表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/147

第十四話

 食事を終えた俺達は「熱の風亭」を出て、ギリアードを先頭に大通りを歩いていた。


「さて、それじゃあ行こうか」


「行くってどこにだ? 今日の宿でも探すのか?」


「いや。宿屋はボクの親戚が経営しているのがあるから、ボクが頼めば部屋は大丈夫だと思うよ」


 へぇ、ギリアードって王都に宿屋を経営している親戚がいるのか。それは助かる……ああ、そうだ。


「ギリアード。その宿屋って馬小屋はあるのか?」


「馬小屋?」


「ああ」


 俺は頷いてから後ろを歩くローラの顔を見上げた。下半身が馬のローラは普通の部屋には泊まれないが、でもまさか野宿をさせるわけにはいかないだろう。


 ギリアードはローラを見る視線から俺が考えていることが分かったらしく、笑って答える。


「……うん、大丈夫。宿屋には大きな馬小屋があるからローラもゆっくり休めるはずだよ」


「だってさ。よかったな、ローラ」


「ハイ。ゴ主人様」


「「………」」


 俺の言葉にローラは嬉しそうに頷いてくれたが、逆に不機嫌な顔になったナターシャが俺の右腕に力一杯抱きついてきて、ルピーが左腕に噛みついてきた。いや、ルピー、痛いんだけど。


「正に両手に花って感じやな。ゴーマンとナターシャ達、ほんまに仲が良さそうで羨ましいわ。……ワイもいつかあんな風に幼女と手を繋いで街を歩きたいわ」


「うむ。全く同意だ。ただし拙僧の場合はドワーフの女性であるが」


 はいはーい。アラン、ルーク。お前達の発言は色々と危ないからちょっと黙っててくれないか?


「それで宿屋じゃなかったらどこに行くんだ?」


「力の神殿さ」


 力の神殿っていえば冒険者の強化をしてくれる施設のことだっけ?


「ゴーマンって今までに色々な魔物と戦ってきただろう? だから少なくとも一回か二回は強化できるはずだよ。それに……」


「それに?」


「力の神殿は世界各地にあるけどそんなに数があるわけじゃなく、これから行くのはこの国で唯一の力の神殿だ。もしかしたらゴーマンはそこに行ったことがあって、記憶を取り戻す手掛かりがあるかもしれないだろ?」


 ギリアードの奴、そこまで考えていてくれたのか。記憶を取り戻す手掛かりか……。


「そうか。そういうことなら力の神殿に行こうか。ギリアード、案内を頼めるか?」


「うん。任せて」


 ☆


 ギリアードに案内されてたどり着いた力の神殿は「神殿」というよりは石造りの広場という感じで、様々な格好をした人々で賑わっていた。


 鎧を着て腰に剣を差した剣士。杖を持ってフードつきのローブで身を包んだ魔術師。上等な仕立ての服と装飾品で着飾った貴族風の若い男。腰に剣を差しているが明らかに冒険者とは違う雰囲気の中年の男。等々……。


 あれ? ここにいる人って冒険者っぽい奴がほとんどだけど、とてもそうとは見えない奴もいるな。あっ、あそこには子供もいるし。


「ギリアード。ここにいる人達って全員冒険者なのか?」


「いや、違うよ? 確かにここにいるほとんどは冒険者だけどそうじゃない人もいるよ」


「何でだ? こんな所、冒険者以外用はないだろ?」


「そうでもないよ。ここには国中の力を求める冒険者が集まるからね。その中から良さそうな冒険者を自分の部下や護衛にスカウトしようと貴族や軍人も来ているんだよ。もちろん、パーティーメンバーを探す冒険者もね。それであそこで強化をするんだよ」


 言ってギリアードが指差したのは、広場の中央にある石造りの建物だった。建物には二つの入り口があり、左側の入り口には冒険者らしき人達が何人か並んでいたが、反対に右側の入り口は誰も並んでいなかった。


「強化の儀式場はあの左側の入り口からだよ」


「分かった」


 ☆


 冒険者の列に入って待つこと十数分。順番が回ってきた俺は儀式場に通された。儀式場は壁に備えられた照明と光を放つ魔方陣しかない薄暗い殺風景な部屋で、今この部屋にいるのは俺と強化の儀式を担当する男の神官の二人だけ。


 辺りを見回しても「懐かしい」といった感情はわいてこなかった。どうやら俺はここに来たことはなく、記憶の手掛かりは見つかりそうにないようだ。残念。


「大変お待たせしました。早速ですが貴方のステータスを見せていただけませんか?」


「あ、ハイ。ステータス」


 ステータスを呼び出して神官に渡すと、神官は小声で何かを呟きながら俺のステータスを操作する。


「経験値が凄くたまっていますね。これでしたら一気に三回強化できますがどうしますか?」


「本当ですか? だったら三回強化してください」


「分かりました。では、料金は銀貨三枚となります」


 俺は神官に銀貨三枚を支払い早速強化の儀式をしてもらったが、儀式は十秒くらいで終わった。俺が魔方陣の上に立った後で神官が何やら呪文を唱えるだけ。儀式が終わっても目立った変化はなく、本当に強化されたのかと不安となりステータスを呼び出してみる。



【名前】 ゴーマン・バレム

【種族】 ヒューマン

【性別】 男

【戦種】 魔物使い

【才能】 23/23

【生命】 1045/1045

【魔力】 230/230

【筋力】 112

【敏捷】 112

【器用】 109

【精神】 109

【幸運】 109

【装備】 バトルナイフ、冒険者の服(白)、旅人のマフラー(紫)

【技能】 才能限界上昇、自己流習得、魔女難の相、蛇魔女の主、鳥魔女の主、馬魔女の主、蛇魔女流体術、鳥魔女の眼、弓矢系雷撃魔術(1)



 よかった。強化はちゃんとされているみたいだ。どれだけ強くなったかは後で確かめてみるか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ