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第七十三話

 あの忌まわしい魔女達によるゴブリン虐殺祭から数日後、エルフの隠れ里を目指して旅を続ける俺達はある大きな街にたどり着いた。


「随分と賑やかな街だな」


 その街は様々な格好、種族、年齢の旅人が大勢いて王都とは種類が異なる活気に満ちていた。


「この街は東と西、そして北の隣国に続く街道が交わったところにあるからね。隣国に旅立つ、あるいは隣国から来た旅人で賑わっているんだよ」


 周囲を見回していた俺にギリアードが説明をしてくれる。なるほど、だからこんなに旅人が多いのか。


「この街には旅の道具を取り扱っている店がかなりあるからな、もし買い忘れたものがあるんやったら今のうちに買っておいたほうがええで。あと宿屋も結構ええのがいくつかあるから、今日のところはゆっくりと休めそうやな」


『…………………………ッ!』


 アランの言葉にアルナを除いた魔女達が一斉に目を光らせた。……なんかイヤな予感がする。


「アランさん、その中には大きめの個室がある宿屋はありますでしょうか?」


「え? ……確かあったと思うで?」


 魔女達を代表したナターシャの質問にアランが首を傾げながら思い出すように答えると、それを聞いた魔女達(アルナを除く)が予想通りというか、同時に俺のところに詰め寄ってきた。


「ゴーマン様! 今日はその大きめの個室がある宿屋に泊まりましょう」


「うんうん! ここまでずっと野宿だったから今日くらいベッドで寝ようよ、お兄ちゃん」


「そうですね。それに主従が同じ部屋に泊まって交流を温めるのは大切なことだと思います。ご主人様」


「私も~旦那様と先輩達と~同じ部屋がいいです~」


「私達、まだ新婚なんだから同じ部屋は当然でしょ」


 ナターシャ、ルピー、ローラ、ステラ、テレサが口々に言うが……お前達、考えていることが丸わかりなんだよ! いくら今日まで仲間達と野宿続きでごぶさただからって、少しは本音を隠す努力をしろよ!


「……なーんか、今日も野宿でいいような気分になってきたッスね」


 そんな俺達の後ろでダンがぼやき、ギリアード、アラン、ルーク、アルナが頷く。俺も同意だ。


「あっ。そういえば前から気になっていたんスけど、ナターシャ達とアルナってもし子供ができたら一体一度に何人くらい産むんスか?」


 それは俺も気になっていた。魔女は外見は人間に似ているが半身は人間じゃないからな、子供を産む数が人間と同じとは限らない。


「私達ノ種族ハ大体一度ニ五人カラ六人クライ産ミマス」


「ハーピーもそれくらい産むよ」


 最初にアルナが答えてルピーが続いて答える。


「私達サントールは一人か二人くらいです」


「わ、私は元は人間だから人間と同じくらいだと思うけど」


 これはローラとテレサ。うん、ここまでは予想通りだ。問題なのは……。


「ナターシャ。ステラ。お前達は?」


「ラミア族は子供を授かりにくいのですが、それでも子供を授かると一度の出産で数十個から百個の卵を産みます」


「スキュラ族も~それくらい~産みますよ~」


「………!?」


 ナターシャとステラの言葉に俺は思わず絶句した。一度の出産で百個の卵を産むだと?


「ゴーマンよ。お主、毎晩のようにナターシャ達と肌を重ねているが、子供ができたらどうするのだ? 百人以上の子供を養えるのか?」


 ナターシャとステラの言葉に戦慄したのは俺だけではなく男性陣全員だったらしく、ルークがひきつった表情で聞いてきた。


「……………無理、だな」


 ひきつった顔のルークに俺もひきつった顔で答える。


 実際俺の懐具合は今の生活を維持するのに精一杯といったところだ。家を手に入れて宿代は浮いたがそれでも冒険者の稼ぎのほとんどは食費とポーション代で消えているからな。


 というかそれ以前に百人以上の子供なんてどう考えても養えきれないって!


「ふむぅ……。それだったら師匠に残された道は一つしなないッスね」


 最悪の未来に俺が冷や汗を流しながら固まっていると、何やらダンが思案顔で呟く。


「残された道?」


「そうッス。もしナターシャさん達が師匠の子供を産んだら、師匠が真の『魔王』となって近隣の村とかを襲って子供達の養育費を奪……アダッ!?」


 スビシッ!


 言葉の途中で俺はダンの頭に手刀を叩き込む! 何を言ってるんだ、この馬鹿は!?

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