第九十七話
イレーナの心に染みすぎる忠告に十分ほど泣いた後、俺達は店の裏側にある専用の出入り口から魔動馬車を出し、ミストンを加えた仲間全員で一旦屋敷に戻ることにした。
「さて、それじゃあ移動手段も手に入ったことだし、旅の計画について話したいと思う」
屋敷の居間でこれからの旅について話し合おうと話を切り出すと。仲間達も異論はないようで頷いてくれた。
「そうだね。次は一体何処で新たなるエルフの里を探すか、今のうちに決めた方がいいからね?」
「そうやな。可愛いちびっこが多そうな目的地を探すのは早い方がええからな」
「うむ。拙僧らの心の聖地、ドワーフの国への安全かつ最短の旅路。早目に探すべきであるな」
「そうッスね。アルナに続くケモノ娘を探す拠点、早く探すッス」
「そうであるな。マリアの完成に必要な素材。それらを効率的に集められるルートは旅立つ前に検討すべきであるな」
………………………………………。
『ああっ!?』
ギリアード、アラン、ルーク、ダン、ミストンの五人がそれぞれ自己中心的な発言をしたと思ったら一旦おいた後、視線だけで人を殺せそうな目で睨み合う。
……お前ら、もう少し自分の欲望を隠す努力をしろ。
「あー、お前ら。ちょっと俺の話を聞いてくれないか?」
このままだと話しあいではなく殴りあいが行われだそうだと判断した俺は、少し強引に話を切り出した。
「確かに次の目的地を決めるのは大切だけど、その前に旅先で路銀を稼ぐ方法について話したい」
「路銀を稼ぐ方法? 今まで通り冒険者の仕事をすればいいんじゃないッスか?」
俺の言葉にダンが首を傾げて聞いてくる。
「いや、冒険者ギルドというのはこのファング王国を初めとする大陸南部の数ヵ国しかないんだ。俺は必要だったら大陸北部にも足を進めたいから、冒険者以外での金を稼ぐ方法を考えているんだ」
ダンに説明してやるとそれを聞いたミストンが頷く。
「確かに大陸北部も旅するつもりであるのなら、冒険者以外での金策は必要であるな。それでゴーマンよ? 何か考えでもあるのか?」
「今のところ一つだけある。……このメンバーで『旅芸人』の一座をやって金を稼ぎながら旅をしようと思う」
『旅芸人!?』
俺の提案に食堂にいた仲間のほとんどが驚きの声をあげた。
「旅芸人ってアレだよね? たまに大通りで芸をしている彼らのことだよね?」
「そんなんワイらにできるんかいな?」
「ゴーマンよ。勝算はあるのか? 拙僧、自慢ではないが歌も躍りもまるで駄目であるぞ?」
「勿論芸の当てはあるさ」
ギリアード、アラン、ルークの三人に俺は頷くと隣の椅子に座るナターシャを見る。彼女、正確には彼女達が成功の鍵だ。
「俺が前にラミアの集落に行ったのは知っているな? そこで俺はラミアを初めとする魔女が踊りが達者なのを知って、実際にそれを見せてもらった。あれを演目にしようと思うんだ」
「なるほど。確かに魔女達の踊りは人間のとは違った魅力のある見事なものばかりだ。あれを芸として披露するのであれば成功するかもしれん」
長年一族ぐるみで魔物と付き合ってきて魔女の踊りも見たことがあるであろうイレーナも賛成してくれた。彼女にこう言ってもらえたらこの話も希望が持てる。
「踊りを踊るのは俺に従ってくれる魔女達。……ナターシャ、ルピー、ローラ、ステラ、テレサ、頼めるか?」
「はい。お任せください」
「皆の前で踊ればいいんでしょ? それだったら大丈夫だよ」
「了解しました」
「はい~。分かりました~」
「ひ、人前で踊ったことはないんだけど……が、頑張るわ」
ナターシャ達五人も結構乗り気で了解してくれた。
他のパーティーメンバーには楽器の演奏、もしくは護衛役を頼むと皆も「それくらいならば……」と了解してくれる。
「よし。これで金を稼ぐ方法はなんとかなるな」
「でも師匠。旅芸人なんてよく考えついたッスよね?」
「………………いや、まぁ。旅芸人の踊り子だって言えばナターシャ達のあの服(テレサ以外、全員水着)もなんとか誤魔化せるだろ?」
「………………あぁ、なるほど」
ナターシャ達(テレサを除く)って「動き辛い」とか言って水着以外着てくれないんだよな……。今では王都の人達も慣れてくれたけど、最初の頃は色々と凄く誤解されたものだ。
でも踊り子だと言っておけば誤魔化せ……るよな?
昨日のうちに投稿しようと思っていたのですが間に合いませんでした。
旅芸人をやりながら各国を旅するというのは結構前から考えていて、ようやく実行に移せそうです。
……ま、間違っても好きなゲームの影響は受けていませんからね!? ホントデスヨ!?(背中に○ンスターハンター4を隠しながら必死に弁明)