第二話 探索
廃校の中に入ると、やはりと言うべきか、建物の内装全てがとてもボロボロだった。
「うわ、数年も放置されてたからか、中は汚ぇしボロボロだな」
「そうだね。床もひび割れてるしだから、慎重に行った方が良さそうだね」
私達は、床に気を付けながらゆっくりと進んでいった。
「ていうか、此処ちょっと暗いね。これだと、奥が見えなくて危ないわね。誰か照せる持ってない?」
「あら、懐中電灯持ってきていないのかしら?そうねぇ……、携帯なら有るわよ」
「あぁ、それなら僕も持ってるよ。燐音と争助は持ってないの?」
「俺は……、機械はあんま使えねぇんだよ。前にも、家にあるパソコン壊しちまった」
「なんでそうなるのよ。普通じゃ有り得ないわよ」
「知らねぇよ。使おうとすると、いきなり電源が切れるんだよ。マジで意味分かんねぇ」
「私は、親が中学生が携帯を持つのはまだ早いって言われてて、だから持たしてもらってなのよ」
「本当?貴女の御両親は厳しいのね」
「じゃあ連絡したい時はどうしてるの?」
「そうねぇ、公衆電話とか友達の携帯を借りたりとかしてるよ」
そんな話をしながら歩いていると、教室が見えてきた。上には、「1-A」と書いてあった。どうやらここは一年生の教室のようだ。
「此処に1-Aの教室があるよ。此処から先は、一年の教室みたいよ」
「お!ナイスだぜ燐音。早速、中に入ってみようぜ」
「ちょっと待ちなさい!もしも本当に何かがいた時の為に、中に物音がしないか確認してから入りましょう」
「柊子の言う通りだね。もしも何かがいて、いきなり襲われたら対処の仕様がないからね」
「それもそうだな。三人ともちょっと後ろを見張っててくれ。俺は、ちょっと中の様子を確認してみるぜ」
そう言うと、争助はドアに耳をあて、音を聞き始めた。
争助が教室の中の音を聞いてる最中に、私達三人は辺りを見張り始めた。
周囲を確認したが別段めぼしい物も無かった。そして何もないだろうと思い、争助の方に剥こうとした瞬間、廊下の奥に、此方をずっと見つめる赤く光る目が見えた。
「ヒッ!」
私はそれに驚き、しりもちをついた。
そして、私の声に気付いた蓮人が急いで近付いた。
「燐音、どうしたの?」
「そ、そこ……、そこに何か居る!」
「何処になにが居るの燐音。何も居ないじゃないか」
そう言われてよく見ると、確かにそこに居たはずの何かが、いつの間にか居なくなっていた。
「あれ?居なくなってる……」
「どうしたよ燐音。やっぱりビビってるんじゃねぇか?」
と、中の様子を確認し終えた様子の争助がからかってきた。
「い、いや。確かに何かに見られてた筈なのに……」
「きっと、何かに見間違えたんだろ。燐音はビビりだねぇ~」
「う、五月蝿い!」
「それはそうとして、争助。何か確認出来ましたの?」
「いや、何もねぇよ。だから多分平気だろ」
「じゃあ、中に入りましょう?」
「それもそうだね。燐音立てる?」
「大丈夫よ!変わらず慎重に入りましょう」
ドアは鍵は掛かっておらず、すんなりと中に入れた。
中は廊下と同じようにボロボロで、脚や板が折れてる机や椅子が、適当に置かれていた。
「何だこりゃ。汚なすぎだろ。しかもカビ臭ぇし」
「確かに、これは流石に酷いね」
「そうね。一応、何かないか確認してから出ていきましょう」
柊子がそう言うと、私達は何かないか探し始めた。
――数分経った頃、蓮人の声が聞こえた。
「皆、ちょっとこっちに来てくれない?ここに入った三年の生徒手見つけた」
そう言われ蓮人の所に駆け寄って見てみると、生徒手帳には所々に血が付着していた。
「何これ、何で血が付着してるのよ。やっぱり、ここには何か居るって事なの?」
「確かに、こいつぁ尋常じゃない血の量だ」
「何を言ってるのかしら?少ししか血が付いていないじゃないの」
「いや、それの事じゃねぇ。あっちを見てみな」
そう言いながら、争助はこの場からそう遠くない場所を指差した。
暗くて、良く気付かなかったのかもしれない。そこには、争助の言う通り、尋常じゃないほどの血が床に広がっていた。
「これは、ちょっとおかしい量ね。普通だったら、死んでいるレベルだわ」
「それもそうだな」
そう言いながら、争助はその血溜まりの側に近寄り、触れた。
「こいつぁまだ新しいな。若干乾いてやがるが、最近のもんだろ」
「う、何で分かるのよ?」
「まぁな。ちょいと知識があってな」
「凄いわね。その知識はどこから取り入れてくるのかしら?」
「ズバリ、ゲーム知識だな」
そう言いながら、争助はニヤリと笑みを浮かべた。
「ゲームだったのね……」
私はその発言に溜息を付いた。
「で、話を戻すけど、その血はこの生徒手帳の持ち主である、ええと井原翔吾という人の血だと思うんだけど。どう思う?」
「私は、蓮人の考えであってると思うのだけれど、御二人方はどう思うのかしら?」
「まぁそう考えるのが妥当だろうな」
「私もよ」
「じゃあ、まだ生きてると仮定して、そうそう遠くに行ってない筈だから、探しに行かない?」
「だな。なら早く、探しに行くか」
そうして、私達は教室を出た。
「じゃあ、隣の教室に行ってみようか」
「そうだな。一個一個確認していった方が良いよな」
私達は、隣の教室である1-Bのドアの目の前に立った。
「物音はっと、無いし、人影も見当たらねぇな。まぁ多分大丈夫だろ。じゃあ、開けるぞ」
そう言って、争助はドアに手をかけた。そしてそのままドアを引こうとするが、鍵が掛かっているのか、開く様子がなかった。
「あれ?開かねぇな。チッ、ボレェくせして、鍵は意外と頑丈だな。……クソが。無理無理、びくともしねぇ」
「鍵がなければ入れないのね。どうしようかしら?」
「あっ、職員室にもしかしたら有るんじゃない?物が放置されてるんだし、もしかしたら鍵も放置されてるかも」
「燐音の言う通りだ。もしかしたら、職員室にあるかもしれないね」
「うーん……。それもそうね。では行きましょうか」
「職員室か、俺らの学校と造りが一緒だったら、別棟にある筈だな。まぁ、行ってみようぜ」
「あぁそうだ。もしも燐音の話が本当だったら危ないし、一応争助が1番後ろで良いかな?」
「了解だ。じゃ、さっさと行こうぜ」
そう言って、私達は職員室に向かって行った。赤い目の影が後ろに居ることを知らずに――