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第八十一話

「……ギリアード」


 嫌な予感を覚えつつ後ろを振り返ると、やはりそこには先程俺が気絶させて外に連れ出したはずの仲間が立っていた。


 ギリアードの姿を見ると目が血走っているし、衣服は乱れているし、千切れたロープみたいなものが何本も体に絡み付いているし……。どうしたんだ? お前?


 それで更によく見ると、ギリアードの右手は気を失ってぐったりとしているダンの襟首をつかんでいるし、後ろには何やら顔を青くして僅かに震えているアルナの姿も見えるし……。本当にどうしたんだ? お前?


「そのブラックオークとかいう奴らは何を考えているのかな? この隠れ里に住んでいるエルフの方々は魔物と契約を結んでいるだけで服従しているわけじゃないのにそんな無茶なことを言うだなんて」


 信じられないよ、と言いたげに首を横に振るギリアード。……言っていることは正論だし、この様子を見ると少しは冷静になれたのか?


「それで長老? ブラックオークは他に何かされませんでした?」


「う、うむ……。そうじゃのう、ブラックオーク達の行動は日に日に悪くなっておってな……。つい先日も無断でこの隠れ里に入ってきおったし、それにこれは未遂で終わったが一匹のブラックオークが住民に手を出そうと……」


「よし♪ 殺しましょう♪」


 レスト長老の言葉の途中でギリアードがすっごくイイ笑顔で提案する。ただし目はまったく笑っておらず額には何十本もの青筋が見えた。


 ……訂正。コイツ、全然冷静じゃなかった。


「殺しましょう♪ そのブラックオークとかいう豚畜生を♪ 豚の分際でエルフの方々の里に無断で足を踏み入れたり、あまつさえ手を出そうだなんて万死に値するね♪」


 仮面のような笑顔で歌うように物騒なことを口にするギリアード。その迫力のある笑顔にこの場にいる全員がドン引きだ。


「ブラックオーク達が全員死刑なのは当然として一体どんな風に殺したらいいのかな? ボクとしては出来る限り惨たらしく、エルフに危害を与えた愚行を生まれ変わっても後悔するくらいの拷問を行ってから殺したいかな? 具体的には両手両足の全ての爪を丁寧にはがしてそれから「そこでストップだギリアード。それ以上言ったら長老とイレーナに嫌われるぞ」……うん、とても冷静になれたよ。ゴーマン、止めてくれてありがとう」


 目に宿った狂気の光を強めながら語るギリアードだったが、長老とイレーナの名前を出すことで何とか鎮静化に成功。だんだんとコイツの操縦の仕方が分かってきたな。


 あと俺は嘘は言ってはいない。だって長老とイレーナ、明らかにさっきまでのギリアードにびびっていたし、あのままだったら嫌われるというか避けられるのは間違いなかっただろう。……会話だけで初対面のエルフをびびらせるヒューマンなんて聞いたことないぞ、俺?


「そ、それでどうなのじゃ? ブラックオークの退治は引き受けてもらえるのかの?」


 ギリアードが静まったところで長老が微妙に目線をそらしながら口を開く。


「それは……」


「勿論引き受けます! このボク達にお任せください!」


 俺の言葉を奪うかのようにエルフ好き……否、エルフ狂いの魔術師が先に答える。……いや、確かに引き受けるつもりだったけどね? というか、ギリアードだったら、隠れ里のエルフ達の好感度を上げるために一人でブラックオークの群れに突撃しかねないな。


「……まあ、そういうことです」


「……うむ。感謝する」


 何かもう色々と疲れたので俺達が首を縦に振ると、同じく疲れた顔をした長老が頷く。


 その後俺達は長老と話し合ってブラックオーク退治は明日行うことにし、今日は長老の屋敷に泊めてもらうことになった。


 そしてその日の晩、外の世界に興味があるらしいイレーナがナターシャ達に魔物の目で見た王都の話を聞きにきた。何でも彼女、ノーマンさんが隠れ里に訪れた時も外の世界のことを聞いていたらしい……って! ギリアード! 大人しくしろっての!

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