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魔力がない魔法生  作者: とんび
3章 七校大会編
27/29

二十五話 大会一日目午後の部

「午後の部からは一時間あるな。みんなはどうするんだ?」遼一はそう言った。


「私と麗華は特にないわ」


「俺と美希もないな」


「うん、そうだね。照吾君と哲也君は大丈夫かな?」


「ああ、問題ないぜ」


「俺もないわ~」


「それだったら、昼食はホテルで取らないか?俺達の紹介だったら半額で食えるぞ?」


「おお!マジでか!…でも半額と言いながら高いんだろ?」


「2000円で食い放題だ」


「行くぜ」


「俺も行くわ」


「そうか、なら行くか」


「食い意地張りすぎね」


「本当ね」


「あはは、でも男の人はたくさん食べるでしょ?…りょーちゃんは違うけど」


麗華、梓は呆れながら、美希は苦笑いでそう言った。


「そうだぜ。男はよく食べるんだよ。女子みたいに女々しくはないぜ」照吾はそう言った。


「いや、女々しいは関係ないと思うんやけどな。やっぱり安いに越したことはないやろうな」


「まあ、確かに安いっていうのは魅力的ね。しかも、ホテルの食事はおいしいならなおさらね」梓はそう言った。


「確かにそれは言えてるわね。照吾君のは意味不明だけど」麗華はそう言った。


「確かに女々しいっていうのは訳が分からないな」遼一はそう言った。


「…うん、それはそうかも」


照吾以外の全員が、何言っているんだコイツ?と言う表情をしながら照吾を見ていた。


「……すまんかった」がくっとしながらそう言った。


「まあいいとりあえず行くぞ」


六人は観客席をあとにした。















「なんだ?あそこの人だかりは?」照吾はそう言いながらそっちの方見た。


ホテルの前にはたくさんの報道陣に囲まれていた。


「うわあ~、綺麗な人だな…。誰だろあの人?」照吾は興味津津な表情でそう言った。


「…確か、蒼龍そうりゅう澄夏すみかさんね。大魔法家の蒼龍家の次期当主候補よ。北海道の生徒で今年で三年生になるんじゃないかしら?たしかモデルをやっているって話だけど」麗華が報道陣の方を見ながらそう言った。


「あ~、みたことあるわ。微笑を崩さないことから天使の微笑みって言われているんでしょう?」梓が思い出したようにそう言った。


「いま、モデルで一番有名だよね」美希がそう言った。


「…あれが天使やったら世も末やな」


「哲也?」遼一が怪訝な表情でそう言いながら哲也の方を向いた。


「ん?ああ、何でもないわ。早く行こうか」


「あ、ああ」遼一は歯切れ悪く、頷きながらそう言った。


丁度、六人が報道陣の横を通り過ぎようとしたその時、


「あら?哲也さんじゃないですか」そう言いながら澄夏が駆け寄って来た。


天使の微笑みと言われても頷けるほどの優しげな微笑みを常に浮かべており、モデルと言われるのもあり、ジャージの上からでも分かるほどの大きな胸、腰のラインなど完璧なプロポーションで綺麗な少し青色がかっている髪が腰まで流れていた。目元には小さな黒子がついており、妖艶さを醸し出していた。


「お、お久しぶりです。澄夏…さん」恐縮した感じでそう言った。だがその顔は完全に引き攣っていた。


「ええ、お久しぶりですわ。元気そうでなによりです。そちらに居るのはご友人さんですか?」微笑みを浮かべたままそう言った。


「ええ、そ、そうです」いまだにぎこちない笑みでそう言った。


「いつも哲也さんがお世話になっていますわ。これからもよろしくお願いいたいますわね」軽くお辞儀をしながらそう言った。


「は、はい!こ、これからも哲也さんとは仲良くさせていただきます!」照吾は勢いよく頭を下げながらそう言った。


「ふふっ、よろしくね。…それでみんなにはちょっと悪いんだけど哲也君を少し借りていいかしら?」


「えっ、あ、あの、澄夏さん…」哲也は戸惑うような表情でそう言った。


「はい、構いませんよ。じゃあ、俺達は行っておこうぜ?」照吾はそう言いながらホテルの中に入っていこうとしていた。


「あっ、ちょっと待ちなさいよ照吾!」梓はそう言って追いかけていった。


「それでは失礼します」遼一はそう言ってホテルに入ろうとした時に美希がアイコンタクトをしてきた。遼一は頷いて美希の方に近寄った。


「俺が哲也の後をつけるから美希は照吾の様子を見ていてくれ」小声そう話した。


美希は静かに頷いて梓達についていった。麗華は一瞬遼一の方を向いたがすぐに前を向いて梓達を追いかけていった。


遼一はホテルに入った後、すぐに見つからないようにガラス越しに哲也達が見える位置まで移動した。二人はどうやらホテルには入る気はないらしい。


遼一はホテルを出て二人の後をつけた。















二人は丁度ホテルの裏側の茂みの方に居た。遼一は多くの位置から速度操作で二人の声を拾えるように音を操った。


…あの二人以外に誰かいる?遼一は速度操作を使って索敵範囲を広げた。


一人か…結構な手慣れの奴だな。一体誰の差し金だ?遼一はそう思いながら警戒しつつ二人の会話に耳を傾けた。


「す、澄夏さん…な、何か御用なんですか?」声を震わせながらそう言った。


「別に取って食おうなんてしませんわよ?ただ、どういうお友達といたか気になっただけですよ?」微笑みを浮かべながら優しい口調でそう言った。


「と、友達には手を出さないでくださいお願いします」頭を深々と下げながらそう言った。


「さぁ~、どうしようかしらね~。それは今後の哲也さんの働き次第かしら?」首を傾げながら可愛らしくそう言った。


「ど、どういうことですか?そ、それにあの事件の捜査をしてくれるというのは…」


「それは本当よ。可愛いの頼みなんですもの断るはずはありませんわ」


なっ!と遼一は驚きのあまり目を見開いた。


「す、澄夏さん、俺はもう弟では…」


「あら?もしかして簡単に蒼龍と縁切れると思っていました?」


「えっ?で、でも、確かに家は追い出されてい―――」そこで哲也の声は途切れた。


「気づきましたか?私との個人的な繋がりがあるじゃないですか。それに家を追い出されたからと言って私の弟であることには変わりはありませんよ?血を分けあった姉弟なんですから」にこにこと悪意を感じさせない笑みを浮かべながらそう言った。


「……やっぱり、もういいです。頼まれていた仕事も辞めます。ですので、あの事件のことも―――があっ!」哲也は澄夏に首を片手で掴まれ木に抑えつけられた。地面から哲也の体が浮いていた。


「あらあら、いまだに勘違いしているようなのでお教えしますね?」いまだに微笑みを崩さないまま小さな子供に話しかけるような口調でそう言った。


「いつでも、あなたの妹を潰せることを理解していますか?それとも理解していませんか?」


「があっ…ぐうっ!」苦し紛れに出る言葉を哲也は吐き出していた。


「理解していないのなら仕方ありませんね。あなたの妹を蒼龍家に引き込もうかしら?確かもう足は治っていて魔力量も相当多いんですわよね?」そう言いながら哲也の首から手を離した。


哲也は地面に手をつきながら、咽るような咳をした。


「や、やめて…ください。妹だけには…妹だけには…」縋るように言った。


「そうですか…だったら分かっていますわよね?」屈んで哲也と視線を合わせながら言った。


「は、はい、やります。ちゃんとしますから…」


「いい子ですわね、哲也さん。ではこれからも頑張ってくださいね」立ち上がりながらそう言った。


反応が消えた。一体どういうことだ?一体何の目的だったんだ?遼一はもう一人二人の様子を覗っていた人物に対してそう思った。


それにしてもあれが天使の微笑みか…。噂はあてにならんな。遼一は二人のその様子を見ながらそう思った。とりあえずここから離れた方がいいな。遼一は速度操作で自分の足音を操作しながら静かに茂みから抜けた。



















ホテルに着いてから遼一はすぐに美希と連絡を取ってフロントに呼んだ。


「お帰り、りょーちゃん。どうだった?」美希は心配そうにそう言った。


「とりあえず哲也は無事だったよ。まあ、結構複雑な感じだったけどな。それよりも照吾の方は大丈夫だったか?」


「うん、大丈夫だよ。多分一時的なトランス状態を起していたんだよ。結構好感度があったからだと思う」


「本人には言っているのか?」


「もちろん言ったよ。みんなにはあの人のことを警戒するように言ったよ。さすがに納得してくれたみたいだけどね」


ピリリリッと遼一のポケットから音が鳴った。遼一はポケットから携帯端末を取り出して開いた。


「哲也からのメールだったよ」


「なんて書いてあったの?」


「…急用が出来たから今日はもう家に帰るらしい。みんなにはすまないと伝えて欲しいだとさ」


「…そうなんだ」苦々しい表情でそう言った。


「一度話した方が良さそうだな…」


「りょーちゃん、ダメだよ。相手は蒼龍家だよ。何されるか分からないよ」


「確かにそうかもしれないが、友達が苦しんでいるのは見過ごせない。しかも、直接こっちは被害を受けているんだ。…それに、聞きたいこともあるしな」遼一は真剣な表情でそう言った。


「……分かったよ。でも絶対に無茶しないでね」渋々と言った感じでそう言った。


「分かっているよ。とりあえず、昼食を食べに行こう。みんな待っているだろう?」


「うん、そうだね。じゃあ行こうか」


「あっ、おい美希」


遼一は美希にに手を引っ張られながら皆が待つ食堂へ向かった。















食堂で昼食を食べ終えると少し用事があると皆に伝えてから遼一はあるところに向かっていた。


「ちょっと君、ここは北海道の控室だけど何か用があるのかい?」遼一の前に居る赤色のジャージを着た北海道の男子生徒が声をかけてきた。


「すみません、これを蒼龍澄夏さんに渡して欲しいんですが…」遼一はそう言いながら紙切れを手から取り出した。


「はぁ…またなの。…こういうラブレターは受け取らないことにしているの。だから帰ってもらえるかな?」ため息をつきながら、男子生徒の隣にいる女子生徒はそう言った。


「いえ、そう言うのではなくてですね…。これを渡すついでに蒼龍さんに一言言って貰えればいいです」


「あら?さっきの哲也さんのお友達さんじゃないですか。どうかしたんですか?」


「そ、蒼龍先輩!」


「お、お疲れ様です!」


男子生徒と女子生徒は背筋をピンッと伸ばしながら、控室から出てきた澄夏にそう言った。


「二人ともそんなに畏まらなくていいわよ…。それでどうかしたの?」微笑みながらそう言った。


「哲也のこととさっきの自分の友達にしたことって言えば分かりますか?」


「なるほどね…。いいわ、場所を変えましょ。二人とも私は少し席を外すから」


「わ、わかりました」


「お、お気をつけてください…ませ」


緊張した面でそう言った。


「それでは行きましょ」その様子に少し肩を竦ませながら歩き出した。
















二人は少し控室から離れた茂みの方に来ていた。


「さて、あなたは賢明な方に見えたんですがね」微笑みながら遼一の方を見ていった。


「どういう意味です?」警戒するような視線でそう言った。


「普通だったら蒼龍という名前を聞いた時点で私が彼に何かをしたとしても黙っておくのが普通ではないのですか?」慈愛のような表情で優しくそう言った。


「…自分が普通ではないと言いたいのですか?」


「そうではないです。ただ悲しい人だなと思ったんですよ」スッと瞳を開けながらそう言った。宝石のような綺麗な赤い瞳が遼一の眼には見えた。


マズイ!遼一はそう思いながらとっさに目を逸らした。


「あらあら、もう遅いですわよ。あなたには私が何人見えますか?」遼一の目の前にいたはずの澄夏が右側から現れてそう言った。


何人もの澄夏が遼一を囲むようにして次々に現れた。


『さあ、あなたは何も見ていません。そして私に会ったことは全て忘れなさい』


遼一の周りにいる澄夏が優しく諭すようにそう言った。


遼一は急にスッと目を閉じた。


全ては幻術による幻か…。一人ひとりに魔力があるが、元凶は―――


「そこだ!」遼一は双剣のMWですぐ隣にある木を切った。すると周りにいた澄夏がぐにゃりと歪み全てが消えさった。


「…すごいですわね~。そう簡単に破られたことはないんですが」


「どうしてこんな真似をしたのかは聞くまでもないですね」遼一は双剣のMWを構えながらそう言った。


「…降参ですわ。とりあえずあなたの要件を聞かせてくださいます?」両手をあげながらそう言った。


「哲也のこと…いや、蒼龍の弟のことについて聞いていいですか?」


するとピクッと澄夏はして、すぐにいつもの態度に戻った。


「なんのことですか?私は弟なんていませんわよ?」


「ネイチャースキル保持者集団暴動」


「それがどうかしたんですか?」首を傾げながらそう言った。


「これは数か月前に起こった魔法師襲撃事件のせいで霞んでいた事件です。しかし、変な共通点があるんですよ」そう言いながら遼一はつづけた。


「彼らは本部の魔法委員会のクラックで捕まっているんです。しかも魔法師が襲撃されている時に何度もクラックをしていたんです」


「ただの偶然じゃ済まされませんわね」


「そうです。そしてクラックした彼らは事件の記憶を全て覚えていないと言うんですよ。…しかし、彼らは共通の言葉に反応を示しました。偶然の発見だったんですけどね」


「…どうして魔法委員会所属ではないあなたがそこまで知っているのです?」少し警戒されるような声でそう言った。


「それは後で言いますよ。彼は『アイス』という言葉にわずかの緊張を覚えていました」


「なるほどそれで水関係で、更に蒼龍家お得意の精神作用で私を疑っているわけですか。つまり、あなたは委員会のまわし者ということですか?」


「察しが良いですね。ですが自分がまわし者というのは外れです。それともう一つ―――」


「哲也を脅して、きたない仕事をさせているのはどうしてですか?」


「ふふふっ、面白いことを言うわね。残念ながら汚い仕事ではないのよ。蒼龍家に関わる仕事をやって貰っているわ」微笑みながら言った。


嘘を言っているわけではなさそうだな。遼一は彼女の様子からそう思った。


「哲也さんは蒼龍家が昔から大嫌いなのよ。家を追い出されたというのは私が根回ししたと言うものありますけどね」


「根回し?」遼一はそう疑問の声を上げた。


「あの子はね、私よりも遥か上をいくほどの才能の持ち主なんです。手放すのが惜しいので妥協案として親戚の家に預けるので精一杯でしたが…」一瞬悲しそうな表情を浮かべながらそう言った。


「じゃあ、何故哲也を脅し続けるんです」


「蒼龍家のことに関わり続けていなければ哲也さんは今の生活から引き離されるでしょう。しかし、私はそうは思いません」


「……まさか」


「私が彼の分まで頑張ればいいことです。今はまだ無理な話ですが、私が蒼龍の家を継げば問題ありません。今のところ候補者の中では一番ですから」


「自己犠牲をして哲也が喜ぶと思いますか?」


「そんなこと思いませんよ。哲也さんは昔から気配りが出来て、優しく聡明な方でした。こんなことを聞かれたらなんて言われるか予想は出来ていますよ。このことはご内密にお願いします」クスッと笑いながらそう言った。


「……分かりました」


「それでは私は帰ります……そう言えば名前を聞いてなかったですね」


「立花遼一です」


「立花…さんですか。これはまた運命的な感じですね」


「はい?」


「私が一番尊敬している人が立花菜々子さんなんですよ。まさか同じ苗字とは思いませんでした」


「親戚ですよ」


すると彼女は少し驚くような様子を浮かべた。


「世間は案外狭いものですね。これも何かの縁でしょう。連絡先交換してくれます?」


「連絡先ですか?…いいですけど」


遼一と澄夏はそれぞれ連絡先を交換した。


「それじゃあ、私はアリーナの方に用があるので失礼しますね」


「はい、失礼します」


二人はそう言って別れた。













「おい、遼一!もう始まるぞ!」照吾がそう言いながら観客席入り口にいる遼一に向かっていった。


「すまん」遼一はそう言ってみんなのいるところに走った。


『みなさんお待たせいたしました。これより剣術部のトーナメントを開催いたします』


そう言ったと同時に大型電子ディスプレイにトーナメントが映し出された。


「最初は…四国・中国と九州か。どっちが強いんだ?」遼一はそう言って皆に聞いた。


「たぶん、九州だろうな。あそこには白虎びゃっこ家があるからな」照吾がそう言った。


「…何?そうなのか?」


白虎家は剣の達人でもあり、大魔法家の一つとしても有名だ。光魔法を得意として、それに合わせた流派が存在すると言う。


「正確には生徒会の方に白虎の子供が居たはずよ。だが、剣術部の指導も行っているという話よ。それだったら家の三嶋先輩も同じよ。…なんでも因縁があるらしいわよ白虎家と三嶋家は」梓がそう言った。


三嶋家も代々伝わる剣の流派をもっていて、真樹はその継承者らしい。そのせいでよく剣術部に出かけてわ指導を行っているらしい。


「因縁?」遼一はそう言いながら梓を見た。


「そうよ。だけど、そこまで教えてくれなかったわ。…気になるわね」


「麗華は知らないのか?」


「…期待しているようで悪いけど私は何も知らないわよ?」少し怒ったような表情でそう言った。


「そ、そうか悪い」少し遼一は歯切れ悪く言った。


「あ~、どうやら皆の予想は当ったみたいだな。一人ひとりの剣筋が違いすぎる」照吾がそう言いながら試合を見ながら言った。


どうやら試合はストレート負けで九州高校が勝ったようだ。


剣術部は男子三人女子三人ずつで男女同時に試合を行う。四回勝てば次の試合に進める。ルールとして致命傷になる攻撃や魔法の使用は禁止で相手に勝つにはダメージポイントを二回、又は場外に落せば勝ちだ。試合会場は10m×10mという正方形のフィールドで戦う。


「九州と関東の一騎打ちになりそうだな」


「そうね。その可能性が高いわね」


「そうだね。今年の他の高校はそれぞれ得意分野が違うからね」


「それだったら一位か二位は確実そうね」


「まあ、今年はそうなるだろうな」


遼一、梓、美希、麗華、照吾はそれぞれそう言って試合を見続けていた。

『それではただいまより、剣術部決勝戦を始めたいと思います』


大型電子ディスプレイには九州と関東の二つが決勝まで駒を進めていた。


…予想通りという結果になったな。遼一がそう思いながら試合を見つめていた。一組目の男子生徒の戦いだ。相手の九州は刀、こちらの関東の生徒も刀だった。


「どっちも刀型のMWなんて珍しい展開よね」麗華はそう呟いた。


「そうだな。しかも向こうは全員、刀型だからな」遼一はそう言いながら試合を見ていた。


「でも、こっちはバラバラだよね?」美希はそう言いながら首を傾げた。


「多分、今回は全員が白虎家の門下生と思うわよ」梓はそう言った。


「そうだな。梓の言う通りだ。何の流派かよう分からんが、剣術として一番有名なのは白虎家だからな。確か門下生は警察関係とかの人も多いとか聞いたことあるぞ?」照吾はそう言って掌を叩いた。


「それだけ、純粋に剣術もすごいということだろうな」遼一はそう言って試合を見つめた。


遼一が見た時は、かなり関東の生徒が押されていた。凄まじい剣の連続攻撃で防戦一方という感じだった。このままでは負けるのは時間の問題だろう。そうこうしているうちに関東の生徒は場外に吹き飛ばされて負けた。


「あ~、負けたか。やっぱり強いな~」照吾は感心するような声を上げながら言った。


「もしかしたら仕方ない部分もあるかもしれないね。向こうは全員門下生みたいだしね」美希は少し眉を下げながら言った。


「それだけ教える師が優秀ってことでしょ?一組目であの実力だから本当にすごいわよ」梓も敵の強さに賞賛を送った。


「ちょっと厳しいな。多分一気に決めてくると思うぞ」遼一はそう思いながら女子の試合の方にも見を移したがやはり防戦一方の状況で場外に落ちて負けた。


「差が大きすぎだな。これは負けそうな勢いな感じだな」照吾はそう言った。


「コラ!そんなこと言わない!」梓が照吾に向かって怒った。照吾は委縮して、すまん、今のは言いすぎたと言った。


二組目の男子の試合が始まった。関東の生徒は九州の生徒に近づいた瞬間、目の前に水の壁を出した。


「奇襲作戦か」遼一はそう呟やいた。


相手が意表を突かれている瞬間に壁の左右どちらかを攻撃する戦法だ。しかし、これは相手の姿が見えないので壁のすぐそこにいるか分からないものある。


運よく関東の生徒は壁の近くにいた九州の生徒を斬り付けてダメージポイントを貰った瞬間、九州の生徒を吹き飛ばして場外に運んだ。


「すげえ、一瞬で行動に出たな。さすが三年生」照吾が驚いたようにそう言った。


「ええ、本当に見事だったわ」麗華はそう言って賞賛した。


女子生徒のほうも同じ作戦で行った様だったが、敵が壁の近くに立っていなくて防戦一方になって負けた。


「さすがに何回も上手くいくもんじゃないな。一回成功させるだけでも十分だろうな」照吾がそう言った。


「これで一回負けたら向こうの勝ちだね…」気まずそうに美希がそう言った。


「だが、男女とも勝てばどちらとも一位だぞ?」遼一はそう言った。


時間短縮というのもあるが、3対3の引き分けになった場合はどちらとも勝ちということになる。


「そうよ。まだ諦めるのには早いわ」梓はそう言った。


「うん、そうだね」美希は笑みを浮かべながらそう言った。


三組目の男子と女子の試合が始まった。関東の生徒は先程と同様に相手に近づいて水の壁を造った。しかし相手はそのまま止まらず壁から顔を出して攻撃しようとした瞬間、剣先から閃光が出た。九州の生徒は思わず目を腕で押さえた。その瞬間に関東の生徒が攻撃してそのまま相手を場外に落とした。


男子が終わったと同時に、女子も同様の作戦を用いていて勝利していた。


『3対3で引き分けとし、両校が一位とします』主審がそう告げた瞬間に会場が盛り上がり、温かい拍手と声援が送られた。


よく考えた作戦だったな。遼一は拍手を送りながらそう思った。


壁を造って、相手が出てきた瞬間に光の魔法のライトを使ったのだ。ライトは一瞬の光を出すことが出来て思わず目を瞑りたくなるような光も出せる。しかし、これは自分にもくらうので目を瞑りながら行う方法でないと使えない。

ライトをいきなり使おうとしても一瞬でも目を瞑った瞬間に相手にやられるだろうし、効果範囲も狭く間近で使わないと目潰しの効果はない。

最初の作戦で壁を使ったので次の試合でも同様のことをしてくるかもしれないと相手に警戒させることで今回の作戦が通用したのだろうと遼一は思った。


大型電子ディスプレイに結果が表示された。


剣術部の部門

一位 関東、九州

三位 北海道

四位 近畿

五位 中部

六位 東北

七位 四国・中国



総合の部門

一位 関東       29pt      

二位 北海道、近畿   28pt

四位 九州       26pt

五位 東北       13pt

六位 中部       12pt

七位 四国・中国、   10pt


「よっしゃ!一位だ!」照吾はガッツポーズをしながらそう言った。


「いい勝負だったな」


「次の対人射撃でいいところまで言って欲しいわね」梓はそう言った。


「本当だね。このままの調子でいければ一番いいけど」美希はそう言った。


「対人射撃もうちの学校は弱くないわ。去年は確か二位だったはずよ。去年出場したメンバーもいるわ」麗華はそう言った。


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