表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/147

第九十一話

「ここか? 何でまたこんな所に?」


 今、俺とナターシャとイレーナの三人は隠れ里のはずれに来ていた。


 長老との話が終わったあの後、他の仲間達とイレーナを仲間にしていいか相談しようと思ったのだが屋敷には仲間達の姿はなく、屋敷にいたエルフの使用人に仲間達は一体何処にいるのかと聞くとここに案内されたのだ。


「ゴーマン様。あそこに」


 ナターシャが指差した先には小さな小屋が一軒だけ建っており、その小屋を俺の仲間達が取り囲んでいた。


「あれは倉庫の代わりに使っている小屋なのだが……奴らは何をやっているんだ?」


「さあ?」


 イレーナが小屋の様子を見て首を傾げて聞いてくるが、それは俺の方が聞きたいくらいだ。


「あっ、お兄ちゃん」


「ご主人様、長老との話は終わりましたか?」


 小屋に近づくとこちらに気づいたルピーとローラがやって来た。


「ああ。それよりこれは一体何なんだ?」


「それが~ちょっと~困ったことに~なりまして~」


「ギリアードがこの里で暮らすって言い出して、あの小屋に引きこもってしまったのよ」


 ステラとテレサが心から困った、というか呆れ果てたという表情でこの状況を分かりやすく説明してくれた。……そうか。大体は予想していたが、やっぱりギリアードが原因か。


 小屋の方を見るとダン、アラン、ルークの三人が小屋に引きこもっているギリアードに呼び掛けていた。


「ギリアードさん! いい加減出てきてほしいッス!」


「そやでー! これ以上は隠れ里に迷惑になるでー!」


「うむ! エルフを愛しておるのであれば迷惑をかけるべきではないぞ!」


 そんな三人の説得に対してギリアードの返答は……、


『イヤだい! イヤだい! ボクはこのエルフ天国で一生暮らすんだい! この里に骨を埋めるんだい!』


 という子供の駄々のような返答だった。あー、もう! エルフが絡むと本当に面倒臭いなアイツは……。


「もういっそのことこの小屋を燃やすか? そうしたら流石にギリアードも出てくるだろ?」


「……………いや、それは止めてくれないか? 小屋を建てる材木は貴重なんだ」


 半ば本気で言った提案だったが、少し考えたイレーナに却下された。むう、いい考えだと思ったんだが。


「はぁ、仕方がないな……」


 俺はため息を一つ吐くと小屋に近づき、ギリアードに呼び掛ける。


「ギリアード、いい加減出てこい。せっかくイレーナがパーティーに入ってくれたんだから」


『………………………………!?』


「え? 師匠、イレーナさんがパーティーに入るって本当ッスか?」


 俺の言葉に小屋の中からギリアードが動揺する気配が伝わり、ダンが驚いた顔で聞いてくる。


「本当だぞ、ダン。イレーナをパーティーに入れていいかお前達に聞きたくて探していたんだが……。丁度いいからここで聞いておくか。皆、イレーナを俺達のパーティーに入れてもいいだろうか?」


『……』


 イレーナを仲間にするのは賛成らしく、仲間達全員が首を縦に振ってくれた。よし、後はこの引きこもり魔術師を外に出すだけなんだが……、


『……………………………………………………っ!!』


 ゴロゴロゴロゴロッ!


「な、何だ?」


「うむ。これはあれであるな」


「この里で暮らすか、イレーナと一緒に旅をするかで迷って小屋の中で転げ回っているんやろな」


 小屋から聞こえてきた異音に俺が首を傾げていると、ルークが納得した顔で頷き、アランが小屋の中の様子を予想する。流石は変態。同類の行動をよく分かっていらっしゃる。


「全く……。このままではらちが明かないな」


 そう言うとイレーナは小屋の扉を軽く叩いてギリアードに話しかける。


「ギリアード。私からも頼む。出てきてくれないか? 私は長い間外の世界に興味を抱いていて、それでお前達のパーティーに入ることを希望した。もし良ければギリアード、お前に外の世界のことを教えてもらいたいのだが……」



「何をしているんだい、皆? 早く次の旅に出ようじゃないか?」



『ええっ!?』


 イレーナの言葉の途中で背後からギリアードの声が聞こえてきたと思って振り返ると、そこには旅支度を終えたギリアードの姿があった。


 ば、馬鹿な!? 一体いつの間に、どこから小屋の外に出たんだ!?


「……なあ、イレーナ? 本当にギリアードと一緒でいいのか?」


 今更だがギリアードとエルフのイレーナを一緒にしていいのか不安になってきた。


「別に構わないよ。ギリアードのあのエルフ好きは異常だと思うが、悪人ではないと理解しているつもりだ。それにあれくらい熱狂的であれば裏切って私を人間に売ったりはしないだろう」


 確かにギリアードはエルフを裏切るくらいならためらうことなく死を選ぶだろう。そういう意味ではイレーナにとってギリアードは信用できる人間だと思う。……俺達のことは平気で裏切るがな。


「ゴーマン! 何をぐずぐすしているんだい!? 早く王都に帰るよ! イレーナさん、これからよろしくお願いしますね」


「ああ、よろしく頼む」


「はい!」




 こうしてエルフのイレーナを仲間にした俺達は半月後に王都に戻ったのだったが、その間にイレーナ関係でギリアードが暴走して様々な問題を起こしたのは………………また別の話にしておこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ