表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/147

第七十一話

「入浴の邪魔をしてすまなかったね。ボクも一緒に入らせてもらってもいいかな?」


「え? ああ、別に……いい、ぜ」


 笑顔で言って風呂に入ってきたギリアードに俺は思わずしどろもどろになって答える……て! 何動揺しているんだよ、俺!? ギリアードは男だぞ! いくら顔が美人でもコイツは男! 男なんだからな!


「ゴーマン、どうかしたのかい?」


「い、いいや。何でもない。何でもないから気にしないでくれ」


「? まあ、それはいいけどそろそろ座ろうよ」


 この密室の風呂は長方形の形をしていて、唯一の出入り口の向かい側には焼けた石と石にかける水が、左右の壁には人が三人くらい座れそうな長椅子が設けられている。ギリアードが右側の長椅子に座ると、俺は反対の左側の長椅子に座った。


「……ふぅ。中々いい熱さだね。これならたくさん汗を流せそうだ」


 長椅子に座るギリアードはすでに若干の汗をかいていて、頬を赤くしている姿は男だと分かっていても色っぽく見えた。……ぶっちゃけ、ナターシャ達魔女には及ばなくてもそこらの女よりも色気があるよな? コイツ?


「そういえばこうしてボクとキミが一緒の風呂に入るのは初めてだったね?」


「……そうだな」


 ギリアードの言う通り俺とコイツが一緒の風呂に入るのはこれが初めてだ。アランとルークは何度か一緒に入ったことがあるらしいが、その時の話をあまり話したがらなかったが……その理由がようやく分かったよ。


 そんなことを考えているとギリアードがからかうような表情となって俺の顔を見る。


「今のゴーマンの顔……以前一緒に風呂に入った時のアランとルークにそっくりだね。……ねぇ、ゴーマン? ボクってそんなに女っぽい? ボクに欲情した?」


 身につけているのは腰の布一枚という格好で体をくねらせ悩ましげなポーズをとるギリアード。


 イタズラっぽい表情でこちらを見る目とか汗で光って見える白い肌はまるで踊り子の女性のよう……だから止めろって! お前の場合はシャレにならん! つーか、胸を両手で隠すな! いよいよ本物に見えてくるだろが!


 というか何だよコレは!? 相手を混乱させる新手の技能か? ナターシャ達が男を惑わせる「誘惑体質」とかいう技能を持っていたけどギリアードも使えるのか!?


「……………笑えない冗談は止めろ」


「アハハッ。それもそうだね、ゴメンゴメン。……『びーえる』とかいう展開になられても困るし、もうしないでおくよ」


「今なんて言った? 『びーえる』って何だよ?」


「前にダンから聞いたんだけど、男同士が愛し合う状況のことをそう言うみたいだよ? あと、その時ダンが『アランとルークはロリコンだから心配ないけど、ゴーマンはびーえるに走るかもしれない』って言っていたけど…………ボク、大丈夫だよね?」


 ダン。あとで殴り倒す。


「何を心配しているんだよ? 何もするワケないだろうが!」


「ふふっ、冗談だって。ゴーマンがそんなことをするはずがないだろう。もしそんなことをしたらナターシャ達が黙っているはずがないものね」


「当然だ。もし俺がホモに走ったりしたら鬼のような形相をしたナターシャ達に囲まれるに決まっているだろ?」


 ☆


 本当に鬼のような形相をしたナターシャ達に囲まれました。


 密室の風呂を出た途端ナターシャ達に拉致られた俺は今、憤怒の表情をした魔女五人に囲まれて腰に布一枚を巻いた格好で正座していた。


 ……どう考えても詰んでいるよな? この状況。


「……ゴーマン様。詳シイゴ説明ヲオ聞カセモラエマスカ?」


 人間の姿のままで魔物の時のような片言で話すナターシャ。視線から感じられる怒気がメチャメチャ怖い。


「せ、説明とは……?」


「決まっています。わたくし達をさしおいて男のギリアードに欲情したことについてです」


「いや、俺はギリアードに欲情なんてしてないぞ」


 俺はナターシャの言葉を否定するが、魔女達は俺の言葉を信じようとせずに冷たい視線を向けてくる。


「信じられません」


「うん。信じられないよ」


「浴室でのご主人様とギリアードの会話を聞いていれば……」


「まるで~欲情しているように~聞こえました~」


「それにダンもギリアードが相手だと『びーえる』とかいう展開になるかもしれないと言ってましたし……」


 ナターシャ、ルピー、ローラ、ステラ、テレサの五人が口々に疑いの言葉を俺に投げつけてくる。


 というかここでもお前かよ、ダン。お前、本当に後で覚えてろよ。


「いやだから本当に俺はギリアードに、男に欲情なんてしていないって! 信じてくれよ!」


「……分かりました」


 ガシッ!


 ナターシャが静かに言うと俺の肩を凄まじい力で掴んできた。えっ? 何事?


 ガシッ! ガシッ!


 えっ? ルピーとローラも何で俺の肩や腕を掴むの?


「な、何をする気だお前ら?」


「ゴーマン様が男に欲情しないというのならそれを証明してほしいと思います」


「証明って……?」


「さあ、行きますよ。みんな」


 そこまで言ったところで俺はナターシャ達に連行されていった。


 俺がどこに連行されていったのか、連行された後どうなったかは皆さんのご想像にお任せします。


 ……それとダン。お前、本当に後で覚えてろよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ