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第二十三話

 月日が経つのは本当に早いもので、俺達が王都に来てからもう二ヶ月が過ぎた。


 俺はこの二ヶ月の間、ギリアード達を含めた七人でギルドの仕事をしたり、ノーマンさんのお宅にお邪魔して若き日の武勇伝を聞いたり、夜にナターシャ達に搾り取られたりして冒険者としての王都の生活を楽しんでいた。そうしている内に俺達も王都の人達もお互いに慣れてきて、今では俺や魔女であるナターシャ達に親しげに話しかけてくる人もほんの僅かだが出てきた。


 そんな人達に挨拶をしながらナターシャ達を引き連れて大通りを歩き、食事をとるためすっかり馴染みの店となった熱の風亭に行くと、偶然店内で食事をとっているギリアード達の姿を見つけた。……三人ともメニューはホットサンドか。俺達も注文しようっと。


「あっ。ゴーマンじゃないか、久しぶりだね」


「元気そうやな。何日ぶりやったっけ?」


「一体いつ帰ってきたのだ?」


 俺達に気づいたギリアード達が手招きをしながら話しかけてくる。ちなみに俺達はつい先日まで王都から徒歩で三日ほどの距離にある街へ魔物を退治する仕事で行っていて、帰ってきたのは昨日の夜中だ。


 俺達はギリアード達と同じテーブルにつくと注文したホットサンドを食べながら仕事のことを話す。


「魔物はそんなに大したことなくてな、ナターシャ達があっと言う間に倒してくれて俺は全く出番がなかったよ。街に行く途中で山賊に襲われたけど、そいつらもナターシャ達が倒してくれたし」


 最近のナターシャ達は仲間にした当初とは比べ物にならないくらいに強くなっていた。だけどそのおかげで俺の戦闘での出番はほとんどなくなり、今となってはやることと言えば時おり起こるナターシャ達の喧嘩を止めたり、ギルドの仕事を選ぶだけという有り様で……言っとくけどヒモじゃないからな?


「まあ、いいじゃないか。それって強力な魔女を従えるゴーマンがそれだけ優秀ってことなんだから。それにしてもゴーマン達ってよく働くよね。同じ冒険者でもそこまで沢山の仕事をする人って中々いないよ?」


 ギリアードの言うことももっともだと思う。冒険者の仕事は簡単な雑用のような仕事もあるが、魔物を退治する危険な仕事をしたら数日体を休めてから次の仕事をするというのが普通だ。だが俺達は仕事で魔物を退治した次の日にはまた別の魔物退治の仕事を受けていて、他の冒険者から見たら仕事のしすぎに見えるだろう。


「当然です」


 ナターシャが胸を張って答える。


「ゴーマン様には沢山お仕事をしてお金を稼いでいただけないと。そしてわたくし達のポーションを買っていただかないと。その為ならばわたくし達、協力は惜しみませんわ」


「「「………」」」


 ナターシャの言葉にルピーとローラが頷き、ギリアード達の視線が俺に突き刺さる。


 そうなのだ。この魔女三人、二ヶ月前のポーションを使った乱交で味をしめたらしく、仕事で稼いだ金のほとんどがポーション代に消えているのだ。そしてポーションを買うたびに俺は搾り取られながらあのクソ不味いポーションを飲まされているのだ!(ここ重要)


「ゴーマンも大変だね」


「……ああ、本当にな」


 真面目な話、戦闘よりナターシャ達の面倒を見る方が大変な気がする。


 ☆


「そこのあなた! ちょっと待ちなさい!」


 食事を終えて久しぶりに七人で仕事を受けようと冒険者ギルドに向かって大通りを歩いていたら、いきなり後ろから若い女の声が聞こえてきた。


「待ちなさいって言っているでしょ! そこの安っぽい紫のマフラーを首に巻いた薄汚い格好のあなた!」


 さっきよりも語気が強い女の声が背後から飛んでくる。紫のマフラーを首に巻いたのって、もしかして俺のことか? いくらなんでも薄汚いはないだろ?


 後ろを振り返るとそこには見るからに高級な仕立ての服を着た見るからに性格がキツそうな女が立っており、その両隣には鋭い目でこちらを睨む長身の男と穏和な笑顔を浮かべた中肉中背の男が立っていた。二人の男達は腰に剣を差していて、恐らくは真ん中の女の護衛かなにかだろう。


「ようやくこちらを向いたわね」


 両隣に護衛をおいた女は見下すような目線で俺を見ながら口を開く。


「先に自己紹介をしておくわ。私の名前はイメルダ・セネミー。セネミー男爵の一人娘よ。そしてこの二人は護衛のスコットとランディ」


 イメルダと名乗る女に名前を呼ばれた長身の男と中肉中背の男が無言でこちらに会釈する。父親が男爵ってことはこのイメルダって女、貴族か? 貴族が俺に何の用だよ?


「俺は……」


「あなたの自己紹介はいいわ」


 向こうが名乗ったのだからこちらも名乗ろうとしたのだが、イメルダは俺の言葉をあっさりと遮った。あとイメルダの呼び方だが、例え貴族だとしても見下すような目で見てくる女を敬称をつけて呼びたくないので、このまま呼び捨てにしておく。


「ゴーマン・バレム。最近この王都で活躍している珍しい魔物使いの冒険者。あなたの噂は聞いているわ」


 マジで? 俺ってば貴族の噂になるほどの有名人なの? それってちょっと嬉し……


「美しい女性の姿をした魔女と呼ばれる魔物を僕にし、夜な夜な乱交の限りを尽くす魔女達のハーレムの王、人呼んで『魔王ゴーマン』!」


「何そのカッコ悪い魔王!?」


 何だよ魔王ゴーマンって!? マジでそんな噂が流れてるの!? いや、そんなことより噂に一切の嘘や誇張がない事実に涙が出そうだよ!

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