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第八十五話

『………………』


 気がつけばこの場にいる全員が無言で俺を見ていた。自分達のボスを殺されたブラックオーク達だけでなく、ナターシャ達を初めとするウチのパーティーのメンバーも驚きと恐怖が一緒になった視線を俺に、というか俺の手にある槍『蛇骨槍・双頭の毒蛇』に向けている。


 まあ、かすっただけでブラックオークが即死するような猛毒の槍なんて危険極まりから皆が警戒するのも当然だろう。でもな? お前達全員驚いた顔をしているが、一番驚いているのは俺なんだぞ? ラミア族の族長からこの槍を貰った時に毒効果があるのは聞いてはいたが、ここまで凶悪だとは思わないだろ、普通?


 てゆーか、こんな毒の塊みたいな槍を素手で持って大丈夫なのか、俺? こう、じわじわと手から毒に侵されたりしてないだろうな?


『………』


 ブラックオーク達はまだ驚いているようで固まったまま俺を見ている。今ならあと二、三匹この槍で刺せるかなと思っていると……、


「剛雷砕矢!」


 ズドォン!


 空から空気を読まない魔術師の声と雷が落ちる音が響き渡り、光の矢が一匹のブラックオークの頭に命中した。……今のって確か、ギリアードの切り札とも言える攻撃魔術だったよな? あっ、光の矢が命中したブラックオーク、頭が消し飛んでいるし。


「皆、何をしているんだい!? 今のうちにブラックオークを全滅させるよ!」


 木の上からギリアードの叫びが飛んでくる。ブラックオーク達も今頃になって思考が追い付いてきたらしく攻撃体制に移ろうとしたが……遅いんだよ!


「はあっ!」


 ドスッ! ザシュ!


「プギッ!?」


「ギィアアア!」


 俺は近くにいたブラックオークとの距離をつめると左目を槍で刺し、引き抜くのと同時に体を回転させて石突きの部分にあるもう一つの刃で別のブラックを切りつけた。


『ピギッ!? ギィィイィ……!』


 槍で傷を負った二匹のブラックオークは、傷口を紫色に変色させて二匹仲良く悲鳴を上げて地面に倒れた。この二匹は先程のボス同様にすぐ死ぬとして、これで倒したブラックオークは四匹。確か最初に現れたブラックオークは全部で二十匹くらいだったから残りは十六匹くらいか。


 敵の実力はともかくこの数量差は面倒だなと思った俺は『蛇骨槍・双頭の毒蛇』をちらりと見る。……ふむ。せっかく便利な武器が手元にあるんだから、ここは手っとり早く終わらせるか。


「皆、ブラックオーク達の足止めを頼む!」


「オ任セクダサイ」「分かったよ」「ウン、分カッタ」「了解シマシタ」「任せとき」「うむ、承知した」「はい~分かりました~」「了解ッス」「ハイ」「ええ、任せて」「え? ああ、わ、分かった」


 俺が言うとそれだけで全員、俺が何をしたいのか分かったらしく一斉に返事をしてくれた。


 そこから先の戦闘はもはや「戦闘」と呼べるものではなかった。


 木の上にいるギリアードと下にいるナターシャ達がブラックオーク達を引き付けている隙に俺が槍で攻撃する。


 かすり傷を一つ二つつけるだけでブラックオーク達は毒で死んでしまい、十分もしないうちに二十匹いたブラックオーク達全て退治できてしまった。一匹残らず苦悶の表情を浮かべてこと切れているブラックオーク達の死体を見下ろしてイレーナがひきつった表情浮かべる。


「なんと言うか……これは、酷いな……」


 ……むう。確かにイレーナの言うことにも一理あるな。


 自分でやっておいてなんだが、仲間が不意打ちしてできた隙をついて毒の武器で攻撃するだなんて、質の悪い盗賊……よくて暗殺者の手口だよな。


 なんか最近の俺って「冒険者」というよりも「魔王」として着実に成長している気がするのだが……気のせいか?

ゴーマンは「主人公らしくない主人公」をイメージして作った主人公です。もしファンタジー系のゲームや漫画、小説でゴーマンより主人公らしくない主人公がいたら是非とも教えてください。ゴーマンにはそれ「以下」になるように努力させます。

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