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青の月の一日(2)「それにしても……」

「おい、お前ら。不吉なことをしゃべっとらんではよ行こうや」


「うむ。客達もいい加減じれてきておるぞ」


 イメルダがこの国にいるという情報に俺とギリアードが苦い表情を浮かべていると、後ろにいるアランとルークが話しかけてきた。そしてその後ろにはこの街の住人達が大勢、俺達の後に続いていた。


 俺達は今、公演をする予定の場所に移動をしている途中で、歩きながらしていた話にイメルダの名前が出てつい足を止めていたようだ。


「おいおい。何止まってんだよ? 早く進めよ」


「一体どこで公演をやるんだよ?」


「いや……別にどこでもいいんじゃないか?」


「そうだな……。それにそんなに急がなくても……」


 後に続いている住民達を見ると、俺達から大きく離れたところにいる住人達は野次を飛ばし、近いところにいる住人達は踊り子の格好になったナターシャ達を食い入るような目で見ていた。ちなみにナターシャ達を食い入るように見ているのは全員男である。


 ………男って、本当に馬鹿だよな。


「ああ、それじゃあ行こうか」


 あの住民達の様子を見る限り今回の公演も成功は間違いないだろう。公演で手に入るだろう見物料と、この街に来る前に盗賊団から奪った金を合わせたらしばらくは旅の資金の心配はしなくていいはずだ。


 ☆


「はい! ありがとうございました!」


 ワアアアアアアアッ!


 数時間後。俺達は予定の場所につくと早速公演を開始し、やがてナターシャ達全員が躍りを躍り終えて俺が公演の終わりを告げると、観客である街の住人達全員が怒声のような歓声で応えてくれた。


 公演は俺の予想通り大成功。見物料も大量に集まって金貨数枚くらいの額となり、一回の公演でここまで稼げる旅芸人の一座なんてそうはないだろう。……まあ、それでも盗賊団のアジトを襲って財宝を奪った方がかなり実入りがいいんだけどな。


「それにしても……」


 観客達の方に視線を向けると、観客達は舞台の上で手を振っているナターシャ達に見惚れていて、特に男は見事なまでに鼻の下をのばしていた。


「流石は魔女。男からの人気は凄まじいな。……ん?」


「あのナターシャって踊り子、本当に色っぽいよな」


「俺はルピーっていう元気がある踊り子の方が好みだな」


「俺はその隣のローラだな。一度でいいからあんなエロくてカッコいい女剣士に叱られてみたい……」


「いやいや! どう考えてもステラちゃんが一番だろ? あのちっさい体にあの胸は犯則だろ!」


「テレサって踊り子はどこか気品があって楽しそうに踊っていて、俺はああいうのが良いと思うな」


 先程まで舞台の上で踊っていたナターシャ達を称賛する観客達の話し声が聞こえた。自分が従えている魔女達を褒められて嬉しくないはずがなく、一瞬だけこの場に集まっている観客達に「ナターシャ達は俺の女だ」と大声で自慢したい気持ちが芽生える。


 ……実際にそんなことをしたらここにいる男達に八つ裂きにされそうだがな。


 ☆


「よう、ゴーマン」


 公演が終わり観客達が帰った後、舞台の後片付けをしていたらランディがやって来た。


「ランディか」


「見たぜお前らの公演。ナターシャ達を踊り子にするなんてよく考えたじゃないか。確かにあいつらが踊り子だったら成功間違いなしだな」


 どうやらランディも公演を楽しんでくれたようで盗賊のような顔に笑みを浮かべて話しかけてくる。正直、コイツが笑うとかなり怖いのだが、今はそれより気になることがあった。


 ランディの隣には見るからに仕立ての良さそうな服を着た丸々と太った若い男が立っていた。


 誰だコイツ? よく分からないけど嫌な予感がするな……。

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