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第四十五話

「おほん。さてゴーマンよ。話を戻してお主の家のことなんじゃが……」


 ノーマンさんはダンから視線をそらすと一つ咳払いをして俺の方を見てきた。


「どうじゃろう? お主、一つ仕事を受けてみぬか?」


「仕事、ですか?」


「うむ。お主の言う通り、儂は長いことこの王都で暮らしておるし、儂自身もいくつかの空き家も管理しておる。じゃがその中の一つにある『問題』を抱えた家があってのう……。もしそれを無事解決することができたらその家の所有権をお主に譲ろうかと思うが……どうじゃ?」


「…………え?」


 今何て言った? 家の所有権を譲る? 家をくれるの? 貸すじゃなくて?


「ノーマン様。もしやその家というのは『あの』屋敷のことでしょうか?」


 それまで無言でノーマンさんの横に控えていた白い毛並みをしたコボルトの執事、セバスワンが口をはさんできた。というか「あの」って、どういう意味だ?


「うむ。その通りじゃ」


「……なるほど。確かにゴーマン様でしたら適任かと」


 ノーマンさんがセバスワンに頷くのを見て今度は反対側に控えていた黒い毛並みのコボルトの執事、ミュンヒワンゼンが納得した風に呟く。……俺だったら適任?


 一体どんな家なんだよ? 段々と不安になってきたぞ。


「さて。それでどうする? 仕事を受けないのならそれでも構わぬし、仮に仕事を受けて失敗しても儂とお主の仲じゃからな、他の家を格安で貸してやるぞい?」


「……そうですね。分かりました。その仕事、引き受けます」


 俺は仕事を受けることを決めるとノーマンさんに頷いて見せた。


 一体どんな仕事かは分からないが、それでも自分の家を持ってナターシャ達と暮らせるのは魅力的だし、やるだけやってみる価値はあると思う。


「おお、そうか。受けてくれるか」


「はい。……ああ、そうだ。話は変わるんですけど、一つ聞いていいですか?」


 そういえばノーマンさんに一つ聞きたかったことがあったんだよな。いい機会だからここで聞いてみるか。


「ん? 何じゃ?」


「少し前にノーマンさんが昔、この国の騎士団に所属していたという話を聞いたんですけど……それって本当なんですか?」


 今から二十日くらい前、イメルダの一見が終わった時、ランディは確かにそう言っていた。俺が聞くとノーマンさんは首を縦に振って答えてくれた。


「そんな話まで聞いておったか。うむ、お主の言うとおり、儂は過去にこの国の騎士団の一員じゃった。まあ、騎士と言っても実際は傭兵以上騎士未満の扱いじゃったがな」


「そうなんですか?」


「そんなに驚くような話ではないじゃろう? 国が戦力を高めるために実力があって使い易い冒険者を雇うのは珍しいことではない。この国だけでなく各国にも国と専属契約を交わした冒険者を集めた騎士団があり、わしはそこに所属していたというわけじゃ」


 言われてみれば実力のある冒険者が貴族や軍に雇われる話は珍しくないし、力の神殿に行けば見所のありそうな冒険者を探している貴族や軍人もしょっちゅう見かけるしな。ノーマンさんが雇われてもそんなに不思議じゃないな。


「わしが騎士団の一員になったのは三十歳の時。それから十年後に辞めたのじゃが、その時受けた騎士団最後の仕事があのバレム村の村長役じゃった」


 バレム村。記憶を失ったばかりの俺が辿り着いた廃村で、俺はそこで魔物を従わせる方法が書かれた本、魔物使いの書を手に入れた。


 バレム村がなかったら魔物使いの書を手にする機会がなくて、魔物使いの書がなかったらナターシャ達を仲間にすることができず俺はここにはいなかっただろう。


 そんなこともあってバレム村という名前はノーマンさんだけでなく俺にとっても意味があるものなのだ。


「あの村は元々、新しい街道を開くために国が希望者を集めて作った開拓者の村での。わしは開拓者達のまとめ役、そして魔物からの護衛としてここにいるセバスワン、ミュンヒワンゼンと共にバレム村へと行ったのじゃ。……まあうまくいっておったのは村を興してから五年目までで、そこから先は村周辺の魔物の異常発生が続いて結局村人達は王都に戻り、村は廃村になってしまったわけじゃが……」


 ノーマンさんは遠い目をしてその時のことを寂しそうに話す。廃村になった理由はバレム村で見つけたノーマンさんの日記で知っていたが、本人の口から聞くとなんか違う感じがするな。


「……とと、暗い雰囲気になってしまったな。すまんかった。とにかくそんな風に騎士団にいるうちに騎士や貴族の連中と知り合いになってな、お主に勧めた問題付きの家もその時に譲ってもらったものなのじゃよ。じゃからゴーマンよ、その家の件よろしく頼むぞ」


「はい。分かりました」


 その後、俺達はセバスワンから問題の家の資料を受け取って、ノーマンさんの家を後にした。

エロもギャグもない伏線を回収しただけの話です。次回からはまたエロコメらしく楽しんでもらえる話を書けるよう頑張りたいと思います。二月十七日にタイトルを変更しました。(旧タイトル、魔『女』使いのゴーマン・バレム)

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