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Peace World  作者: 黒糖パン
20/30

崩壊

 突如、力也の右肩から血が飛び散る。

 直後、力也は激痛に襲われていた。

 顔を歪めながら左手で右肩を押さえながら、力也は衝撃を受けた方向に目を向ける。

 そこには、三人の若い男がいた。手に持っているのは、鉄パイプ、果物ナイフ、スパナとばらばらだが、共通して言えるのは、三人とも目の焦点が定まっておらず、口からよだれを流していることだった。

(ドラッグッ)

 その言葉が力也の頭に去来する。

 おそらく、この男たちは脱法ドラッグ中毒者だ。覚醒剤、麻薬などは、「ACC」の対象となるため、所持した時点で爆死となるが、脱法ドラッグは違う。今でも条例違反に留まっているため、「ACC」の対象にならないのだ。そのため、スラムではよく売買されているのだという。スラムの人々は、生活への現実逃避や、ストレス発散などで手を出してしまい、抜け出せなくなるのだろう。

 そう思考した直後、力也の目の前で鉄パイプを持った男が一瞬硬直。そして、男の破片が壁に飛び散り、黒ずんだ赤い液体が力也と二人の男にかかり、白い雪を紅く染める。

 力也は吐き気に襲われ、肩の痛みも忘れて口を手で押さえていた。

 だが、男たちは吐き気に襲われるどころか、息を荒げていた。どうやら、血を見て、興奮状態に陥ってしまったらしい。

 このまま対峙していれば、力也とミルの生命が危なかった。

 力也はミルをかばうように立ち、徐々に後退していく。このまま、一定の距離を取ってから、走って逃げるつもりなのだ。

 だが、力也は横目で驚愕のものを見る。

――ミルだ。

 ミルが力也の横をすり抜け、男たちに向かって走っていく。

「ばっ……」

 力也はそこで痛みを思い出し、肩の痛みによって声を出せなくなってしまう。骨折しているかもしれなかった。

 しかし、驚愕するべきはそこからだった。

 ミルは地面に落ちていた鉄パイプを拾い上げると、走った速度を落とさぬまま、果物ナイフを持っている男の頭を鉄パイプで殴りつける。男は、衝撃で壁に頭をぶつけ、血を流して事切れる。その後、ミルはパイプを投げ捨てて、空中に舞った果物ナイフの柄を掴み取り、間髪入れずにスパナを持った男に襲いかかる。男は、スパナを不規則に振り回していたが、ミルはそれを難とせず、スパナの攻撃を全て果物ナイフで弾き返すと、最後は男の首を掻き切る。直後、男は首から血を噴き出して絶命する。

 時間にして、五秒ほどだった。

 力也は絶句してその光景を見つめていた。

 だが、すぐに我に返っていた。なぜなら――

「ミ……ミルッ」

 力也の身体は動かなかった。声だけがかろうじて絞り出される。

 ミルは、返り血を浴びた顔でにこやかに微笑んでいた。

「私は、私を守ってくれた力也に恩返しできたかな? 最期に力也を守れたことを誇っていいのかな?」

(ああ……駄目だ……駄目だ、ミル。……いっちゃいやだ……)

 力也の言葉は、言葉になりきれず、思考に留まってしまう。

 力也は懸命に左手を伸ばすが、ミルは遠すぎた。届きそうにない。

 ミルを抱きしめたいと願っても、もう叶わなかった。

「……ありがと、力也。――――幸せだったよ」

 ミルは、満面の笑みを讃えながら涙を流した。

 そうして――


ミルちゃーん!

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