四話 クラスメイト、風紀委員の仕事
「ずいぶんと、賑やかやったな?」そう言って遼一の隣りの男子生徒が話しかけてきた。
「えっと、水木だったよな?」
「そうだが、俺は哲也でいいぜ?その代わりお前のことも遼一と呼ぶからな?」ニカッとしながら笑った。
「それはいいが…お前いい迷惑にしか思わないぞ?」
「そうか?楽しそうで何よりだと思うんやけどな?」
「楽観的だな、哲也って」
「そうか?まあ、でもよく言われるわ。それにしても、何で遼一って風紀委員に選ばれたんや?」
「風紀委員に知り合いがいてな。その人に推薦された」
「マジか!誰なん?まさか…さっきの風紀委員長か?」
「いや、副委員長の一ノ瀬先輩だ」
「え!?遼一ってあの一ノ瀬先輩と知り合いだったんか!?」
「シッ、声が大きい」指を口に当てながら言った。
「え!?一ノ瀬先輩と知り合い?」
「あの御曹司と!」
「もしかして、電話番号とか知っている!?」
「なあなあ、俺にもその話を聞かしてくれよ!」
授業中にも関わらず、クラスの全員がそう言って遼一の席に集まってくる。
授業中とはいえども、先生はいない、映像授業のためにその必要はないのだ。
遼一は哲也をジト目で見た。
見られた本人は知らんふりを決め込んで映像の授業にのめり込んでいた。
あとで、覚えていろよ。遼一はそう思いながら、クラスの人達と話をした。
「あっはっはっは、ごめんな遼一、売店でなんか奢るから許してや~」手を合わせながらそう遼一に謝った。
「まったく、お前のせいだからな。それで奢ってくれるんだろ?さっさと行こう」そう言って席を立った。
「おう!まかせとき~男に二言って言う奴はないからな。俺のおすすめのパンがあるんよ」
「パン?ジュースで良いんだが」
「だったら、ジュースも奢ってやる。それよりも早く行こうや!」そう言って勢いよく教室を飛び出した。
「きゃあ!」
「な!ご、ごめん!」
教室を出た瞬間にクラスの女子生徒とぶつかってしまった。女子生徒は尻もちをついた
「い、いや、大丈夫だよ?」そう言ってスカートを手で払いながら、立ち上がった。
「本当にごめん!全然見えなかったわ」
「み、見えなかった?」突然そう言って上目遣いで涙目になった。
「え?あ…いや、まあ、不注意でな、よく見ていなかったんよ」たじたじになりながらそう言った。
「ち、小さくて見えないってまた言われた…」そう言って涙が一筋こぼれる。
「え!?ちょ、ちょっと!?そんなこと一言もいってないで!?」哲也はそう言って慌てだす。
確かに女子生徒は背は140センチくらいで小さいだろう。さらにその小ささで童顔なもんだから、小動物を連想させる。
そのような表情をされたら、男女関係なく保護欲に駆り立てられるだろう。
哲也を傍から見れば、完全に女子を泣かせた男子だろう。案の定、冷やかな視線で他の廊下に居る生徒たちは哲也を見ていた。
「俺は決して小さい方ではないと思うぞ?」手助けをするために遼一がそう言った。
「え?」そう言って上目遣いで遼一を見た。
「決して小さい方でないと言ったんだ」そう言って少し笑みを浮かべながら言った。
「そ、そうかな?」そう言って涙を拭きながらそう言った。
「それで、ぶつかった謝罪の意味を込めてコイツが何かを奢ってくれるらしいぞ」哲也を指しながらそう言った。
「ほ、ほんとう!?」目をきらきらとさせながら嬉しそうに言った。
「あ、ああ、お安い御用や」哲也はそう曖昧な笑みを浮かべながらそう言った。
「私、イチゴパフェ!」そう言いながらイチゴパフェ300円と書かれている販売機を指差しながら言った。
「俺は紅茶と同じやつ」150円の紅茶とイチゴパフェを買うように言った。
「ま、まて!俺の財布事情を考えてな!それにお勧めのパンがあるって」
「おい、一体誰が迷惑をかけたと思っている?」
「まったくだよ。迷惑掛けた人がそんなセリフ言っていいのかな~?」
ジト目で遼一とその女子生徒が哲也を睨みつける。
「わ、わかった、奢るわ。ちゃんと奢るから」そう言いながらしぶしぶ自分のIDカードを販売機にかざして自分の分のパフェを入れて1050円を払った。
現在のお金の水準は今から100年前の2010年からほとんど変わっていない。そのため、千円近くの出費となると学生の財布事情では痛いだろう。
三人は券を渡したら、すぐにロボットからパフェが渡された。
ここの食堂は長テーブルで椅子が並べられている。外にもパラソル付きのテーブルが置かれている。
掃除や簡単な食事のトッピング、食事の持ち運びはすべてロボットだが、食事を作るのはすべて人間だ。
「でも、大丈夫か?そんなの十分じゃ食えないだろう?」哲也はそう言いながらパフェを見た。
「問題ない、五分、十分遅れたところで関係ないだろう」そう言いながら遼一はパフェを食べた。
「そうだよ。それにここのパフェおいしいんだよ?」幸せそうな顔で食べながら言った。
「…うまいわ!このパフェ」哲也がそういながら食べた。
「そうでしょ?私のお気に入りの一つなんだよ?他にもチョコのトッピングとかあとはクリームなんてのもおいしいんだよ?」目をキラキラと輝かせながらそう言った。
「そ、そうなんだ」遼一はやや顔を引き攣らせながらそう言って紅茶を飲んだ。
「そう言えば、名前聞いてなかったわ…なんて言うんや?」哲也はそう言いながら女子生徒を見た。
「そう言えばそうだったね。私は有野静香。よろしくね。立花君とえっと…」
「俺は水木哲也や。哲也でええよ?」
「よろしくね水木君」そう笑顔で言った。
「いや、哲也で―――」
「よろしくね水木君」そう一度、笑顔で言った。ただ、出ているオーラが黒いのは気のせいではないだろう。
「はい…よろしゅうな」あははっと笑いながらそう言った。
三人はパフェを食べ終わって、授業を受けた後、昼休みになり、また一緒に食べよう、となって食堂に向かった。
「そう言えば、他の女子と食べなくてよかったのか?」遼一はそう言って静香を見た。
「うん、だって自分で食べられるのに食べさせようとするし、なにかとお世話をしようとするから」困った表情を浮かべながら言った。
「でも、男子と食べたいとは思わなかったな」
「そうなのか?でも実際は俺達とは食べてるけど…?」哲也はそう言って静香を見た。
「二人はいいんだよ。他の男子と違って変な目で見ないし」
「ああ、ロリコンって奴やろ?いるよな~、小さい奴が好きな奴がな」そう笑いながら哲也が言った。
「また小さいって言った」そう言いながら哲也を睨みつける。
「あ…いや、そうじゃなくてさ、うん、可愛いんだよ小さくて」うろたえながらそう言った。
「ま、また、小さいって…」そう言いながら涙目になった。
「わ、わかった!泣くな!パフェをもう一個奢るからさ!」余程慌てているのか関西弁ではなくなっていた。
哲也って似非だったのか?遼一は慌てている哲也の様子を見ながらそう思った。
「ほんと!?」そう言って目を輝かせた。
「あはは、ほら、買ってきてやるわ…。俺の金が…」そう言いながらトボトボと立ち上がって歩き始めた。
「ずいぶんと策士なんだな」遼一はそう言って静香を見た。
「え?なんのことかな?」そう言って可愛らしく笑いながらとぼけた。
「あんまりやってやるなよ。あいつが可哀そうだから」
「ふふふっ、だから何のことかな?」そう小悪魔ぽく笑いながら言った。
「まあいいか。それと、聞きたいことがあるんだが」
「うん?何?」そう言って首を傾げながら遼一を見た。
静香のこのような姿を見たら、思春期の男子生徒は顔を合わせられないだろう。しかし、遼一はそのような行動は取らなかった。
「有野って苗字で気になったんだが、父親は技術長だったりしないか?」
「え!?何で知っているの!?」そう言って驚いた表情で言った。
「いや、親の関係で知り合いなんだ」
「そ、そうなんだ。お父さんと知り合いなんだ」そう苦い顔をしながら言った。
「…父親が苦手だったのか?それだったらすまない」
「いや、苦手ってわけじゃないけど…、ただ、あまり家にいないからさ」
「…仕事が忙しいんじゃないのか?」
「たぶんそうだと思う。確か、ファースト・ブルームが出てきたあたりから」
ファースト・ブルームとは、現在、第二世代のMWのスタンモードの基礎理論を確立して初めて世の中に技術を流した人だ。
他にも、エネルギー効率をあげたり、魔法の速度向上や威力の向上など、様々な成果を上げている。
「私のお父さんはファースト・ブルームの代理人みたいな人だからさ、どうしても忙しいんだと思うんだよね」そう言ってあははっと笑いながら言った。
「でもさ、ファーストも好きじゃないんだよね。姿を現さないからさ。そのせいで、他の人にも迷惑をかけているのに…」
「そうか…やっぱり姿を現してほしいのか?」
姿を見せないということもあってファーストの研究成果が出るたびに大袈裟にメディアに取り上げられ、ファーストのせいでMWの研究者達は新作が出るたびに自分の研究成果が霞むので苦い表情を浮かべている。
「うん、でも我が儘だと思うんだ。姿を現さないのは何かの事情があるってことだって、お父さんは正体を知っていると思うけど…」
「…我が儘言ってもいいんじゃないか?」
「え?」ポカンとした表情で遼一の方を向いた。
「言わなきゃ分からないことだってあるんだ。だから、父親に話してみるのもいいんじゃないか?」
「…うん、そうしてみるよ」
「ああ」そう言って頷いた。
「おっしゃ買ってきた!ほら」パフェを持ってきた哲也がそう言って静香の目の前に出した。
「ありがとう。…おいしいよ!」そう言って笑顔になって言った。
「それなら、買ってきたかいがあったもんや」そう言って哲也も笑顔で言った。
「あっ!やっと見つけた!おい、遼一!なんで教室に居なかったんだよ」照吾がそう言って遼一に近づいてきた。
「そうだよ。本当に探したんだから…どうでもよかったけど」麗華はやれやれといった表情をしながらそう言った。
「まったく、あんたらしいわね」梓も呆れながらそう言った。
「ふふふっ、確かにそうだね」美希は微笑みながら言った。
遼一達の目の前に照吾、麗華、梓、美希がやってきた。
「わざわざ昼休み時間に来る必要なんてないだろ?Aクラスが来たら目立つぞ?」遼一は呆れた表情を浮かべながらそう言った。
「まあ、いいじゃねえか」哲也は笑いながらそう言った。
「まったく変わらないなお前」遼一は首を振りながらそう言った。
「おいおい遼一そう言うなよ、今の俺を小学校の時の俺と思って貰っちゃ困るぜ?」にやにやと笑いながらそう言った。
「これでも試験の筆記の方はCだったんだぜ?」ドヤ顔でそう言った。
Cという評価は優秀な方だろう。Dは普通でB以上は秀才クラスになる。
「私は知っての通りAよ。照吾以外みんなそうでしょ」梓はそう言って遼一、美希、麗華を見た。
三人とも頷いた。
「はっ?」照吾ポカンと口を開けながらそう言った。
「あんたよくAに入れたわね。どうせAクラス最下位なんでしょうけどね。それよりも遼一がFクラスって言うのが信じられないわ」
「まあ、色々あるからな。でも、照吾も実技の方で評価されたんじゃないか?」
「そうだよ。照吾君は才能があるんだから」
「ありがとう二人とも、そこにいる毒舌女とは違うぜ」チラッと梓を見ながらそう言った。
「何が毒舌女よ!このチャラ男!女誑し!」キッと睨みながら言った。
「うるさい!お前にはもう少し淑女という嗜みをだな―――」
「それよりもそちらのかわいい女の子とその隣に居る男子は?」麗華は二人を無視してそう言って促した。
「えっと…初めまして」
「えっと、いつも遼一のお世話になっています」
静香と哲也が苦笑いを浮かべながらそう言って頭を軽く下げた。
「おいおい、同級生だぞ?なんでそんなに畏まっているんだよ?」いつの間にか言い争いが終わったのか照吾はそう苦笑いで言った。
「いや、だってみんな風紀委員と生徒会のメンバーやし…その偉いみたいな?」哲也はそう言った。
「関係ねえよ。同級生だしフレンドリーに行こうや。俺は竹下照吾、二人は?」
「ああ、俺は水木哲也、哲也でええよ?」
「私は有野静香、私も静香でいいよ?」
「わかった。そしたら俺も照吾で頼む」ニッと笑いながら言った。
「ああ、よろしくな」哲也もニッと笑いながら言った。
「よろしくね照吾君。えっと、そっちの女の子達は?」
「私は鳳凰梓、梓でいいわ」
「私は五木麗華、呼び方はどっちでもいいわよ」
「私は円城寺美希、私は呼び方は何でもいいよ」
「よろしゅうな、三人とも」哲也はそう笑顔で言った。
「えっと、よろしくね。梓ちゃん、麗華ちゃん、美希ちゃん」静香は笑顔でそう言った。
「あっ、口にクリームついてるよ」美希がそう言ってハンカチで拭きとった。
「ありがとう、えっと…美希ちゃん」そう笑顔でいった。
「…かわいい」美希が片手を頬に当てながらそう言った。
「た、確かにそうね…そのリスみたいって言うか」梓もタジタジになりながら言った。
「本当よね~、妹にほしいって感じよね」麗華もそう言って微笑ましい表情を浮かべた。
「そ、そうだな、かわいいよな」照吾は顔を赤くしながらそう言った。
「よかったな静香、要約したら小さくて可愛いってよ」にやにやしながら哲也が言った。
「…もういいよ、意地悪する人とは絶交だよ」涙目になりながらそう言った。
「ちょっと、泣いちゃったじゃない!」
「男が女を泣かせるのは最低よ」
「うん、人を傷つけるのはしてはいけないと思うよ?」
「…ああ、確かにその通りだな見損なったぜ哲也」
梓、麗華、美希、照吾の順で哲也をせめた。
「わ、悪かったってさすがに悪ふざけし過ぎたよ、絶交とか言わないでくれよ」そう言いながら静香の方に向いた。
「・・・」しかし、静香はそっぽを向いて哲也を無視した。
なんとかしてくれ~という視線を遼一は哲也から受け取った。
遼一はIDカードを取り出して300円を哲也に送った。
現在は電子マネーが主流だ。相手に渡したい時はあげる相手のIDと合わせて送ることが出来る。しかしIDは自分の自身の指を触れておかないと認証できないようになっているため、勝手に取られて使われるということはない。
哲也は手を合わせながら遼一にお礼をした。
貸しだ、と口を動かして哲也に伝えたらグッと親指を立ててジェスチャーを送った。
まったく、少しは反省しているのか?遼一はそう思いながら呆れた。
結局その時間はみんなさぼってしまって昼休み哲也、静香は慌てて授業を受けていた。そんなこんなしていて昼休みは終わり、任された風紀委員の書類の仕事を終わらせるため、風紀委員室に行って遼一は五時間目は休んだ。
そして休み時間一人で教室に戻ろうとしたら十人近い男子生徒に囲まれた。
「おい、ちょっと付き合って貰っていいか?」そう言って遼一に詰め寄った。
「ああ、いいけど」そう言って男子生徒達に付いて行った。
一体何回目だ。遼一は気絶した男子生徒を見ながらそう思った。クラスを確認したところ、どうやらCクラスのようだった。
やれやれ、本当に面倒だな、いくら自分たちがエリートだからって。遼一はそう思いながらその場を去った。
遼一が言うことは間違っていない。実際、関東魔法学校は国立大学付属の中で一番優秀な学校だ。それもそのはず、関東が一番人口が多いからだ。
毎年、定員210名に対して10万人以上の生徒が受験を申し込んでくる。その熾烈な競争を勝ち抜いた生徒たちが入学をしてきているのだ。無能なはずがない。
さらにクラスが優劣で分けられるため、そこで優越感が生まれるのであろう。自分たちは優秀なのだと。
しかし、クラスに分けられたと言ってもそこにものすごい差があるとは限らない。
わずかな差でクラスが違うというわけだけかもしれないのだ。
その慢心をなくすためにも毎年クラス分けが実施される。ほとんど変わることがないと言ったがそれには理由がある。
最初に行われるテストで示されるのだ。差がほとんどないということに。
テストは一学期に一回実技や筆記のテストが行われるがテストの結果はバラバラだ。上位あたりはやはりAクラスが占めるがそれ以下になるとGクラスやFクラスなどが割り込んでくるのだ。
そして、そこでやっと気づくのだ。“クラスの優劣は関係ない”と。そして、上位クラスの人達は奮起して自分のクラスを維持するのだ。そして二年に上がるころには完全に優劣関係はなくなる。
「あはは、本当に楽しそうだよな。てか、何で私を呼んでくれないんだよ。速攻で倒してやるのにさ」笑いながら加奈は遼一に言った。
「嫌ですよ。二瀬先輩を呼んだら、正当を盾に本当に相手に大ケガを負わせそうなんで」
「なんだ?私がそんなに悪魔に見えるか?」にやにやしながらそう言った。
「今のその表情で言ったら誰でもそう思いますよ。それよりも、早く机から足を下ろしてください。スカートの中見えますよ?」
椅子に座った状態で机に足を上げているため、スカートの中が見えるか見えないかギリギリのラインだ。健全な男子高校生には目に毒だろう。
「ほう…お前がそう言うのだったら、ずっと見ていたということか?」そう言いながら余裕な表情で遼一を見た。
「いえ、先程からチラチラと照吾の奴が二瀬先輩の方を見ていたので」
「ちょ、ちょっと待て!まるで俺が二瀬先輩のスカートの中を見ようとしていたみたいじゃないか!」そう言って椅子から立ち上がって照吾が抗議をした。
「そうだろう。実際みていたし、先程から書類のチェックが進んでいないみたいだが?」
「そ、それは…、ね、眠いだけだ!」
「なんだ、お前は眠かったら女性のスカートの中を覗きたくなるのか。まさか、竹下にそういう性癖があったとはな」加奈はそう言ってジト目で照吾を見た。
「ち、違います。そのような性癖は持ち合わせていません」顔を真っ赤にしながら否定した。
「まったく、そんな中が見たいのか…ほら」そう言ってスカートを捲った。
「ちょ、ちょっと先輩!」照吾はそう言って目を逸らした。
「なんだ?さっきまで見てたのに今更になって見れないのか?」
「そ、そんなことは――ってさっきも見ていませんって!」
「そうか、しかし、このチャンスを見逃せば、一生私のスカートを見れないかもしれないんだぞ?」
加奈は容姿は美少女だ。いつもクールでショートヘアが似合う女の子という感じだ、男女問わず人気があり、また人望がある。
そんな美少女のスカートの中を見せているのだ。大抵の男子は見ているだろう。
「…う、うう」照吾はそう言いながら恐る恐る加奈の方を見た。
「え…スパッツ?」照吾はポカンとした表情でそう言った。
「あははは!どうした、パンツじゃなくてがっかりしたか?」加奈は腹を抱えて笑って言った。
「もう!騙すなんてひどいですよ!…見たかったのに」
「まったく、面白い奴だな。本当におもしろい」目から涙が出そうになるほど笑って言った。
「おい、照吾、俺の聞き間違いじゃなければ最後に―――」
「うわっ!待ってくれ!それは言うな!」そう言って遼一の口を慌てて防いだ。
「ほう、なんか竹下の奴が何か言ったのか、おいその手をどけろ。話が聞きたい」そう言いながら照吾に近づいて行く。どこか面白そうにしているのは気のせいではないだろう。
「か、勘弁してください!し、仕事を手伝いますんで!本当にご勘弁を~!」若干涙目になりながらそう言った。
「二瀬先輩、いい加減にしてください。照吾君がかわいそうですよ。それに、自分の仕事が終わっていませんでしょう」大志がそう言って止めた。
「なんだ一ノ瀬?そんなに構ってほしいのか?」
「そうですね~。でも先輩には書類のチェックという先約がいるみたいなので僕に構わなくていいですよ?」笑顔でそう言って断った。
「いや、それはお前が…」言葉を詰まらせながらそう言った。
「何を言っているんですか?今日は終わるまで家に帰しませんので」
「ま、待て一ノ瀬、あれは私がやったら今日一日で終わる量ではない!」自分の机の上にある書類を指さして額から汗を出しながらそう言った。
「今までの僕でしたら、甘やかしていましたけど、後輩が入ってきたので先輩の威厳と言うのを見せなければいけないと思うんですよね」にこにこと笑顔を絶やさないで言った。
「そ、そこで発揮しなくていい別のところで頼む。…デ、デスクワークは苦手なんだ」上目遣いでそう言った。
一撃必殺と言ってもいいだろう。普段から強気な加奈がこういう表情をしたら誰もが言うことを聞くだろう。
「はいはい、僕にそう言うのは効かないのでさっそくお願いします」バンッと二瀬の机の上に確認の書類でいっぱいになった。
しかし、相手は大志である相手が悪すぎた。
「い、一ノ瀬の鬼!悪魔!」そう言って大志を罵倒し始めた。
「そうですね」笑顔でそう言って大志は作業に戻った。
現在でも大切な書類は全て紙だ。それはデータ上であればいくらでも書き換えが可能だからである。風紀委員は校則違反者のチェックや生徒会の雑用など、色々とすることがある。
それに、学校内の身回りや違反者の拘束や罰則など仕事も多い。
「まったく、縁達は仕事をしているのか?」加奈は生徒会長である縁の愚痴を言った。
「生徒会は生徒会で行事の決定や行事の日程やその行事の書類作成などで忙しいですよ。それには風紀委員も関わっていますが、僕たち以上に忙しいですよ」
基本、風紀委員は行事の確認など生徒会から回ってきた仕事をする。その仕事は様々で柔軟に対応する必要がある。
「でも、ずいぶん楽になりましたよ。遼一君や美希さんや照吾君が入ってきてくれたおかげでね」大志はそう言いながら笑顔を浮かべた。
「それなら、私の仕事も―――」
「はい、黙ってしてください。本当に帰しませんよ?」そう言って加奈の言葉を被せた。
「そ、そんな…」がくっとした表情で言った。
色々と上下関係がわかったな。遼一はそう思いながら仕事に戻った。
仕事も終わり夕方、生徒会の梓と麗華と一緒に五人で帰った。
ピリリリリと不意に音が鳴った。
「はい」遼一はそう言って携帯端末を取った。
『遼一君、久しぶりに家に来ない?』
「修行ですか?」
『それもあるけど、久々に会いたいから』
「了解しました。明日は土曜日なので午前中から覗います」
『わかったわ、それじゃあ』そう言って電話が切れた。
「誰からだったの?」美希がそう言って遼を見た。
「優子さんからだったよ」そう言って美希に伝えた。
明日も午後六時に投稿します