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青の月の五日(2)「あれはデブ専というやつか!?」

「それじゃあ、お前達! 行くぞ!」


『お~……』


 休憩時間が終わりバリーが先頭に立って張りきった声を上げて、俺達だけでなく護衛達もそれに気の抜けた声を返す。


 全員、ここに来るまでにバリーのワガママに振り回されて見事なまでにやる気がなかった。


 そんな俺達の様子を見てランディが苦笑いを浮かべてふざけたように呟く。


「何だ? 全員随分とやる気が無さそうじゃないか?」


「何で全員やる気がないのか説明してやろうか?」


「それはその……すまなかった」


 俺が言い返すとランディはばつの悪い顔をして黙る。まったく、それだったら言わなければいいのに。


「それはとにかくランディ。冗談抜きでウチのパーティーのストレスが凄いことになっているんだが。今は皆我慢できているが、このままいつ爆発するか分からんぞ?」


 よっぽどバリーのワガママが腹にすえかねたのか、ウチのパーティーってば今も全員殺意のこもった目でバリーの背中を見ているんだぜ?


 もしここで俺が「バリーが邪魔だから死んでくれないかな?」なんてことを冗談でも言ったら、パーティーの皆は、少なくとも俺に従うナターシャ達魔女五人は確実に、バリーの抹殺を行うだろう。それも目撃者、証拠共に無く、更には後始末も完璧な完全犯罪で。


「あー……、それは俺も分かってる。だがこの遺跡の探索が終わるまでだから、もう少し抑えておいてくれないか?」


「もちろん俺の方からも言っておくけど、あまり期待するなよ?」


 何しろウチのパーティーは全員、基本的に欲望に忠実だから我慢の限界値が低いんだよな。


「いや~。バリー君が迷惑をかけて本当にすみません」


「「!?」」


 ランディと話していた時、突然後ろから声をかけられて振り向くと、そこにはこの旅に同行しているもう一人の貴族レオンが立っていた。


「れ、レオン様! いつからここに?」


「いえ、ランディさんがゴーマンさんと話をしているのが見えたので近づいてみたのですが……本当にバリー君のワガママには困ったものですね」


 やはりバリーのワガママにはレオンも思うところがあったのか苦笑を浮かべる。


「あれ? レオン様じゃないッスか」


「本当だ。どうかしましたか?」


 レオンが居ることに気付いてパーティーの仲間が集まってきた。レオンはバリーと違ってワガママは言わないし、物腰が柔らかいから皆も好意的なんだよな。


「いえ、大した用事はありませんよ。それより皆さん、ここまでついてきてくれてありがとうございました。ランディさんから聞いていましたけど皆さんは旅芸人だけでなく冒険者としても本当に優秀なのですね」


 俺達はここに来るまでに何回か魔物に襲われており、その度に俺達は自分の身は自分で守っていて、それをレオンは見ていたのだった。


「……貴殿方程に優秀な方々だったら我が家で雇うのもありかもしれませんね」


 ふとレオンがそんなことを呟いた。えっ? これってバリーの時と同じか?


「え~と、レオン、様……? まさかレオン様も俺にナターシャ達を売れと?」


「いえいえ、そんなことは言いませんよ? 今のは単なる思いつきですからゴーマンさんもそんな不安そうな顔をしないでください。……まあ、もっともナターシャさん達が僕好みの容姿でしたら一人につき金貨五千万枚というのも考えたのですが」


 一人につき金貨五千万枚を考えるだと!? この男、一体どれだけ金持ちの息子なんだよ?


「そ、それじゃあレオン様は一体どんな女性が好みなんスか?」


「はい! 僕はふくよかな女性が好みですね! やっぱり女性は最低でも僕の五倍は腰回りが欲しいですね!」


 ダンの質問にレオンはそれはそれは輝くようなイイ笑顔で答えるのだが……、


 ………………………………………………ハイ?


「あれ? 皆さんどうかしましたか?」


「い、いえ。何でもありません」


 俺達はレオンにそう答えると、彼から少し離れて円陣を組んだ。


「(お、おい! あれはデブ専というやつか!?)」


「(う、うん。多分そうだと思う……)」


「(意外な人の意外な面を見た気がするッスね)」


 いや、人の趣味をどうこう言う気はないんだが……これは流石に驚いた。

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