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第八十六話

 ブラックオーク達を倒した俺達は、森に生き残りがいないか確認した後、倒した証としてブラックオーク達の遺体から角や耳を剥ぎ取って、それを隠れ里の長老がいる屋敷に持っていった。


「まさかこんなにも早くブラックオークを退治するとは……」


 テーブルの上に山盛りに置かれたブラックオークの角と耳を見て目を丸くする長老。


「流石は複数の魔女を従える魔物使いだけはある……。実力は本物のようじゃのう。イレーナ、戦いを直接見たお前はどう思う?」


「ええ……。戦い方は……その、アレでしたが……実力は本物だと思います。恐らくですが彼らは私よりも強いでしょう」


 父親である長老に聞かれたイレーナは途中で言い淀みながらも答える。戦い方をアレ呼ばわりされたのは自分でも酷い戦いをした自覚があるので流しておく。


「そうか……己の腕に自信を持つイレーナがそこまで言うとはな。ノーマン・イスターは優秀な弟子を見つけたようじゃな。さて、それでは約束通りブラックオーク退治の礼として階級上昇の儀式を……」


「お礼だなんて! そんな水くさいことを言わないでください!」


 イレーナの報告に頷いて口を開いた長老だったが、長老の言葉を別の声が遮る。だがその声を予想していた俺達は驚くことなく全員でうんざりとした表情を浮かべて声の主、ギリアードを見た。


「ボク達は別にお礼がほしくてブラックオーク達を退治したわけじゃありませんよ。ただエルフの皆さんのお役にたちたかっただけでお礼なんて……」


「はぁ……」


 このままだと話が進まないと判断した俺は小さく息を吐くと気配を消し、物音をたてることなく瞬時にギリアードの背後に回り込む。続いて右手の五指を伸ばして手刀の形を作り、右手が本物の剣になったような気持ちで意識を集中させる。そして剣と化した右手を……!


「……っ!!」


 ゴオッ!


 相変わらず気持ち悪いくらいイイ笑顔で長老とイレーナに話しかけているギリアードの首筋に目掛けてためらうことなく全力で振るう!


 これが俺の必殺技の一つ。これまでに暴走した変態共(ギリアードとかアランとかルークとかダンとか)を一撃で仕留めてきた手刀「死神の手斧」だ。ちなみに命名はダンである。


「くっ!?」


 ガキィン!


「なっ!?」


 俺の手刀「死神の手斧」がギリアードの首筋に触れる直前に、金属と金属がぶつかり合うような音が響いた。音がした方を見るとそこには俺の手刀を防ぐギリアードの左手が……!


 馬鹿な!? ギリアードが俺の必殺技を防いだだと!? というか今の金属音は拳と拳がぶつかり合う音じゃないぞ!?


「ふっ……。甘いね、ゴーマン。人間は常に進歩する生き物なんだよ? 確かにボクはこれまでに何度もその死神の手斧に意識を断ち切られてきた。だけどいつまでも死神の手斧の餌食になったりは……」


「シャアアッ!」


 カッ!


「ぐわっ!?」


 俺の手刀を防いだギリアードはドヤ顔で何やら偉そうなことを言おうとしたが、セリフの途中でナターシャの麻痺の魔眼により呆気なく撃沈。……人間は常に進歩する生き物ねぇ。


「あー……。とにかく階級上昇の儀式はすでに準備が整っておる。お前達がよいのならすぐにでも始められるが?」


「え、そうなんですか? それだったら……ナターシャ、いけるか?」


「はい。どうかよろしくお願いします」


「うむ」


 床に倒れたギリアードを見ないようにして若干疲れた声で言う長老に俺とナターシャは頷いて答える。


 いよいよナターシャの階級上昇が行われるのか。……一体彼女にどんな変化が現れるのか、少し心配だな。

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