第四十九話
俺達の前に現れた幽霊の女性は二十歳前後の外見をしていた。体が半透明なせいで見辛いが髪は銀色で肌は白く、服装はやや質素だが品のよいドレスを着ていた。背丈はローラと同じくらいで…………あと、ナターシャと同じくらいある乳房が服の上から自己主張をしてい……
「キィィエエエエーーーーー!」
ゴオゥッ!
『ひいぃ!?』
いつの間にか魔女の姿に戻ったルピーが奇声を上げて凄まじい速度の蹴りを放ち、ルピーの蹴りが幽霊の女性の乳房の部分を素通りしていった。
「今の蹴り、もし実体だったら胸どころか体の前半分を削っていたな……。あれがワンアタック・キルというやつか」
「先手必勝ですか~。ルピー先輩流石です~」
「ご主人様、それにステラ、そんなことを言っている場合ではないのでは? ルピーを止めなくていいのですか?」
俺とステラが感想を述べるとローラが呆れたように口を開いた。それにしても最近のルピーって、自分より胸が大きな女性全てを敵視していないか?
「殺ス……。ルピーヨリオッパイガ大キイ女ハ全テ……ヒャッ!?」
むにゅん♪
「落ち着けってルピー」
血走った目で幽霊の女性を睨み第二撃を放とうとするルピーの胸を後ろから鷲掴みにする。さっきまで触っていたナターシャの胸に比べると弾力は弱いが、その代わりに柔らかさが最高だ。
「ルピー。お前の胸も十分大きいって、それに形も綺麗で揉みやすい。だから自信を持てって」
「ン! ン! アアッ! フアア!?」
俺が胸を揉む度にルピーが口から甘い声を漏らし体をくねらせる。やっぱりルピーが一番胸を感じやすいな。
「フ、ハアァ……。オ、オ兄チャン……モット、モットォ……」
ルピーが蕩けた表情となって潤んだ瞳で見上げてくる。よしよし、幽霊の女性への敵意はもうないみたいだな。
だがルピーよ、その願いは聞けないな。今はそんなことをしている場合じゃないし、これ以上揉むと俺の命がヤバイからな。
「それで? 出てきてくれたのは助かるが一体何の用だ?」
『…………はっ!? 何の用だ、じゃないでしょう! あなた方こそ私の部屋で何をしているのですか!』
俺が聞くと顔を真っ赤にして呆けたように俺とルピーを見ていた幽霊の女性は空中に浮かび上がってこちらを指差してきた。おおっ、幽霊ってやっぱり飛べるんだな。
「え? 君の部屋?」
『そうです! ここはこのテレサ・スペンサーが生前より使用してきた私室です! それなのにあなた方ときたら土足で入ってきただけでなくその上……そのう、え……』
テレサと名乗った幽霊の女性は大声で叫んでいたが、途中からナターシャ達に視線を向けて声を小さくしていく。そうか、この部屋って彼女の部屋だったのか。だったら怒っても仕方ないよな。
カタカタ……。
何だ? さっき部屋の家具が動いた気が……。
『その上! 私のベッドで、え、エッチなことを何回もして! 羨まし……不潔です! 私なんて……私なんて……エッチなことをする彼氏どころか、生前病弱だったせいで同年代の男の人と話したことすらなくて……うぅっ!』
ガタガタガタッ!
話しているうちにテレサの声が徐々に涙声になっていき、それに反応するかのように家具が震えだして音を立てる。……コレって何かヤバくないか?
『…………ば、馬鹿ぁあああーーー! 私だって! 私だってぇ! 一度でいいから男の人とお付き合いしたかったんだからーーー! うわぁぁぁん!』
グオオッ!
「うわっ!? 危なっ!」
「こ、これは……!」
「オ部屋ノ家具ガ飛ンデキタ!?」
「昼間も部屋に入る度に食器やら家具がひとりでに飛んできたがやはりあれは……」
「あの幽霊さんの~仕業だったんですね~」
いよいよテレサが泣き出すとそれと同時に家具が部屋中を飛び回り、俺達が上にいるベッドも今にも動き出そうとしている。
「お、おい! テレサ、だったか? ちょっと落ち着けって!」
『……ひっ!? きゃああっ!』
俺は立ち上がってテレサに話しかけるが、彼女は俺を見たかと思ったらすぐに悲鳴を上げて顔を背けた。……何故に?
『そ、それ! 早く隠して! お願いだから服を着てくださいぃ!』
「……あっ」
テレサに言われて俺は自分が裸だったことに気づいた。




