第九十四話
仲間達に他の国へ旅立つことを話した日から二日後。俺達はパーティー全員で王都の大通りを歩いていた。
「ゴーマン様。私達は一体何処に行くのですか?」
「昨日ノーマンさんにパーティー全員で旅立つことを話したら、この紙に書かれた住所に行けって言われたんだ。何でもそこに住んでいる人はノーマンさんの冒険者時代の仲間らしくて、その頃に使っていた馬車を保管しているらしい」
隣を歩きながら聞いてくるナターシャに俺は住所が書かれた紙を見せながら答える。
ノーマンさんが言うには大人数で他の国を旅をするなら色々と持っていく食糧やら道具が必要で、それを運ぶ移動手段があるのなら何かと便利なのだとか。最初に話を聞いたときは「何で一冒険者が馬車を持っているんだ?」と思ったが、考えてみればノーマンさんって貴族だったテレサの父親と冒険をしていたし、この国の騎士団にも一時所属していたから馬車を持っていてもおかしくはないのか。
「馬車ッスか。昔のゲームだったら冒険者の旅って馬車がつきものッスけど、馬車って高いんスよね?」
「そうだな。安いやつで銀貨十数枚、高いやつだったら金貨数枚はするな」
しかしダンの世界の冒険者って皆馬車を持っているのか?
「それであなた。そのノーマンおじ様の友人ってどんな方なの? 私、お父様の冒険者時代の知り合いってノーマンおじ様しか知らなくて……」
「聞いた話によると魔術師のお爺さんらしい。魔術の実験と研究費用のために冒険者をやっていたらしくて、冒険者を辞めた後は店を始めたと言っていたな。……あれ? この店って……?」
テレサに答えているうちに紙に書かれた住所に辿り着いたが、そこにあったのは俺達がよく知っている店だった。
「え? ゴーマン、本当に本当にここなのかい?」
「この店はワイらもよく利用しとるけど……マジかいな?」
「ゴーマンよ。場所を間違えたのではないか?」
ギリアード、アラン、ルークの三人も疑わしい目で店を見ていた。俺も同意件だったので紙に書かれた住所をもう一度確認してみるが……やっぱり間違ってなかった。
「いや、この店であってるな」
「そうなの、お兄ちゃん?」
「この店がノーマン様と関わりがあったとは初耳でしたね」
「とりあえず~お店の中に~入ってみませんか~?」
目の前の店と住所が書かれた紙を交互に見ているとルピー、ローラ、ステラが口を開いてくる。そうだな。ステラに言う通り、ここでこうしているより店に入って聞いた方が早いか。
「よし、それじゃあ入ってみるか」
☆
「おお、誰かと思えば我が親愛なる魔王ではないか。これはこれは今日は大人数であるな」
店に入ると店主であり、俺が日頃愛用(心底不本意ではあるが)している馬鹿苦い体力ポーションと馬鹿辛い魔力ポーションの製作者であるミストンが俺達を出迎えてくれた。
「随分と久しぶりであるな。一ヶ月ぶりくらいであるか? それで今日はポーションを買いに来たのであるか? それとも魔力ポーション?」
「いや、今日はポーションを買いに来たんじゃなくて別の用事で来たんだ」
「そうであるか……。マリアの開発費用が稼げると思っていたのであるが……残念である」
俺の言葉に明らかにガッカリするミストン。マリアというのはミストンが開発している人間の女性そっくりのゴーレムの名前で……コイツ曰く「将来の花嫁」らしい。
そう。このミストンという男は自分好みの外見の女性型ゴーレムを開発し、それと結婚することが将来の夢だというギリアード達と同じ真性の変態なのである。
本当に俺の回りには常識人というか、ろくな人間がいないな。それどころかミストンのような変態にいいカモにされている今の俺の状況って……止めよう、深く考えると割りと本気で泣きそうになる。




