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Night without the end  作者: 聖柊希美
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第一話 侵入

 夜風を受けて、私はボロボロの体で学校から出てきた。

 私の中にあるのは、後悔と恐怖だけだ。頭の中で「あの時三人を誘わなければ、そもそもあの時行って見てみたいと思わなければ」という言葉がぐるぐる回っている。

 あの三人、多分あの傷では死んでしまっているだろう。いつも一緒にいた、そして四人でいつも出掛けていた……

 ――――そこまで考えて、私はその光景を思いだし、吐いてしまった。それを壊したのは私だ。

 

 暫くして、呼吸が落ち着いてきた私は、一応の為に警察と救急車を呼ぶ事にした。もしかしたら、まだ間に合うかもしれないと頭の隅で思ったからだ。

 私は、携帯を取りだし両方に電話を掛けた。


 そして掛け終えた私は、近くにあった木に凭れ掛かった。そして、あまりの恐怖と逃げっ切った事による疲労感で気絶してしまった……





 今日もいつも通り、私こと夢野燐音は、学校へと歩みを進めていた。変わらぬ日課だ。

 私は別にいたって目立った所はない、普通の中学二年生だ。

 だが、私はいつも一緒にいる三人の内の二人の方が目立っていると思う。身長185cmあたりの不良気味の男と、誰から見てもマンガにいるようなお嬢様だ。深く考えるほど、私はやっぱり目立っている所はない普通の女子生徒だと思う。


 そんなことを考えている内に、いつの間にか私は、学校に着いていた。私は校舎に入ってすぐに靴を履き替えると、自分の教室に向かった。


 教室に入ると、まだあまり生徒は来ていなかった。ちょっと早く来てしまった様だ。

 私は、まぁ過ぎた事は仕方ないと思いながら用意を済ませ、読みかけの本を読み始めた。

 暫く本を読み続けていると、周りから人の声が聞こえ始めた。どうやら、登校してきた生徒が増えてきたようだ。

 そこまで考えて、再び本を読み始めようとしたら声を掛けられた。


 「あら、今日は意外に早く来てるじゃない。どうしたのかしら?」

 

 (……あぁ、この声。もう一人しか思い浮かばない。)

 私は本を読むのを中断し、声のした方に目だけを向けた。

 そこには、予想した通りの人物が立っていた。そこにいたのは、お嬢様である上条柊子が立っていた。

 柊子はとある有力会社の会長の娘らしく、家は相当のお金持ちらしい。会長である父親が、一人娘の柊子を昔から甘やかしていたのが仇となり、性格が捻くれて我が儘になってしまった。

 ……とまぁ、本当にマンガにいるようなお嬢様が私の前にいるわけで、どう対応しようか考えた。そして、少し考えて思い浮かんだ事をやってみることにした。


 「……」


 「……無視して本を読み続けるのは、ちょっと酷くないかしら?」


 「…………」


 「ねぇ、ねぇってば!」


 「………………」


 「もう良いわ。貴女の秘密全部皆に話すから」


 「はぁ、……何の用?」

 私は、柊子を無視するのを諦め、本を読むのを中断し顔を向けた。


 「別に、貴女が今日は珍しく早く来てるから、話しかけただけじゃない。それを無視するなんて……」

 あぁ、ちょっと怒ってるな。ちょっとやりすぎちゃったか。


 「ゴメン、そこまでやるつもりはなかったの。ちょっと面白くてつい遊び過ぎちゃった」

 

 (……ヤバい、睨みつけられてる。こういうとき、上手く対処が出来ないからな~。どうしようかな?)

  私がそう思っていると、低い声が聞こえた。

 

 「お、お二人さん方で何してるのかな~。俺も交ぜてくれないか?」

 

 「あら、争助じゃない。今日は遅刻せずに来れた様ね。」


 「あぁ、今日はなんとか不良共から逃れたぜ。アイツらホントしつこいぜ。邪魔だから、ちょっとどいてもらっただけなのによ」

 この男子の名前は荒垣争助。いつも喧嘩をする為、遅刻してくるのだ。……だが、根は優しい奴ではある。

  

 「争助、またやらかしたの?いい加減、ケンカとか起こすの止めたら?」

 

 「イヤイヤ、ちょっとカッとなると自分でも止められないんだよ。まぁ、いつも意識してるようにはしてんだけどな」

 

 「仕方ないよ、昔からそうなんだから」

 突然、争助の背後から声がした。


 「うおッ!おいおい、マジでビックリさせんなよ蓮人~」

 背後から声を掛けたのは長峰蓮人という男子だ。身長は低く、声変わりもしてない。そして、童顔のショタコンが喜びそうなレベルの外見だ。

 しかし、蓮人は人の背後に忍び寄る事が得意なのだ。いつも私や争助は彼に驚かされる。

 だが、唯一柊子だけが驚かない。

 そう。どんなに柊子の後ろに忍び寄り、おどかそうとしても柊子だけは驚く素振りがない。全く不思議だ。

 

 「ゴメン、ゴメン。ついつい皆がどういう反応するのかやってみたくてね、でもやっぱり柊子だけは驚かないや」


 「あら、蓮人じゃない。貴方、いつの間に来てたのね」

 

 そして、柊子は毎回今気付いたように蓮人に話し掛ける。


 「柊子、前々から思うんだけど、僕が後ろに回り込んでる時、気が付いてる?」

 

 「いいえ、全く気付かなかったわ。貴方、気付いた時にはもう後ろにいるのですもの」

 

 「本当?」


 「本当よ」


 「……それなら良いんだけど」

 私は、そんなやりとりを横目で見つつ、本を読み始めようとしたが、近くで話していた女子達から気になる会話が聞こえた。


 「ねぇ、知ってる?またいなくなったらしいよ、私達の学校の生徒」


 「そうそう、確か隣のクラスの男子3人だっけ?」


 「うん、今回で10人目よ。ヤバくない?」


 「ホントどうなってるの?」

 

 「場所はどこだっけ?」


 「私達の学校の近くにある旧校舎よ。ホントあそこ、何かいるんじゃない?」 

 などという会話が聞こえてきた。


 「最近、旧校舎の話で持ちきりだよな~。どう思うよ、燐音サン」

 と、聞いていた争助が話し掛けてきた。


 「どう思うって、確かにおかしいわね。てか、何でサン付けなわけ?」


 「気にしない、気にしない。最初は、三年だっけか?」


 「そうよ。最初は校則に従わなく、近所でも悪評の連中だったから、家出だと思われていたそうよ」


 「でも、1週間も帰ってこなかったから、流石に心配して警察に連絡したけど、未だに見つかってないっていう話だね」

 と、柊子の後を蓮人が続けて話した。


 「で、旧校舎に行くって聞いてたソイツのダチが、探しに行って一緒に行方不明か・・・。確かにヤベェな」


 「じゃあ、3人共行ってみない?本当に何かいるなら、見てみたいし」


 「おいおい、燐音チャン。強がっちゃって~。ホントは怖くて、行きたくねぇんじゃねぇの」


 「違うわよ。火の無い所に煙は立たずって言うじゃない。だからよ」


 「分かった、分かった。強がりの燐音ちゃん」


 「もう良い。他の二人は行くよね?」


 「私は行くわ。面白そうだからね。それに、貴女一人じゃ心配ですもの」


 「ぼ、僕も行くよ」 


 「そう。じゃあ、三人だけで行こうか」


 「悪かったよ、俺も行くよ」

 

 「はいはい。じゃあ、今日の深夜11時に廃校の校門前に集合ね」

 そう言い終わると同時に、チャイムが鳴った。

 3人は頷き、そして直ぐに席に戻っていった。

 

 


 ――――それから私達は、何事もなく授業を受け(争助は寝てたけど)、放課後になるまで、各自暇な時間を過ごしていた。

 そして放課後になり、私達は今日の為に準備をしに家に帰っていった。


 

 

 10時半、私はそろそろ集合場所に行こうと思い、家族にバレないように静かに家を出た。


 

 

 集合場所に行くと、柊子と蓮人はもうすでに来ていた。まだ時刻は10時50分なのに。

 

 「あら、やっと来たのね。ちょっと遅くないかしら?」

 

 「イヤイヤ、二人が早すぎるのよ。まだ時刻は10時50分だよ。それに、遅いのはまだ来てない争助の方でしょ」


 「そうだよ柊子。僕達が早かっただけだよ」

 

 「・・・まぁ、確かにそうね。私達が早かったのね。でも、争助は遅くないかしら?後数分で11時になっちゃうわ」

 と言われて時間を確認すると、確かに11時少し前だった。

 その後、廃校の校門前で話して待っていると、その五分後に遅れて争助がやって来た。

 

 「悪い、悪い。来る途中にまたケンカ売られてよ~。返り討ちにしたらいつの間にか後五分になっててさ、結局遅れちまったよ」

 

 「遅いわよ!もう五分も過ぎてるのよ。ていうか貴方、ケンカは抑えろと言われたでしょ!」


 「分った、分った。努力しますよ~」

 

 「……時間も勿体ないし、中に入りましょう」

 

 「それもそうだね。それに騒いでいると誰かにばれちゃうしね」

 

 「ふんっ」


 「でもその前に、入る前にこれだけは守って。もしもはぐれて何かあったら、直ぐに誰かに連絡して。良いよね?」

 

 『分かった』

 そうして私達は、廃校の中に入っていった…… 

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