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Night without the end  作者: 聖柊希美
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第三話 悪夢

 あれから私達は、何事もなく職員室に着いた。そして、争助がドアに耳を当て、窓から中の様子を覗いても、何もいなかった。


 「良し、中は何もいなそうだな。入ろうぜ」

 それを聞いて、争助はドアに手を掛けた。

 意外にも職員室には鍵が掛かっておらず、すんなりと入れた。

 中を覗くとそこには、今まで見てきた廊下と教室よりも、とてもボロくなっていた。


 「うわッ。こいつぁまた、酷くボロボロだな。何でこんなんになるんだよ」


 「あぁ、その事だったら簡単だよ。此処まだが使われてた時に、此処にいた先輩達が荒らしたんだよ。だからこんな現状になってるんだ」


 「あら、何で蓮人がそんな事知ってるのかしら?」


 「僕の母さんは教員でね。以前に此処の教員もした事もあるんだよ。その時は本当に酷かったらしくてね、二度と経験したくないって言ってたよ」


 「へぇ、そこまで酷かったのね。と言っても、この現状を見たら何となく信じられるわね」


 「おい、話してないでさっさと鍵取って来ようぜ。燐音、一緒に付いてきてくれないか?」


 「何でよ?」


 「俺じゃ、何処に鍵が置いてあるか分かんねぇからよ。頼むぜ」


 「分かったよ。いつまでも待たされたら、逆に迷惑だからね」


 「アザッス。頼りにしてますぜ、燐音さん。それと蓮人。もしも襲われたら、柊子を守ってやれよ。まぁ、逆にお前さんが襲ったら、死ぬかもな」


 「しないよそんな事!」


 「蓮人。もしそんな事したら、覚悟してなさい」


 「……ハイ」


 「じゃ、鍵を取りに行こうぜ燐音。足場には気を付けてれよ。崩れそうな位に脆そうだからな」


 「そんな事、見れば分かってるわよ」

私は、今の学校と同じ造りが一緒だと考え、普段鍵が置いてある場所に向かった。

 案の定、やはり鍵はそこにあった。しかし、唯一違ったところは、明らかに鍵の数が少ないという所だ。

 

 「おいおいマジかよ。鍵の数が極端に少なぇよ。しかも、御丁寧に錆びて今にも折れそうだな。燐音、何かまともな物あるか?」


 「どうせ、此処に来た他の生徒が持ってったんでしょ。ええと……、この中で使えそうな物は……、被服室と音楽室、理科室の鍵位ね」


 「それだけか。まぁ、仕方ねぇか。出来ればもっと欲しいところだが」


 「鍵は手に入ったから、さっさと行こ」


 「そうだな。此処に長居する必要もないからな」


 私と争助は、来たときと同じように、慎重に蓮人と柊子のいる場所に戻っていった


二人の所に戻ると、柊子が待ちくたびれたと言わんばかりの表情でその場に立っていた。


 「二人とも、遅すぎるわよ!いつまで私を待たせるつもりなのかしら?」


 「おいおい、まだ絶対そんな時間経ってねぇだろ。少し位待ってくれたって良いじゃねぇかよ。いちいちそんな事でキレんじゃねぇよ」


 「レディを待たせるなんて、本当にマナーがなってないわね?」

  

 「うるせぇな!」


 「ほらほら、二人とも落ち着いてよ。まだ2分位しか経ってないわよ。だから落ち着いて、ね?」


 「ちッ、そうだな。キレてたって、何も変わらねぇな」


 「ふん、確かに燐音の通りね。今回の所は、許してあげるわ」


 「ところで蓮人。今何時だか分かる?」


 「そう言えば、時間を確認してなかったね。ええと今は、12時だね」


 「12時ね、ありがとう」


 「そうだなぁ……、3時位になったら、一旦此所を出て家に帰った方が良さそうだね」


 「そうだな」


 「で、最初は何処に向かう?一応、音楽室と被服室、理科室が有るけど」


 「そうねぇ、最初は音楽室が良いんじゃないかしら?そこなら、比較的広々としていて、人が居れば直ぐに見つかるからね」


 「そうね。そこなら、誰か居そうね。二人ともそれで良い?」

私は蓮人と争助に聞くと、二人とも首を縦に振った。

 そして、私達は職員室から出て、音楽室を探し始めた。


 

 ――――それから数分経ち、やっと音楽室を見つけた。


 「何よもう。普通全て造りを同じにするでしょう。何で私達の学校の音楽室の逆側にあるのかしら?」


 「校舎を設計した人に聞いてよ」

その間に蓮人は、中の様子を探っていたらしく、

 

 「まぁまぁ。中には別段変わった事は無さげだったよ。だから、早く入ろうか」

と言いながら私から鍵を受け取り、鍵を開けた。


 中に入ると、中央にこの古い旧校舎には似つかわしい物が置いてあった。

 それは、明らかに傷一つ無さそうな、新品のグランドピアノが置かれていた。


 「何このピアノ……、全く傷が無い新品じゃない」


 「燐音?このピアノがどうした?別に何もおかしい所なんて無ぇだろ」


 「ねぇ蓮人、親が此処で働いてたのって何年前?」


 「確か……、十年前位かな。その頃位に、今の校舎が出来たからね」


 「ちょっと待ちなさい燐音。それとこのピアノに何の関係があるって言うのかしら?」


 「考えてみて。ピアノはおよそ設立当初位から、十年位前まで使われてきてたのよ。そうだと言うのに、このピアノは全く傷が無い」


 「なるほどなぁ、何で此処に新品のピアノが置いてあるのか、か。確かに謎だな。もしかして誰かが住んでたって事かよ」


 「その可能性は多いに出てきたわね」

 

 「やっぱそうなるか……。まぁ、近くに行って確認した方が早ぇだろ」


 「それもそうね」

私達は、ピアノの近くに寄り確認した。

 ピアノは、やはり何処から見ても、昔からつかわれてきたと思えないほど、傷一つ無かった。


 「やっぱり、このピアノ不自然だわ」 


 「と、言われてもな。俺からすれば、あんま不自然でもない気もすんだけどなぁ」 


 「そうですわね。しかし、やはりまだ使えるピアノを放置するのもおかしい事ですわね」


 「ま、この件は後で俺らの学校の音楽室を、確認すれば良い話だからな」


 「そ、それもそうね。じゃあ、早く他を調べましょう」

私が言い終えた瞬間、いきなり奥の方から大きな物音がした。


 「何!?」


 「何か、奥の方から物音がしたね。でも奥と言っても、有るとすればロッカー位しかないよ」


 「てことは、ロッカーから音がしたって事か?」


 「そう言う事になるわね。確かめるのかしら?」


 「どうすっかねぇ燐音?」


 「どうするって、開けてみた方が良いんじゃない?もしかしたら、そこに誰か隠れてるかもしれないし」


 「でも、僕達の話し声で気付くんじゃない?」


 「確かにそうだな。普通だったら、俺達の話し声で気付くかもしれねぇな」


 「という事は、中に何かいるって事なの?」


 「そうかもな。だけどよ、やっぱり確認しておいた方が良いじゃねぇか?もし仮によ、中に何かが居たとして、開けずに俺らが音楽室を出ようとしてら、後ろから襲われるってオチは、マジで勘弁願いたいぜ」


 「その通りね。ロッカーを開けずにいて、出ようとして襲われるなんて、絶対に嫌ですからね」


 「僕も賛成だよ」


 「じゃ、ちょっと後ろに下がっててくれ。後、何時でも逃げられるように、準備しとけ」

そう言うと、争助はロッカーに近付き、蹴りを入れた。

 だが、暫くしても反応は無かった。


 「反応はねぇな。多分平気か?まぁ開けるか」

 争助は、ロッカーのドアの隣に移動し、手を掛け、バッと開けた。

 そして、開いたと同時に勢いよく、何かが床に倒れた。

 それは、身体全体を拘束されていて、両耳と鼻が削がれ、両目が無くなっている死体だった。


 「い、イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

気付くと私は叫んでいた。目の前の光景が信じられなかった。

 

 「な、何なのよこれ。何で、ろ、ロッカーの中に死体が入ってるのよ!これ、

現実なのかしら?本当に現実?夢じゃないの?ねぇ、夢でしょ?ねぇ!これは夢でしょ!」


 「う、これは酷い。物凄い異臭だっ……オ、オエェェェェッ!」


 「おい!二人とも落ち着け!」


 「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 「これは夢これは夢これはゆめコれはユめコレはゆめこレハゆメコレハゆめコレハユメ」


 「落ち着けって言ってんだろうがッ!」

 そう言うと、争助は私達に近付き、私と柊子に平手打ちを入れた。


 『きゃッ!』

 平手打ちだが、相手が争助だったため、勢いよくその場にしりもちをついた。

 そこでやっと、私と柊子は正気に戻った。


 「あれ?私、何やってんだろ?」


 「私もですわ」


 「やっと正気に戻ったかよ。こんくらいで発狂すんなよ」


 「あぁ、私死体を見て」


 「そう言えばそうでしたわ」


 「いきなり二人して発狂したからな。逆にこっちがビビったぜ。てか蓮人、お前大丈夫か?無理なら少し位休憩取るぞ?」


 「あぁ、大丈夫だよ。吐き気は治まった。それにしても、随分と惨いね。何て死に方だ。まるで拷問されたような感じだね」


 「そうね。誰がこんな酷いことを」


 「燐音の言う通りだな。こいつぁ酷ぇ。てか、死体には何もねぇのか?」

 そう言うと、争助は死体の身体全体を調べ始めた。


 「お?何かあるぜ。これは……、何だ、また生徒手帳か」


 「名前は何て書いてあるのかしら?えぇと、赤堀拓真かしら?これ」


 「赤堀拓真、だと?」


 「争助、知ってるの?」


 「あぁ、そいつは良く知ってるぜ。そいつが一番最初に、此処に来た連中のリーダーだ。何故、あの時気付かなかったんだ?近所にも悪評がある連中と言ったら、こいつらしかいねぇのによ」


 「これは一旦出て、警察に言った方が良さそうね。柊子、今は何時?」


 「今は……、えっ?何よこれ?何で12時から動いてないのよ?蓮人、貴方の方は?」


 「駄目だ。こっちも12時から動いてないよ」


 「これは何かマズいな。皆、さっさとこの学校から出ようぜ」


 『うん』

返事をして、私達は急いで音楽室から出た。

 私達が音楽室から出て数十メートル位離れた時、突然後ろから物凄い音が聞こえた。

 私達は、何事かと振り返った。

 振り返り、そこで見たものは、大きく穴が空いた壁と、何とも表現し難いものだった。

体長二メートルは平気で有るであろう大きさ、醜い醜態、赤い瞳。そんな化け物が、後ろから追ってきていた。


 「何だよあれ!なんつう大きさだ!だが、そのせいで動きは意外に鈍ぇな。皆、玄関の方まで走れ!あれに捕まったら終わりだ!急げ!」

 私達は、一心不乱に玄関まで走った。疲れても立ち止まってはいけない。その気持ち一心で、走り続けた。

 だが運の悪いことに、音楽室は二階にあり玄関とは反対側にあった。正直、運動が苦手な蓮人の体力がもつか怪しいところだ。だが、その考えは杞憂だったようだ。走り続けていると、玄関が見えてきた。


 「あそこだ!あそこに急げ!まだ、化け物が来てないうちに速く!」

争助が言った瞬間に、私は思いきりドアを引いた。が、ドアはびくともしなかった。


 「何で!?何でドアが開かないの!?お願い開いて!」

そう言って引っ張っても、開かなかった。


 「燐音、そこをどけ!」

その言葉を聞いた瞬間、身体が反射的に横にずれた。

 そして、その言葉を言った本人である争助は、思いきりドアに跳び蹴りをいれていた。

 だが、ドアはびくともしなかった。


 「クソが!何故割れねぇ!最低でもひび位入るだろ!」


 「何でよ!早く開いてよ!」


 「皆、静かに!叫んでる場合じゃないみたいだ。もう此処から確認出来るレベルにまで、あいつが近付いてる。近くにある階段を速く昇ろう!」


 「そうだな。皆、急いで階段を上がれ!今はアイツを振り切る事が目的だ!行け!」

 争助に言われ、私達は近くにある階段を昇って行った……

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