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第十二話

 ステータスを見せてナターシャ達が危険な魔物ではないと証明した俺達は、ようやく兵士達から解放されて王都に入ることができた。


 王都に入ると活気に満ちた光景が目にはいった。大通りには大小いくつもの露店が並んでいて、ヒューマン以外の様々な種族の人間が何十、何百人と歩いている。


「これは……」


 記憶喪失の俺にとってこの光景は新鮮なもので思わず声が出た。ナターシャ達魔女三人も珍しそうに周囲を見回している。しかし「珍しい」という意味ではお互い様のようだ。


「見られているな……」


 人ごみの中に混じる魔女というのはやはり王都でも珍しいらしく、大通りを歩く人全てが俺達を見ていた。まあ、前の街みたいに大きく注目されていないから別にいいけどね。


「こればかりは仕方がないさ。それよりもゴーマン。冒険者ギルドに行きたいんだけど一緒に来てくれるかな?」


「ギルドに? 何か仕事でも受けるのか?」


「違うよ。前にキミに会わせたい仲間がいるって言っただろう? 先にギルドに行って、彼らが仕事を受けて王都から離れていないか確かめたいのさ」


 そういえば前の街を出る前日にそんなことを言っていたな。


「ああ、分かった。そういうことなら付き合うよ」


「よし。それじゃあ行こうか?」


 ☆


 王都の冒険者ギルドはまるで貴族の屋敷のような豪華で巨大な建物だった。俺達の中で一番背が高いローラでも余裕で通れる入口から建物の中に入ると、仕事を受ける受付がいくつもあり(前の街の冒険者ギルドは受付が一つだった)ギリアードは受付の一つに歩いていくと、受付にいる人に話しかけた。


「やあ、キールさん。久しぶりだね」


 キールと呼ばれた受付の人は禿頭の三十代くらいの男で、ギリアードの顔を見た途端笑みを見せた。


「ん? おお、ギリアードじゃないか。久しぶりだな。今までどこで何をしていたんだ?」


「ちょっとね。それよりも聞きたいんだけどアランとルークの二人、最近ここで仕事を受けていない?」


「久しぶりにくるなりどうしたんだ? ……少し待て」


 キールは僅かに訝しげな顔をした後、手元の資料を調べ初めた。


「……いや、十日前に仕事を受けてから来ていないな」


「そうか。それだったら二人とも王都にいるってことか」


「なあ、ギリアード。後ろにいる男は一体誰だ?」


 キールが俺を指差してギリアードに聞くと、ギリアードは俺の横に近づき肩に手をおいた。


「ああ、紹介が遅れたね。彼はゴーマン・バレム。ボクの新しい仲間さ」


「新しい仲間だと? お前がか?」


 キールが珍しいものを見たような表情で俺とギリアードを交互に見る。一体何だ?


「その通りさ。実力、才能、そして何より人格。ゴーマンは正にボクが、いや『ボク達』が探し求めていた人材なのさ」


「人格だと? ……ん?」


 キールはそこで俺の後ろにいるナターシャ達に気づくが、驚いたりはせずに何かに気づいた表情を浮かべる。


「なるほど……。『そういうこと』か」


「うん。『そういうこと』さ」


 キールの言葉に胸を張って大きく頷くギリアード。


「どういうことだよ?」


 お前ら、当人をおいて会話をするのは止めてくれ。


 ☆


 ギルドを出た後、俺達は少し早いけど昼食にしようと言うギリアードによって、大通りにある「熱の風亭」という名前の大衆食堂に案内された。店中はまだ昼前にも関わらず客が何人も入っていて賑わっていたが、まだ空いているテーブルがいくつかあったのでその中の一つに座った。


「ここはボクのお気に入りの店でね。アランとルーク……冒険者の仲間達との待ち合わせにもよく利用しているんだ」


「そうなのか。結構人気がある店みたいだな?」


「まあね。この辺りだったら一番味がよくて値段も安いし、あとこの店のホットサンドはちょっとした名物だよ」


「ホットサンド?」


「この店の主人が考えたメニューで、円盤みたいな形にして焼いた挽き肉の塊や白身魚のフライを野菜と一緒にパンで挟んだものだよ。早く作れる上にパンに挟む具によって軽食にも夕食にもなるから人気があるんだ」


 そんな料理があるんだ。どんな味なのか少し興味があるな。そう思っていたら俺の考えを読んだギリアードが笑みを浮かべて聞いてくる。


「ねえ、せっかくだから食べてみないかい?」


「そうだな。せっかくだから食べてみるか。お前達もそれでいいか?」


「………」


「オ腹スイタ! 早ク食ベヨウヨ!」


「私ハ別ニ構イマセン」


 ナターシャ達に聞いてみると三人とも頷いてくれた。


「決まりだね。すみません、注文を……」


「あれ? もしかしてギリアードかいな?」


 ギリアードが店員を呼ぼうとした時、横から誰かが癖のある口調の声で話しかけてきた。声の主は頭にバンダナを被っている盗賊みたいな軽装備をした二十歳ごろの男で、隣には俺やギリアードより頭一つ分背が高い鎧を着た大男が立っていた。


「アラン。ルーク。久しぶりだね」


 どうやら知り合いらしく、ギリアードが席から立ち上がると二人に笑みを向ける。


「ギリアード。もしかしてその二人がお前が言ってた仲間なのか?」


「そうだよ。彼らがアランとルーク。ボクのパーティーメンバーさ」

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