……」


 「……」


 「おいどうしたよ?元気がねぇな」


 「こんなに探しても居ないって事は、もしかして燐音はもう……」


 「柊子!何言ってやがる!燐音に限ってんなわけがねぇだろ。大丈夫だ。絶対燐音はどっかに隠れてるはずだ。絶対に!」

そう言いながら、争助も実は考えていた。これだけ声を出して探しても、燐音が見つからず出て来ないという事は、化け物に捕まってしまったのかと。

 そして、それを裏付けるのが音楽室だ。ドアは破壊されており、ロッカーは普通ではあり得ないへこみ方をしていた。

 それを考えてしまった争助は、頭からそれを振り払うように首を横に振り、また燐音の名前を呼び始めた。


 「おーい!燐音-!ほら、お前らも早く燐音を見つけ出すぞ」


 「それもそうだね。こんなところで落ち込んでなんかいられないね。燐音ー!居るなら出てきてよ-!」


 「そうよね。蓮人と争助の言う通りだわ。早く燐音を見つけ出さないとね。これ以上遠くに行かれちゃったら、探すのが大変でとても困るわ。……燐音ー!出てきなさいよ-!」

そうしてまた三人は、燐音を探し始めた。どんなに探しても、見つかるはずが無い事を分かっているのに……


 


 


 「その変にしとけ。あまりやり過ぎると死ぬぞ」


 何度殴られただろうか。意識が朦朧としてきた頃に、突然声が聞こえた。

 私は、ゆっくりと顔を上げ重い瞼を開いた。脳震盪を起こしているのだろうか、前がぼやけて見える。だが、かろうじて見えたのは、化物と私達の学校の制服を着込み、オペラ座の怪人にでも出てきそうな仮面で、顔を覆った者だ。

 化物は、人間の言葉が理解する事が出来るのか、私を殴るのを止めた。


 「大丈夫か?」

そう言いながら、その者はは近づいてきた。声と外見からして男だろうか。

 私は、掠れた声でその男に助けを求めた。


 「た、助けて……」


 「苦しそうだな。ん?助けて欲しいのか?」


 「は、い。助けて、下さい。このままじゃ私、し、死んじゃいます」


 「そうだなぁ……、それは無理な相談だな」


 「えっ?」


 「だってお前、化物なんて存在しないと思って、おもしろ半分で此処に来たんだろ?そういう奴を助ける事は出来ねぇな」

男は、嗤いながら言った。


 「わ、私、そんな事思って此処に来ていないです」


 「本当に?じゃあ此処に何の為に来たんだよ?」


 「それは……、私の友達が此処に行ったまま帰ってこないから、探しに来たんです」

 私は、とっさに思いついた嘘を述べた。


 「成る程ねぇ……。それ嘘だな」


 「えっ……!?」

私は、男がいきなり嘘と見破った事に驚いた。誰でも納得の行く理由だと思っていたからだ。


 「俺がそんな嘘に騙されると思ったのか?」


 「そ、そんな。私、嘘なんてついてないです」


 「化け物が見てみたい、火の無い所に煙は立たず、って昨日言っていたのは誰かなぁ?」

男がまた嗤いながら、問いかけてくる。……その台詞は、昨日の朝私が三人に言っていた事だった。


 「あ……」

 何故、この男は私の言っていた事を知っているのだろうか。やはりこの男は、制服を着ている事から、私達の学校に所属している生徒なのだろうか。


 「という事で、君には俺の実験体になってもらおうかな。その覚悟があって、此処に来たんだからな。大丈夫、何度気絶しようとも直ぐに起こしてやるよ」


 「ヒッ!や、や、やめて。何でもするから。だから、許して!」


 「無理だな。ああ、安心しろよ、直ぐに友達も此処に連れてきてやるから」

男はそう言うと、化物に指示を出した。


 「という事で、他の三人も連れてこい」

 化物はそれを聞くと、外へ出て行った。


 「じゃあ、始めようか」


 「いやあああああああああああああああッ!」






 その頃、争助達は三階を捜索していた。

 三階は自分達の校舎内の内装と全く異なっており、正直面倒だ。


 「此処は、生徒会室か。チッ、あんま入りたくねぇな……」


 「まぁまぁ、そう言わずにさ。もしかしたら此処に燐音がいるかもしれないじゃん」


 「分かってる。じゃあ入るぞ」

争助がそう言い、ドアを開いた。

 中開けると、直ぐにあるものが目に飛び込んできた。

 それは、酷く散乱した机の近くに、争助達と同じ学校の制服を着た少女が倒れていた。

 

 「誰だ?柊子、蓮人。ちょっと俺が様子を見に行くから、外を見張ってくれ」


 『分かった』

争助は返事を聞くと、ゆっくりと少女へと近づいた。そして少女の前まで来ると、脈拍と呼吸をしているかを確認した。


 「生きてる……!おい、大丈夫か!」

争助は、生きている事が分かった瞬間、身体を揺さぶりながら声を掛けた。数度声を掛けた時、少女は気がつきゆっくりと目を開けた。


 「うぅん……?此処は?」


 「大丈夫か?此処は、旧校舎の生徒会室だ」


 「旧校舎……?ああ、そうだ。私、友達を探しに来て、それで化物に襲われて……」


 「大丈夫そうだな。所でお前さん、名前は?」


 「ええと、私は峰塚瑠璃子。君と後ろにいる二人と同じ学校の二年生だけど、君達は?」


 「俺達も二年だ」


 「ん?よく見たら君、荒垣争助じゃないか。それに奥にいる女子は上条柊子か」


 「何だ、俺達の事知ってたのか。因みに、柊子の隣にいるのは長峰蓮人だ」


 「成程ね。そういえば私、友達の小林楓っていう子を探しているんだけど、見なかった?」


 「いや、お前さん以外に生存者は見なかったな」


 「そう……。でも探せば出てくるよね。ありがとう」

そう言い、出て行こうとした瑠璃子を引き止めた。


 「ちょっと待ってくれ。実はだな、俺達もダチを見失ってな。お前さん一人だと危ないだろ?だから、一緒に行動して探さないか?」


 「確かに、一緒に行動した方が危険性が減るね。そうだね、君と向こうの二人が良いんだったら、そうさせてもらうよ」


 「分かった。じゃあ行こうぜ」

そう言い争助と瑠璃子は、外で見張っていてくれた二人の所へ近づいた。



 

 「てな訳で、俺達の目的と瑠璃子の目的は一緒だから、一緒に行動しようと思うんだが、大丈夫か?」

争助は、瑠璃子と話していた内容を二人に話した。


 「僕は別に平気だけど、柊子は?」


 「私も良いわよ」


 「じゃあ決まりだな。よろしくな瑠璃子」


 「よろしくね、三人共」


 「でだ。俺達は二、三階と見て回ったんだが、今度は逆に一階ずつ確認しながら降りるって事で良いか?」


 「それでも良いと思うよ」


 「良し、ならさっさと行こうぜ!」

争助がそう言うと、四人は慎重に他の教室を確認しに、歩みを進めた……



 


   



 

  


 

 

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