二十話 選考会
退院してから次の日、遼一は制服に腕を通してから携帯端末を制服に入れた。
退院したとき母親の涼子が自操車に乗って遼一を迎えに来ていた。病院を出るとき莉子が見送りをしてくれ、なんとも律儀な子だなと遼一は思った。
あの事件以来、母親までもが遼一の家を知ってしまった。やはり心配なのかしばらくは遼一の家に泊り込みになるそうだ。そうなるのは遼一は別に良いんだが、何故か菜々子も泊まる事になってしまった。
嫌な予感しかしないのは遼一の気のせいではなかった。
「お母さん!りょーちゃんの弁当を作るのは私だって言っているでしょ!」
「何を言っているの!母親が作るお弁当の方が愛情籠っているに決まっているでしょう!」
「お母さんの二倍私は愛情あるよ!」
「いいえ、私の方がその四倍あるわ!」
「私はその八倍!」
「十倍!」
「百倍!」
「千倍!」
二人ともいつまで続けるつもりなんだ?遼一はそう思いながら時計を見た。現在の時刻は八時二十分。そろそろ学校に行く時間だ。
ピンポーンっと家の中にチャイムが響いた。
遼一はいまだに言い争いをしている二人を無視して玄関に向かって、
「いってきます」
そう言って玄関を開けた。
自操車乗り場に着いて乗り込んで二人は話をした。
「あはは、相変わらずだったね。二人とも…何で喧嘩していたの?」苦笑いをしながらそう言った。
「俺の弁当をどっちが作るかで喧嘩していた。かれこれ三十分はやっていたな。ルイにも止めて欲しかったものだが朝食作っていたからな、そこまでは言えなかった。…二人が揃った時点でこうなることは予想していたんだがな」ため息をつきながらそう言った。
「あはは、それなら仕方ないかな?二人ともいつまで居るのかな?」
「分からん。あまりにもうるさい場合は追い出すけどな。いつの間にか二人とも俺の家を知ってしまったしな」
「そうなんだ…。でも、家族だから知っていてもいいんじゃない?」苦笑いでそう言った。
「それで毎日俺の家に来て邪魔をされたら嫌なんだがな…。まさに今がその状況だ。父さんと相談してみる必要があるかもしれん」
「あはは…」苦笑いをしながらそう言った。どうやら美希もこれ以上のフォローは出来ないようだった。
「まあ、それよりも学校で変わったこととかなかったか?」
「う~ん、特になかったよ。…あえて言うなら、MW研究部のみんなが残念がっていたくらいかな?あと二瀬先輩は終始ニヤニヤしてたし」
「なんか裏がありそうで怖いんだが…」
「私もそう思って聞いてみたんだけど何でもないって言ってたよ」
「……放課後に聞いてみるしかないようだな」遼一は嫌な予感を感じながら学校へと向かった。
放課後、いつものように風紀委員室に向かうのだが、何故か風紀委員室に向かう人が多いのに気がついた。行く人々を見てみると、どうやら風紀委員のメンバーのようだった。
一体何があるんだ?まあ、着いてみれば分かることか。遼一はそう思いながら風紀委員室に向かった。
風紀委員室に着きドアを開けるとたくさんの人が集まっていた。
「やあ、風邪はもう大丈夫なのかい?」大志がそう言って遼一に声をかけてきた。
「ええ、もう大丈夫ですよ。一ノ瀬先輩」
「そうか、なら良かった」笑顔でそう言った。
「そういえば一ノ瀬先輩。今日は一体何があるんです?何か仕事ですか?」
「ん?ああ、もう少ししたら分かるよ。全員が集まってから説明するからさ」
「分かりました」遼一はそう言って頷いた。
しばらくして全ての人が集まって大志が説明を始めた。
「みなさん今日は集まってくださりありがとうございます。今日はみなさんにメールで説明したとおり風紀委員選考会の抽選です。今日は参加をする人の抽選会と言うことになります」
今日が選考会の抽選だったのか…。まあ、一年生には関係ないだろうな。遼一はそう思いながら説明を聞いていた。
「メールで説明した通り、風紀委員選考会の戦いは一対一の大会公式ルールをとります。大会の参加人数は四人と言う人数ですがそのうち二人は委員長と副委員長になります。残り二人を選考会で決めます。形式としてはトーナメント形式です。参加したい人はここに名前を書いてください」携帯タブレットを取り出してそれを机の上に置いた。
「トーナメントは今日コンピュータによってランダムに決められ、今日中にはメールで送ります。なので対戦相手の作戦については立てる時間はないと思います。しかし、私達が欲しいのは純粋な強者です。本番でもどんな相手が当たるのか分からないのです。それを分かった上で参加をしてください」
「それでは参加したい人から名前を書いてください」
そういうと三年生を筆頭にぞろぞろと並んで順番に名前を書いていくが一年生の人は誰も書かなかった。それはそうだろう。レベルが違いすぎるのだ。入って来たばかりの一年が二、三年に勝てるわけがないのだ。ましてやここは風紀委員。強い人達が集まるのは必然だろう。
全員が帰った後、
「ああ、そうそう、君達三人補佐役は強制参加だよ?」大志がそう言った。
「ええ!?」
「…そうなんですか?」
「知らなかったんですけど…」
照吾、遼一、美希がそう言って大志の方を向いた。
「補佐役と言うのは毎年そうなんだよ。今年はみんな一年生だったけどね。みんなを選んだのは委員長の権限だからなんとも僕は言えないよ。文句なら二瀬先輩に言ってね?」苦笑いでそう言った。
「何言っているんだ一ノ瀬?もともとからこれが狙いだったことくらいわかるだろ?」加奈は椅子に座ったままそう言って腕を組みながら大志を見上げた。
「まあ、そうですけど…最終的に決定したのは二瀬先輩ですよ」
「そうだな…最初からこれが狙いだったんだがな」加奈はニヤリとしながらそう言った。
「またどうしてそんなことを…」遼一は呆れながら加奈を見た。
「簡単だ。強い奴がほしいからだ。それに三人はピッタリだからな。特に立花お前は期待している」
「風紀委員会の連中は大概Aクラスの連中だからなそれを誰でもなれると言うのに変えて欲しいんだ」
委員会の中でも風紀委員というのは大体がAクラスで占められている。それは七校大会のこともあるし、生徒会との連携、違反者の取り押さえもあるので優秀な人材が好まれるのだ。Fクラスである遼一が選ばれるなど今までに一度もなかった例外なのだ。
「…なるほどですね。そう言うことであれば喜んで協力しますよ」
「ふふっ、楽しみにしている。まあ、予選を突破して代表に選ばれてくれ。狭き門でもあるがな」
「頑張りますよ」
「円城寺と竹下も頑張れよ。今まで一年で選ばれた奴なんていないからな」
「はい、頑張ります!」嬉しそうにそう言った。
「私も頑張ります」静香もそう言った。
「今日はMW研究部のほうには行かなくていいぞ?予選は一応明日からになるからな。亜里抄のほうには連絡しておいたぞ?」
「いえ、今日は寄ってから帰ろうと思います」
「そうか…ならいいんだ行って来い」
「あっ、りょーちゃん今日は遅くなるの?」
「いや、すぐに多分帰るよ」
「一緒に帰らない?」上目遣いでそう言った。
「…ああ、別にいいが、だったら一緒に来るか?」
「え?いいの?」キョトンとした様子でそう言った。
「別にいいと思うぞ?美希のことだから邪魔にならないと思うし―――って何三人してニヤニヤしているんですか?」遼一はそう言って照吾、加奈、大志を見た。
「いや、別に仲が良いなと思ってな~」
「ほら、いちゃいちゃするならここでやるな外でやれ」
「ふふっ青春してますね~二人とも」
美希は顔を真っ赤にして遼一の手を引いて風紀委員室を出た。
「ううっ、恥ずかしかったよ~」いまだに顔を真っ赤にした状態でそう言った。
「…そうか?でもいちゃいちゃしていると言われたのはどうかと思ったが…もしそれだとまるで俺と美希が恋人みたいな感じだしな」
「ええ!?た、確かにそうだけど…」慌てながらそう言った。
「ああ、心配するな美希が俺のことが好きじゃないのは知っているから」
「……そうじゃなくてさ」頬を膨らませてそう言った。
「…なんで怒るんだ?俺なんか悪いこと言ったか?」首を傾げながらそう言った。
「別に、何でもないよ」プイッとそっぽを向きながら歩きだした。
「あ、ちょっと美希」遼一は慌てて追いかけながら、一体どうしたんだろう?と考えていた。
「おっ?立花、今日は来ない予定じゃなかったか?明日予選だろ?」猛がそう言った。
「脇田先輩の言う通りですけど…まあ特に支障はないですからね」
「そうか…おっと隣りにいるのは確か部活の見学に来ていたお前の彼女の円城寺さんか?」にやにやとしながらそう言った。
「ち、違いますよ。そんなんじゃないです」美希は顔を赤くしながら首を横に振った。
「そうですよ。彼女はここに見学するだけですよ。あまりからかわないでください。…それと俺がいなくても大丈夫ですよね?」
「まあ、今のところは特に問題はないな。柊の奴もいるしな…そういえば有野の奴から聞いたんだが、本当に有野は委員会本部の研究室に行っているのか?」
「ええ、行っていますよ。彼女の父親がそこのチーフということもあるんでそこで頑張って貰っていますよ」
「そうだったのか…。まあ、有野の奴は全部覚えて貰うんだろ?ここよりも整った環境のほうがいいしな」
「そうですね…。まあ、そう言うことですんで今日は帰りますね」
「おう、明日は頑張れよ」
「ちょっと待ったーー!!」亜里抄がそう言って遼一を止めた。
「…どうかしたんですか?柊先輩」
「ほいほい、これを使ってほしいんだよ」そういって四角形をした白いキューブを見せてきた。
「これは記録媒体キューブですか?」
「そうよ。選手クラスの人達がどのくらいエネルギーを使うかの戦闘データを参考にしたくてね~。本当は明日渡すつもりだったけど…ちょうど良かったわ!」
記録媒体キューブはMWにつけると使用した魔法やエネルギーの使用率といったものがデータとして記録されるものだ。
「それでいいかしら?データ取らせて貰って?他の生徒だとこれ嫌がるから…。でも、決して悪用するために使うわけじゃないから…お願いできるかしら?」
媒体キューブは所謂、使用履歴と言うものが残るためほとんどの人は自ら見せようとは思わないだろう。
ここまでするということはやはり最高のレベルまでしたいんだろうな…。遼一はそう思った。
「いいですよ。やはり、そう言うデータと言うのは必要になってきますから、しかし、一人分で大丈夫ですか?こういうのもなんですが、自分は少々特殊な戦いをするんで…」
「う~ん、他の人にも頼んでみたんだけどね~。さすがに断られたよ。実際ここまでする必要はないのかな~っと思ったりしたんだけどね」苦笑いをしながら言った。
「そうですか…決して無駄と言うことはないんですがね…」残念そうに遼一は言った。
「あの~、私でよければいいですけど?」美希が遠慮がちにそう言った。
「ほんとに!?いいの!?」キラキラとした目でそう言った。
「ええ、私も選考会に出場しますし、別にデータ取られたからってどうも思いませんから」
「ありがとう!えっと…」
「あっ、私は円城寺美希といいます。よろしくお願いしますね柊先輩」
「こちらこそよろしく美希ちゃん!」そう言いながら美希の手を掴んでブンブンと振った。
「それじゃあ、二人に渡しておくね」そう言いながら遼一と美希にキューブを渡した。
「では、これは今日は失礼しますね」
「お邪魔しました」美希はそう言って頭を下げた。
「いいんだよ~。こっちも感謝しているからね~」
「二人とも明日は頑張れよ。応援しているからな」
「ええ、頑張ります」
「はい、頑張ります」
遼一と美希はそう言ってMW研究部を出た。
自操車乗り場で自操車に乗り、遼一のマンション前で降り、二人はマンション前で話していた。
「美希、明日の選考会のことだが…本気を出してほしいんだ」
「本気?当たり前だよ。りょーちゃん、全力を尽くさないと相手の人に失礼だからね」
「いや、そうじゃない。美希は昔から力を抑えているのは知っているんだ」
「っ!」美希は驚くような声を出した。
「入試の時は落ちないようにある程度本気を出したみたいだけど、美希は小さいころから俺に遠慮して力を抑えていただろう?」
「りょーちゃん、私はそんなことは…」不安そうな表情をしながらそう言った。
「いや、怒ってないよ。逆に感謝してる。美希のおかげで今の家族の状態が保てたみたいなものだ。多分、美希が居なかったら俺は家族と縁を切っていたよ。今更だけどありがとう」
「お礼なんて言われる筋合いないよ。私だってりょーちゃんを騙していたんだし…」そう言いながら俯いた。
「それは騙しているうちに入らない。寧ろ俺が美希に気を使わせていたんだからな。…すまなかった」遼一はそう言って頭を下げた。
「りょーちゃん、頭上げて」
「ああ」遼一はそう言って頭を上げると美希から軽くデコピンをされた。
「ふふっ、これで許してあげる」そう言って微笑んだ。その微笑む姿は誰もが振り向くような妖艶で更に可愛らしい表情だった。
「あ、ああ、ありがとう」遼一は若干戸惑いながらそう言った。
「じゃあ、りょーちゃんの言う通り明日は本気を出すよ。じゃあ、また明日ね」笑顔でそう言うと美希は足早に帰って行った。
まったく、困ったもんだ。遼一はそう思って苦笑いしながら家に帰った。
家に帰った後、遼一は携帯端末を見ると哲也からメールがが来ていた。その内容は妹が病気が治って今日から歩けるようにリハビリを開始したという内容だった。
他にも明日の選考会頑張れという励ましのメールもあり、兄妹仲良く写っている写真が添付されていた。遼一はそれを見て笑みを浮かべた。
「りょーちゃん!ご飯出来たよ~」菜々子の声が遼一がいる部屋に届いた。
遼一は携帯端末を閉じながらリビングに向かった。
次の日、選考会の日を迎えることになった。午前中までは通常通りの授業があり、午後から選考会の試合にまわされる。
現在は午後を迎え、遼一は試合会場でもある訓練場に向かっていた。
参加人数は俺達を合わせて15人か…まあ、3年と2年が全員出ているからな。遼一はそう思いながら訓練場に向かっていた。
一学年六人なので三年と二年を合わせて十二人。遼一は三回勝つことが出来れば代表に選ばれることになる。
簡単ではないだろうな。ほとんどAクラスで占められているからな…。しかも、一回戦と二回戦を突破して照吾と当たるからな…。シードで一回戦戦わなくていいとか、まったく運がいい奴だな。遼一がそう思っているうちに訓練場に着いた。
訓練場を見渡すともうすでにジャージに着替えて準備万端の人達がいた。遼一も更衣室に向かって着替えることにした。
更衣室に入ると照吾が着替え終わっていて更衣室を出ようとしているところだった。
「おう、遼一今日は頑張ろうな…。もし、遼一が二回勝って俺も一回勝ったら俺と遼一だからな。楽しみにしているぜ?」ニヤッとしながらそう言った。
「ああ、お前と戦えるように頑張るよ」
「じゃあ、先に行っているぜ?」そう言って更衣室を出て行った。
遼一もすぐに着替えて更衣室を出た。
『みなさん、大変長らくお待たせしました。これより七校大会風紀委員選考会を開始したいと思います』大志がマイクを持ちながらそう言った。
その言葉と同時に会場がワーッと盛り上がった。訓練場の二階は普段は平坦の訓練場になっているが、今は段がついている観客席に変わっており、一つ一つ席が設けられている。全校の生徒が集まっているのでほぼ満席状態になっている。
『司会を務めさせていただくのは私、一ノ瀬大志です。それではルール説明をいたします。今回の選考会は七校大会公式のルールに則って10m×10mのフィールドで選手達に戦って貰います。制限時間は10分、相手が判定負け、戦闘不能、降参、または場外に落ちた場合負けとなります。主審を務めてくださるのは我が校の生徒会長の鳳凰縁さんです』
縁はフィールドの真ん中で皆に向かってお辞儀をした。その優雅さに生徒達は声を上げたりして会場は更に盛り上がった。
『副主審は副会長の三嶋真樹さんと書記の四清真由子さんです』
真樹と真由子は縁の隣りに立って頭を下げた。会場はまた盛り上がりを見せた。
『それでは試合を始めたいと思います。一回戦の選手はフィールドに上がってください』
さて、行くか。遼一はそう思いながらフィールドに上がって中央の白線のところまで移動した。反対側からは遼一の対戦相手の二年生が上がってきて赤い線で止まった。
「よろしく頼むよ。君の噂は聞いている」にこやかにそう言いながら男子生徒は言った。
「はい、全力を尽くしますのでよろしくお願いします」
「それではMWを構えてください」縁がそう言うと遼一は双剣、男子生徒は片手剣を構えた。
「はじめ!」
遼一はその合図と同時に剣に風を纏わせてそれを振った。二本の風の刃が男子生徒を襲う。
「エアシールド!」遼一の攻撃は風の壁に阻まれて霧散した。
「バーニングストライク!」片手剣を振るって炎の塊を遼一に向けて放った。
「アクアストライク」水の塊が炎の塊に向かい打ち消し合った。水は蒸発してあたりは白い煙に覆われた。
その煙の中で二人は剣同士を撃ちあっていた。キンッキンッという高い音が会場中に響き渡らせる。
「ウィンドカッター」遼一は連続して無数の風の刃を相手に向かって放つ。
「エアシールド!」風の壁を正面に出すが連続した攻撃のせいで壁は瞬時に壊れた。男子生徒は風の刃を剣で受け流して攻撃を凌いだ。
「ブリッツファイア!」男子生徒の剣先から絶え間なく小さな炎が遼一に向かって速いスピードで飛び出した。
「アクアトルネード」水を纏った3mの竜巻が男子生徒を襲った。
「エアシールド!」男子は目の前に風の壁を張ったが、すぐに壊れ竜巻に巻き込まれた。
「うわあ!」男子生徒は空中に放り投げられそのまま場外に落ちた。
副審が白旗を揚げて場外負けに男子生徒はなった。
「勝者、白 立花遼一」主審がそう言って宣言した。
会場は一瞬シーンっと静まり返った後、ワーっと会場に声が響き渡った。
「いや~、さすがに油断したよ。大きさの割りに魔力を感じなかったから風のシールドで防げると思ったけどダメだったよ。何か細工があるのかい?」
「すみません、そこまではちょっと…」遼一は申し訳なさそうに言った。
「いやいや、いいよ。僕が無理やり聞こうとしたんだし…。僕は来年もこの選考会に出るからもし今度も出るのであればその時はよろしく」男子生徒は手を差し出した。
「こちらこそよろしくお願いします」そう言って遼一は手を握って握手をした。
「次も頑張れよ。なんせA組に勝ったんだからさ」
「はい、頑張ります」遼一はそう言って頷いた。
遼一はフィールドから降りて控え室に向かおうとした。
「遼一ー!!試合とても良かったぜー!」
「お疲れさまー!この調子でファイト~!」
頭上からそのような声が聞こえたため遼一は顔を上げると、哲也と静香を筆頭にF組のクラスメイトが二階の観客席に陣取っていた。
「かっこよかったぞー!!」
「強いぜー!このまま代表になっちまえ!」
「ホントかっこいいわよー!ガンバレー!」
「絶対代表とってねー!」
みんなで騒いで遼一を応援している姿を見て遼一は笑みを浮かべた。
「ああ、頑張るから応援よろしく頼むよ」
「おう任せとけ!」哲也はそう言いながらニカッと笑った。
遼一はその姿を見ながら控え室に向かった。