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第九十二話

 エルフの隠れ里から半月かけて王都に戻り、それから更に数日後。俺はノーマンさんの家に訪れていた。ちなみに今日訪れたのは俺一人で、残りの仲間達は屋敷に残してある。


「……そうか。エルフの隠れ里に行っても見つからんかったか」


「ええ。あそこで最後でした」


 客間で今回の旅の話を聞き終えたノーマンさんは残念そうな顔を俺に向けてそう言い、俺はそれに答えると目の前にあるテーブルを見る。テーブルには一枚の羊皮紙、このケントルム大陸の地図が置かれてあった。


 ケントルム大陸は五角形の形をした大陸で、俺達がいるファング王国は大陸の南部にある。五角形の底辺、つまり南の海に面した地域の一部にあり、地図の上から見たファング王国は五角形の中にある小さな三角形の形をしていた。


「冒険者の仕事を受けながらファング王国の各地を見て回りましたが……それでもやっぱり見つかりませんでした」


「と、なるともうこの国で見つかる望みは薄いじゃろうな。では以前に言っていた例の話……決めたのじゃな?」


「……はい」


 ノーマンさんの質問に俺は小さく頷いて答える。


「それでその事は仲間達には知らせておるのか?」


「いえ……まだアイツらには話していません」


「ならば早い内に話してどうするか相談するべきじゃな。それでお主とお主の仲間達がどうするのか決まったら儂の所へ来い。なに、たった一人の『弟子』の為じゃ。協力は惜しんだりせんよ」


「はい。ありがとうございます」


 エルフの隠れ里での話を聞いてから俺のことを「弟子」と呼ぶようになったノーマンさん。そんなノーマンさんの心遣いをありがたく思った俺は頭を下げてお礼を言うと屋敷へと帰ることにした。


 ☆


「今日はお前達に話したいことがある」


 その日の夜。夕食を終えた俺は食堂に集まった仲間達に向けて話を切り出した。


「話したいこと? 一体どうしたんだ?」


 最初に反応したのは新しく仲間になったエルフのイレーナだった。人間の世界に強い興味を持つ彼女は、隠れ里から王都までの半月間の旅路と王都での数日間ですっかり人間の世界に慣れて、今では完全な人間の女冒険者となっていた。


「まずはこれを見てくれ」


 俺は食堂のテーブルにファング王国とその周辺の地理を描いた地図を置いて仲間達に見せた。


「これは……ボク達がいるこのファング王国の地図だよね?」


「せやけどこの地図、王国にある全ての街や村に印がつけてあるで?」


「ゴーマンよ、この地図は一体何なのだ?」


 ギリアード、アラン、ルーク、三人の言葉に俺は頷くと地図につけた印を説明する。


「この印がついているのは俺が冒険者の仕事で訪れた街や村だ」


「へぇ、そうなんスか。師匠ってばファング王国を全て見て回っているんスね?」


 俺の説明にダンが感心した顔で地図を覗きこむ。


「ああ、そうだ。確かに俺はファング王国全土を見て回った。……でも俺の記憶の手がかりは見つからなかった」


 そう。俺は冒険者の仕事を受けながらファング王国中を見て回り、何処かに自分の記憶の手がかりがないか探していたのだが結局は見つからなかった……って、



『………………………………………記憶の手がかり?』



 気がつけば食堂の中は水をうったような静けさに包まれていた。な、何だ?


 ……………ポンッ☆


「あー、そうだった。そう言えばゴーマンってば確か記憶喪失だったね?」


 たっぷり五秒程考えてからギリアードが手を打って思い出し、それにアランとルークの二人も頷く。


「言われてみればそうやな。いやー、すっかり忘れとったわ」


「うむ。というかそんな初期設定、覚えている者などいないと拙僧は思うぞ?」


「お前ら忘れてたンかい!? というかルーク! 初期設定って何だよ! 初期設定って!」


 三人のあんまりの言葉に思わず声を荒らげる俺! いくら何でも忘れていたはないだろう!? 忘れていたは!?


「ゴーマン様、落ち着いてください」


「そうだよお兄ちゃん、コイツらに怒っても仕方ないってば」


「ルピーの言う通りです、ご主人様。ギリアードはエルフのこと以外、何も考えていないのですから忘れていても当然です」


「アランさんも~小さい子どものこと以外~特に~気にしてませんし~」


「そうよあなた。ドワーフのことしか考えられないルークに怒っても時間の無駄よ」


「………確かに」


 ギリアード達に何か言ってやろうと思ったが、ナターシャ達に止められて何とか思いとどまる。そうだった。コイツらは自分の好みの女性以外どうでもいい真性の変態だった。


「ゴーマン様。貴方ガ記憶喪失デ、コノ国二記憶ノ手ガカリガナイノハ分カリマシタガ、ソレデドウスルノデスカ?」


 それまで無言で俺達の話を聞いていたアルナが聞いてきた。助かったよ、アルナ。これで話の本題に入れる。


「そう。この国には俺の記憶の手がかりになりそうなものはなかった。だから……、


















































 だから俺は、別の国に旅に出ようと思うんだ」

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