実験
少年少女たちの悲喜劇となっております!
二〇三〇年十二月十日
白い大きな箱のような空間には、白の患者衣を着た、六人の少年少女がいた。少年たちの年齢は十二、三歳といったところだろう。その患者衣には、一人ずつ別の、一から六までの番号が書かれていた。
少年たちは、左右に男女で分かれていた。そして、その中央の地面には、拳銃、刀、斧、バールなどのさまざまな武器が置かれていた。
そんな光景を白い空間の右上、少年少女の様子を傍観できるように作られた部屋で、ガラス壁の向こうの白い空間を眺める男がいた。
男の名前は、篠川 研路。この研究――実験の発案者だ。
「その部屋から出られるのは、他の者を殺した者のみ。さっさと始めろ。犯罪者ども」
男は部屋の壁に備え付けられたマイクから冷たく命令する。
しかし、誰一人として動こうとしなかった。ある者は、その場に座り込み。またある者は、こちらを睨みつけていた。
それから、二時間が経った。状況は何も変わっていない。さすがに篠川はいらいらしてきていた。そして、もう一度マイクで喝破しようとした時だった。
二の番号の患者衣を着た少年が、ふらついた足取りで中央に向かって歩いていた。それを見た篠川はガラス壁に両手をついてそれを凝視する。
少年の行動に周りの少年少女の目線が彼に向く。
「おい、やめろ」という声も聴こえてきた。
だが、二の少年は足を止めない。それを見た一の番号の患者衣を着た少年が、立ち上がり、全力で走って少年に飛びかかる。
――が、二の少年の手にはもう、斧が持たれていた。
二の少年が両手を使って振った斧は、飛びかかってきていた一の少年の首を直撃。首を半分引き裂いたところで止まる。一の少年の首から大量の血が噴き出す。一の少年の目は二の少年を恨むように睨んでいたが、やがて黒目が上を向いて少年が絶命したことを知らせる。
一の少年が斧を首から引き抜くと、口から鮮血を垂らしながら少年は地面に倒れる。
それを見た二の少年が狂気に微笑んだ時だった。
べしゃ。
今の現象を音で表すなら、ただそれだけだった。二の少年の身体が一瞬にして粉々になったのだ。大量の血が白い壁にぶちまけられる。
その光景を見た篠川は、にやっと嗤う。
少年たちは何が起こったのか理解できないようだった。恐怖で声も出せないようだ。ただ、震えている。
だが、その中に一人だけ、覚醒剤中毒者のように目を狂わせた少女がいた。今の光景を見て興奮したその、五の番号の患者衣を着た少女は、よだれを垂らしながら、ぷらぷらと中央まで走り、拳銃を手にする。
拳銃は、トリガーを引けば弾が出るように準備されていた。少年たちが銃を扱えるわけがないので、篠川が部下に準備させたのだ。
五の少女は、拳銃を狂ったように乱射する。運悪く一つが六の番号の患者衣を着た少女に着弾。少女は、頭を撃ち抜かれ、即死する。
そして、その直後、五の少女はさきほどの少年同様、何の前触れもなく破裂する。
白い空間は、血の臭いで埋め尽くされていた。転がる二つの死体と、さっきまで人間がいたことを示す二か所の大量の血痕。
その光景を目の当たりにした二人の少年少女はほぼ同時に行動していた。
「「助けて! ここから出して!」」
白い壁を泣きながら何度も叩く。
それを見た篠川は、舌打ちし、どうやって殺させるか、と考える。
すると、良案がすぐに思いつく。
篠川は再びマイクがある壁まで行き、やさしい口調で語りかける。
「すまない。言っていなかったが、生き残れるのは一人だけだ。最後の一人だけ、ここから出られるようになっている」
しかし、篠川の口は歪んでいた。嗤っているのだ。
それを聴いた少年少女は、一瞬目を合わせた後、一心不乱に中央に走る。
「あああああ!」
先に中央に辿り着いた三の番号の患者衣を着た少年は、刀を手に取り、こちらに走ってきていた四の番号の患者衣を着た少女に斬りかかる。刃は、少女の頬のほんの数ミリ手前の空気を斬る。
「あああああ!」
四の少女はなんとか中央に辿り着くと、バールを手に取り、振り返ってそれを振り下ろす。すると、バールの二股になった部分が、三の少年の右目に突き刺さる。三の少年の足はマリオネットのようにもつれ、そのまま倒れる。
「や……やったぁ」
四の少女は両手をあげて喜ぶが、その目は焦点が定まっていなかった。
「おめでとう」
篠川がそう告げた直後、四の少女の身体が四散。大量の血が地面にぶちまかれる。
「ふう」
篠川は安心したように溜め息を吐くと、後ろに控えていた部下に指示する。
「実験は成功だ。今すぐ総理に連絡してくれ」
部下の女性は、「はい」と事務的に言うと、部屋を出て行った。
一人になった部屋で、篠川は誰に言うでもなく小さく叫ぶ。
「ここから……平和な世界が始まるッ」
どんどん更新していくので、ぜひぜひ読んでください!




