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第七十話

「ふ、ふふ……。ふふふふふ……」


 ゴーマンの話が終わった後、ボクことギリアード・ライトは自分の部屋で一人笑っていた。


 誰もいない部屋でずっと一人笑っているなんて、自分でも気味が悪いと思うけど、こればかりは仕方がない。何故なら今日、ゴーマンのお陰でボクの夢であるエルフの里の場所が分かったのだから。


 正直な話、生涯をかけてでも探すつもりだったのにこんなにも早くエルフの里の場所が分かるだなんて思ってもいなかった。本当に親友のゴーマンにはいくら感謝してもしたりないよ。


 エルフの隠れ里にはパーティーの全員で旅の準備を整えた三日後に行く予定だ。ボクとしては出来るだけ早く、今すぐにでも旅立ちたい気持ちなんだけど、隠れ里の地図を持っているゴーマンの判断である以上従うしかない。


 うん。本当に今すぐ旅立ちたい。今すぐ旅立ちたいけど、地図はゴーマンが持っているんだよね……。


 ……いっそのことゴーマンから地図を奪って…………いやいや、落ち着きなよボク? たかが三日だよ? 十年以上エルフの里を探し続けてきたのだから三日待つくらい何でもないだろう?


 今から十年以上昔、ボクは魔物に襲われそうになったところを一人のエルフの女性に助けられたことがある。その時のエルフの凛々しい姿は今でもはっきりと思い出せる。


 初恋だった。あのエルフと出会ったあの日からボクはエルフの魅力にとりつかれた。ボクの本当の人生が始まったと言っても過言ではないだろう。


 子供の頃に出会ったエルフがその隠れ里にいるかどうかは分からないけど、それでももう少ししたら憧れのエルフの里に行けるのだから楽しみでしかたがない。


「本当に今から楽しみだよ。……さて、と。風呂にでも行こうかな」


 この屋敷は元々貴族の屋敷だから専用の風呂場が二つ設けられている。ボクは体を拭く布と代わりの服を取ると風呂場に行くことにした。


 エルフは嗅覚が鋭く匂いに敏感なんだ。三日後に旅に出たら半月は風呂に入れるかどうか分からないからね。エルフの里に行くのなら最低限の礼儀として、旅に出るギリギリまで体を清潔に保っておかないとね。


 ☆


「ふぅ、やっぱり風呂はいいな」


 仲間達とエルフの隠れ里に行く相談をしてしばらくした後、俺は屋敷にある風呂場の一つに来ていた。


 この国の風呂は大きく分けて二つある。


 一つは湯で満たした浴槽に入って体の汚れを洗い流すもので、もう一つは室温を高めた密室に入って汗を流すものだ。


 浴槽に入る風呂は湯を沸かしてそれを浴槽に注がないといけないため手間がかかるが、密室に入る風呂は部屋の中で熱く焼いた石に水をかけるためそんなに手間がかからない。


 手間がかかるということは当然風呂を用意するための人件費がかかるということ。浴槽の風呂に入るのはほとんどが貴族みたいな奴らで、庶民が入るのは密室の風呂の方だ。ちなみにこの国には一般人が利用できる大衆浴場があるが、それも密室の風呂の方だ。


 この屋敷には浴場と密室の二つの浴場があるのだが、俺が入っているのは後者の密室の風呂。俺は屋敷で風呂に入る時は必ずこの密室の風呂に入っている。


 俺が密室の風呂を利用する理由は二つ。


 一つは密室の風呂の方が用意が簡単なこと。そしてもう一つは密室の風呂に入っている時だけは一人になれるからだ。


 以前この密室の風呂で搾り取られて(俺だけ)死にかけた時、流石にナターシャ達も反省したらしく、俺が密室の風呂に入っている時は彼女達は入らないことになったのだ。


 うん、一人だけで入る風呂とは素晴らしい。


 ナターシャ達と一緒にいるのも楽しいけど、たまにはこうして一人でのびのびするのもいいよね。命の危険もないし。


 ガチャ。


 俺がつかの間の平和と自由を満喫しながら汗を流していると、誰かが風呂場に入ってきた。入ってきたのは……、


「ゴーマン? キミも入っていたのかい?」


「ギリアード……」


 首からしたを女性に代えたら十分美女で通用する我がパーティーの女顔魔術師ギリアードだった。

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