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第一話

「……ん? ここは……どこだ……?」


 気がつけば俺は森の中に一人立っていた。


「本当にここはどこだ? 何で俺、こんなところにいるんだ?」


 周囲を注意深く見回してみるが見覚えがあるものなんて一つもなく、ここがどこであるか全く分からなかった。……というか、さっきから妙に肌寒いのだけどこれは一体どういうことだ……って!?


「な、何で俺、裸なんだよ!?」


 自分の体を見てみると俺は完全な裸だった。


 何で!? 何で俺ってばスッポンポンの状態でどこだか分からない山の中に一人でいるの!?


「とにかく服を……。…………!?」


 ガサガサッ。


 股間を両手で隠し服を探そうとしたとき、目の前の草むらが揺れてそこから人影が現れた。


「……ゴブ?」


 草むらから現れたのは、腰にボロボロの腰布をまいた俺の半分くらいの背丈しかない緑の肌の小人、ゴブリンだった。


「………」


「………」


 しばし見つめあう俺とゴブリン。


「ええと……こんにちは?」


「ゴブー!」


 俺がぎこちない笑みを浮かべて挨拶したのに対し、ゴブリンは右手に持った棍棒を振り上げて襲いかかってきた。


「うわっ!? ちょ! ちょっと待って! せめて服を探させて!」


「ゴブッ! ゴブッ! ゴブッ♪」


 必死で攻撃を避ける俺にゴブリンは情け容赦なく棍棒を振るう。っていうか最後あたり、明らかに調子に乗ってるよね? このゴブリン?


「待てって……言っているだろがこのゴブ野郎!」


 バキャ!


「ゴブッ!?」


 俺が怒りの拳をゴブリンの顔面に叩き込むと、ゴブリンは勢いよく後ろにぶっ飛んで木に激突。そのまま地面に倒れ、動かなくなった。


「あ、あれ? ……おーい、生きてる?」


 流石にやり過ぎたかと思い、ゴブリンに近づいて呼びかけてみるが……、


「………」


 へんじがない。ただのしかばねのようだ……。


「……ま、まあ仕方ないよな? これは正当防衛だ

。あとそれと……」


 俺はゴブリンの腰布を剥ぎ取ると、それをそのまま自分に着用した。少しサイズが小さいし、変な匂いがするけど、何もないよりマシだろう。


「さてと……」


 ひとまず服(?)を手に入れたところで、俺はここに来るまでの記憶を思い出そうとする。だがどれだけ思い出そうとしても全く思い出せない。


 ……いや、それ以前に……、


「俺、誰だ? 俺の名前って何だっけ?」


 過去の出来事どころか自分の名前すら思い出せない。


 もしかしてコレって記憶喪失ってヤツ……?


「う、嘘だろ!? 何で何も覚えていないんだよ!? そ、そうだ!」


 記憶がないことに混乱していた俺は、あることを思いついて即座に思いついたことを実行する。


「『ステータス』!」


 ブゥン……。


 俺が叫ぶと目の前に一枚の光の板が現れる。


 目の前に現れた光の板、「ステータス」には呼び出した人物(この場合は俺)の名前や種族、身体能力などを正確に記されている。


 このステータスが一体何なのかは全く分からないが、それでも「ステータス」という言葉を口にするか頭の中で念じるだけで誰でも簡単に呼び出せるため、世界中の人達はこれを主に自分の証明書として利用していた。


 それにしてもよかった……。どうやら記憶はなくなっていても、一般的な知識は残っているようだ。


 俺は小さく胸を撫で下ろすとステータスに記されている自分の情報に目を向けた。



【名前】 ???

【種族】 ヒューマン

【性別】 男

【戦種】 なし

【才能】 20/20

【生命】 1000/1000

【魔力】 200/200

【筋力】 100

【敏捷】 100

【器用】 100

【精神】 100

【幸運】 100

【装備】 ボロボロの腰布

【技能】 才能限界上昇、自己流習得



「やっぱり駄目か……」


 ステータスの情報を見て俺は肩を落としてため息をついた。せめて名前だけでも分かると思っていたけど、記憶喪失になるとステータスからも名前が消えるようだ。


 ステータスの存在は知っていてもその詳しい使い方は知らない俺は、しばらくステータスとにらめっこをした後にステータスを消した。


「とりあえず人里を探すか……」


 このままここにいても何にもならないし、それどころか下手したらまた魔物に襲われかねない。そこまで考えて俺は山を降りることにした。


 ☆


「や、やっと見つけた……」


 あれから数時間森の中をさ迷ったあげく、俺は遠くに見える小さな村を確認して呟いた。


 途中で熊やら魔物やらに襲われそうになって本当に大変だったが、無事人里が見つかったからよしとしよう。


 空を見上げるとすでに夕方になっており、俺は村に急ぐことにした。このまま山で野宿だなんて絶対に嫌だからな。


 ☆


「誰もいないな……」


 結論からいうと、山中をさ迷ってようやく見つけた村は、すでに住民に捨てられた廃村でした。


 もうすっかり日が沈んで夜になっていたが、最初に調べた家でまだ使えるランタンを発見したので、それに灯をともして現在廃村を探検中。


「失礼します。誰かいませんか?」


 村で一番大きな家に入ってみたが、やはりここも無人だったので、何か使えるものはないかと家探しをしてみる。するとこの家の主人が書いた日記があった。


 日記によるとこの村はバレム村という名前なのだが、周辺の魔物が異常に発生したのが原因で数年前に廃村となったらしい。あとこの日記を書いたのはノーマンって人で、このバレム村の村長らしく昔は冒険者だったようだ。


 他にも何かないかなと本棚を探すと、何やら気になる内容の本が二冊あった。


 一冊は薬草や毒草などの絵が描かれた植物辞典。これがあれば食べれる野草とかが見つけられそうだ。もらっておこう。


 そしてもう一冊は……「魔物使いの書」?


 読んでみるとそこには魔物を呼び出して契約する方法とかいろんな魔物の生態など、魔物使いになるための知識が全て書かれていた。


 ……魔物使いか。記憶のない状態で一人旅というのも不安だし試してみようかな?


 その後、俺はノーマンさんの家のタンスから少しボロいがサイズにあう服を見つけた。……もしかしたら魔物使いの書よりも、こっちの服の方が大きな発見かもしれない。

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