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第七話

 ピロロン♪


「…………………………んあ?」


 ハーピーのルピーを仲間にした日から二日経った日の朝。宿屋のベッドで眠っていた俺の頭の中で聞き覚えのある音がした。


 寝ぼけまなこをこすりながら上半身を起こして左右を見るとナターシャとルピーが眠っていて、窓を見るとまだ日が上りきっていなかった。俺は二度寝したい気持ちを抑えてステータスを呼び出すと情報に目を向ける。



【名前】 ゴーマン・バレム

【種族】 ヒューマン

【性別】 男

【戦種】 魔物使い

【才能】 20/23

【生命】 1000/1000

【魔力】 200/200

【筋力】 100

【敏捷】 100

【器用】 100

【精神】 100

【幸運】 100

【装備】 バトルナイフ、冒険者の服(白)、旅人のマフラー(紫)

【技能】 才能限界上昇、自己流習得、蛇魔女の主、鳥魔女の主、蛇魔女流体術、弓矢系雷撃魔術(1)



「あれ? 【才能】の数値が変わってる?」


 前にステータスを見た時の【才能】の数値は確か「20/20」だったのに、今は「20/23」となっている。でも何で?


「……もしかしてコレのせいか?」


 俺が見ているのは【技能】のところにある「才能限界上昇」という単語。この技能って、才能が限界値に達していたら限界値を二か三くらい上げる技能だったっけ?


 だけど限界値って何だ? それ以前に【才能】って何を表しているんだ?


「……分からないな。後でギリアードに聞いてみるか?」


 昼にはギリアードと会う約束をしているから、その時に聞けばいい。そう結論付けた俺はステータスを消して再び眠ることにした。


 ☆


 そして昼。俺がナターシャとルピーを連れて行きつけの酒場(初めてこの街にきた時にギリアードに食事を奢ってもらった酒場。あれ以来、食事や仕事の打ち合わせはここを利用している)に行くと、ギリアードがすでに昼食をとっていた。俺達も昼食を食べることにして、昼食を食べながら朝のステータスのことを話したらギリアードが驚いた顔で俺を見てきた。


「【才能】の数値が変動しただって?」


「朝にステータスが更新されてな。確認したらそうなっていた。……ほら」


「……本当だ。本当に【才能】の限界値が上がっている」


 俺がステータスを手渡すと、それを見たギリアードが目を丸くして呆然と呟いた。


「それでギリアード? 一つ聞きたいんだけど……」


「分かってる。【才能】について聞きたいんだろう?」


 話が早くて助かるよ。


「【才能】の数値は簡単に言うと『これまで自分を強化してきた回数』と『自分を強化できる回数』を表している。そしてこの数値はボク達冒険者にとってかなり重要な意味があるんだ」


 自分を強化? 冒険者にとって重要な意味がある? どういうこと?


「全ての人はある程度経験や訓練を積むと『力の神殿』という施設で自分を強化することができるんだ。そうするとステータスの【才能】の数値が一つ上がると同時に、【生命】や【魔力】といった各身体能力が上昇して更に強くなれる。……だけど強化するには銀貨一枚の料金がいるんだけどね」


「金がいるのかよ?」


 金は天下の回りものとはよくいったものだ。強くなるだけでも金がかかるなんて世知辛い世の中だぜ。


「こればかりは仕方がないさ。それでここからが本題なんだけど、いくら力の神殿で強化できるといっても、ただ努力をしてお金を持っていけば無制限に強くなれるわけじゃなくて、人にはそれぞれ強くなれる限界があるんだよ」


 そこまで言うとギリアードは自分のステータスを呼び出して、【才能】のところに記された「15/26」という数値を指差す。


「この左にある『15』という数字はボクがこれまで自分を強化してきた回数。右の『26』は最大で何回強化をできるという数字で、これがボクがさっきから言っている『限界値』だ。

 つまりこの数値は『ボクは最大で二十六回自分を強化できて、これまでに十五回自分を強化してきた』という意味なんだ。

 ……そしてボクが力の神殿で自分を強化できるのはあと十一回だけ。そのあとはもうボクは強くなることができなくなるんだ」


 ここまで説明を聞いてようやく話が飲み込めてきた。要するに【才能】の限界値が高ければ高いほど強くなれる可能性があるということで、それは確かに実力が全てである冒険者にとってかなり重要なことだと言える。……ていうか、今の話だと限界値を上昇できる俺って、冒険者としてかなり優秀なんじゃね?


「ゴーマン。正直な話、ボクはキミが羨ましいよ」


 ギリアードが俺の考えを読んだかのように、わずかに悔しさをにじませた表情で言葉を漏らす。


 こいつのこんな表情、初めて見る。恐らく今の言葉は、冒険者としてのギリアードの偽りなき本音なのだろう。


「……え? ああ、急に暗くなってゴメン。これはボクの問題だからゴーマンは気にしないでくれ」


 俺の視線に気づいたギリアードが慌てて手を振る。「分かった」と言って頷くとギリアードは小さく笑って「ありがとう」と答えた後、考えるそぶりを見せて口を開いた。


「……ねえ、ゴーマン。いい機会だから『王都』に行ってみないかい?」


「王都に?」


「王都だったら力の神殿もあるし、キミの記憶探しもしやすくなると思うんだ。あ、もちろんボクもついて行くよ。元々ボクは王都を拠点とする冒険者だからね?」


 ギリアードの提案はとても魅力的だった。この街に来てから俺は仕事の合間に記憶の手がかりを探していたが全く進展がなく、正直な話、俺はこの街で記憶の手がかりを見つけるのを諦めていたのだ。


「それに、さ……」


 そこまで言ったところで言い辛そうに言葉を切るギリアード。


「? それに、何だ?」


「……キミ、最近この街に居づらいでしょ?」


「…………………………はい。ものすっっっっっごく居づらいです」


 ギリアードの問いかけに俺は力なく俯き、絞り出すような声で答える。


 実はこの俺、ゴーマン・バレムは、ルピーを仲間にした日から「魔物だが二人の若くて美しい女性を欲望のままに好き勝手している好色漢」として、この街では知らぬものがいない程の有名人となっているのである。


 外を歩くだけで男からは羨望と尊敬の視線を、女からは畏怖と軽蔑の視線を向けられ、落ち着かないことこの上ない。これらの視線は以前から、ナターシャを連れていた時からあったのだが、ルピーが仲間になってから急に強くなったのだ。


 今のルピーは出会った時のような全裸ではなく、青い上下の水着を着ている(本当はもっと普通の服を着てほしかったが、ナターシャと同じく動きづらいという理由で却下された)。しかしルピーの両腕は鳥の翼で物を掴むことができないため、街の人達はルピーの着替えや食事は全て俺が面倒を見ていると考え、そこから今の噂が流れたというわけだ。


 全く迷惑な話だ。……まあ、事実だから何も言えないが。あ、いや、違うんですよ? 俺は最初、ナターシャに頼んだんだけど、アイツが断固として拒否するから俺がするしかなかったんですって。


「王都には人が多いからね。ここみたいに大きく目立つことはないと思うよ」


「……そういうことだったら断る理由はないな。ギリアード、悪いけど王都に俺達を連れていってくれないか?」


 俺が言うと、ギリアードは笑顔を浮かべて頷く。


「もちろんさ。ああ、よかった。実は王都に行ったらゴーマンに会わせたい人達がいるんだ」


「俺に会わせたい人達?」


「ボクとパーティーを組んでくれている二人の冒険者さ。二人とも根はいい奴らだからゴーマンもきっと気に入ると思うよ」


 俺以外のギリアードとパーティーを組んだ冒険者か。それは興味はあるな。


「………」


 ん? なんかナターシャが不安そうに俺を見ているけどどうしたんだ?

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