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魔力がない魔法生  作者: とんび
2章 選考会編
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十九話 病院での出会い2

「おっ、莉子と…遼一!?お前なんでこんなとこに居るんだよ!?風邪で休みじゃなかったのかよ!?」


遼一と莉子が莉子の病室に戻ってしばらくしたら、哲也がやってきた。莉子の部屋も個人部屋だ。


「いや…まあ、それは後で話す。とりあえず、今はいいだろう?」


「ああ、まあそうやな。そういえば莉子…いつの間に遼一と知り合いになってるんや?」


「……無理やり関西弁でしゃべらなくてもいいと思うんだけど?てか、なんで関西弁?」莉子は怪訝な表情でそう言った。


「いや…まあ、高校生活で関西弁キャラが定着しているんだよ…」


「いや、実際そうでもないぞ?似非関西人って言われているくらいだぞ?」


「嘘だろ!?」驚いた表情でそう言った。


「なんだ、やっぱり知らなかったのか。クラスで言われているぞ」


「……兄さん」憐れんだ視線で莉子がそう言った。


「くそっ!俺はどこで間違えたんだ!」


「最初から」

「最初からだよ」


二人は冷静なツッコミをした。


「……正論すぎて言い返せん」ズーンっと落ち込みながら言った。


その様子に遼一と莉子の二人は笑い合った。


「でも…お兄ちゃんも教えてほしかったな~」


「何をだ?」


「遼一さんとまさか恋人同士だったなんて言ってくれれば―――」


「いや違うから!」

「いや全然違うから!」


遼一と哲也の二人は莉子の言葉を遮りながら同時に言った。二人は顔を見合わせて気まずそうな表情をした。


「あれ?」莉子は首を傾げながら可愛らしくそう言った。


「一体どこからそんなことに…」遼一は苦笑いをしながらそう言った。


「えっと…男同士の秘密のところからそう思いましたけど違いました?」


「どっからそんな知識が…」


「チャットの友達からですけど…?」


「…チャットの友達はどこからそんな知識を…お前には分かるか遼一?」


「…俺もさっぱり分からん」


二人はそう言って肩を竦めた。


「え?でも男同士の秘密というのは大概……エ、エッチな、い、意味があるとかないとかで」恥ずかしそうに頬を赤くしながらそう言った。


「……そ、そうか、でも、決して意味はないから、もうそんなこと言うなよ?お、お前は友達にからかわれているだけかもしれないからな」タジタジになりながらそう言った。


遼一はそんな兄妹の様子を見ながらため息をついた。















莉子の誤解を解いた後、三人で六時近くまで話した。遼一と哲也は飲み物を買いに行くという理由で二人は病室をでた。


「それで…妹のことは聞いたか?」


「ああ、高濃度魔粒子汚染らしいな」


「…あんなまだ若いのにな。世の中って理不尽やろ?」コーヒーを買いながらそう言った。


「…確かにお前の言うとおりだよ」遼一もコーヒーを買いながらそう言った。


「…あの事件はまだ終わっていないつもりで俺はいる」真剣な表情でそう呟いた。


「何?」遼一はそう言いながら哲也の方を見た。


「あの事件には不可解な点が多い。どこかの誰かさんが起こしたのに間違いない」


「…誰か分かっているのか?」


「分かっていたら苦労はしねえよ」


「そうだな…。それよりもやっぱりそのしゃべり方がお前の素って感じだな。いつも学校では無理してたんだろ?戻そうとは思わないのか?」


「まあな、ここは友人として黙っててくれないか?もちろん静香にもな」


「ああ、分かっている。それよりも…哲也何か隠してないか?」


「一体何言っているんだ遼一?」澄ました表情でコーヒーを飲みながらそう言った。


「誰にも言いたくないことなのか?言えないことか?」


「さあ、俺には何のことかさっぱり分からねえよ」


「そうか…ならいいんだ。だが、あんまり妹を心配させるなよ」


「…当たり前だ」真剣な表情でそう言った。


「それならいいんだ。…話は変えるが俺が何故ここに居るか知りたいか?」


「当たり前だ。風邪で休んでいる奴が何故病院服を着ているんだ。こっちから話を切り出そうと思っていたくらいだ」


「そうか…。なら話すが他言無用で頼む」


「…分かった」


「実は昨日…誘拐された」


「はあ!?」驚いた表情で哲也は遼一の方を見た。


「…その犯人がどうやら魔法師襲撃事件の主犯だった」


「おいおい…冗談だろ?一体なんで巻き込まれたんだ?」


「俺の親戚の姉が魔法師なんだ。どうやら俺はおびき寄せるための餌だったんだ」


「マジかよ…菜々子さんを呼び出すだけのために…」絶句した様子でそう言った。


「その主犯なんだが、助けに来た親戚の姉にやられて深手を負いながらも逃げたんだよ。…仲間が担いでな」


「仲間もいたのかよ?」


「その仲間も厄介だった。気配と言うのが全くなかったんだ。声を掛けられてもどこから声を掛けられているか分からないくらいのものだった」


「それはネイチャースキルなのか?そんなスキル聞いたことねえぞ?」


「だろうな。俺もない」苦笑いでそう言った。


「まったく…それでその様子じゃケガはなかったんだろ?」


「ああ、まったくと言っていいほどない」


「そうか…ならいいんだ。そろそろ戻るか」そう言ってコーヒーの缶をごみ箱に捨てた。


現在の缶はたとえ地面に捨てても一週間で完全分解するのでどこに捨てても問題ないが、やはりエチケットとしてごみ箱は設置されている。


「いや、俺は自分の病室に戻るよ。一応明日の昼に退院することになっている。…明日までは学校は行けないからな」


「そうか…そしたら明後日な」


「ああ、またな」


二人はそう言って別れた。
















「あっ、りょーちゃんお帰り~」携帯端末を閉じながらそう言った。


「ああ、ただいま姉さん」そう言いながらベットに座った。


「…莉子ちゃんを助けるの?」


「助けるよ。現在の医療では魔粒子の溜まっている正確な位置が分からないから治療が出来ないんだ。だから俺が探し当てて体内の魔粒子の速度を変えれば後は勝手に排出されるよ。まあ、助けるのは哲也の妹だけだけど」


「それでいいと思うよりょーちゃんは医者じゃないしそれに聖人君子でもないから、どこかで境界線は必要だよ」


「そう言ってもらえると気が楽になるよ」軽く笑いながらそう言った。


「でも、りょーちゃんいくら友達でも…あの鳳凰の当主みたいに…」少し怒りに満ちながら言った。


「殺しをするなってこと?」


「…うん」俯きながらそう言った。


「必要だからやったまでであって別に問題ないと思うけど?」


梓を自由にさせるために遼一は小学生のときに大会を見に来ていた鳳凰の当主を能力を使って殺した。それ以来菜々子は梓が嫌いになったのだが仕方の無いことなのだろう。


「でも小学生で人を殺したって言うのは…!」


「確かに悪いことかもしれないけど…当時は何の感慨も抱かなかったよ。…しかも今回の事件だって俺があいつを殺しておけば済んだ話だし。何を今更躊躇したんだろうな」自嘲気味にそう言った。


「りょーちゃん…多分それは感情があると思うよ?」


「…それはないよ姉さん、能力で完全に抑制していたよ」首を振りながら否定した。


「本当に?」真剣な表情でそう言った。


遼一は深く考えて思い出してみると一つだけ思い出した。


「いや…姉さんや事件に対して歯がゆい思いがかなりあった」


「りょーちゃん、それ感情だよ?能力で抑制されていないみたいだけど…?」


何故だ?完全に感情はコントロールしていたはずだ。だから、この事件に対して怒ることもなければ、まして、悔しいと思うことはないはずだ。…まさか遼一はそう思いながら顔をあげた。


「…感情の制御ができなくなってきているのか?いや、でも…」再び考えるようなしぐさをした。


「…りょーちゃん、それって―――」希望を抱いたような顔をして言った。


「いや、多分姉さんが考えている能力がなくなってきている可能性はないかもしれない」


「どういうこと?」キョトンとしながらそう言った。


「感情の制御と言うのは少し違うんだ。どちらかという俺の場合はと抑制しているというよりもある一つの感情だけでごまかしているにすぎないんだよ」


「どういうこと?」


「無関心というもので大部分を占めているよ。簡単に言ったら特に何に対しても興味を抱かないといったものかな。何個も感情を操れないからね。これも俺の演算能力がないせいなんだけど」


「でも感情は抑えておかないとダメだって…」


「それは衝動的って言った方がいいね。爆発的な感情が俺にとって引き金となるよ。だから、感情を常にしておかないといけないと言うのは間違っていないよ。いつ爆発的に感情が膨れ上がるか分からないからね」


「そうだったんだ…。でも、それを聞いた限りじゃ能力を失ってきていると思うけど?」


「あくまで大部分を占めているわけで抑制しているわけじゃないんだ。だから、状況や環境によって変わってくる可能性もあるんだよ。だから多分今回は無関心がその感情を下回った感じかな?」


「そんな~、せっかくその能力がなくなって魔力量が上がる可能性があったのに~」項垂れながらそう言った。


「でも、姉さんの可能性も完全にないってわけじゃないよ。今回はこんなこと初めてだったからさ」その様子に苦笑いを遼一は浮かべながらそう言った。


「本当!?」キラキラと目を輝かせながらそう言った。こんな表情を見せたら女相手でも惚れてしまうだろう。


「ありえるよ。まあ、確かめようはないけど可能性はゼロじゃないしね…おっと姉さんそろそろ帰らないと七時だよ」


「うんうん!そうだね!じゃあね~りょーちゃん」嬉しそうにそう言いながらスキップするような感じで出て行った。


遼一は菜々子が出て行った後、ふーっと息を吐きながらベットに横になった。


全く堂々とあんなことが言えたもんだな。姉さんの勘は昔から鋭いのはもう今更だけどな。遼一はそう思った。


能力が使えなくなってきているのは事実だろうな…それに姉さんが思っている通り魔力量が増える可能性も否定できないが…能力だけを失うというのもあるから何とも言えないな…。この能力が無くなったら俺はどうなるんだろうな…。まあ、今、考えても仕方ないな。遼一はベットから起き上がって立ち上がった。


とりあえず今出来ることをやろう。遼一はそう思いながら病室を出た。
















コンコンっと遼一はとあるドアをノックした。はーいっと可愛らしい声とともにドアが自動で開いた。


「あっ、遼一さんどうしたんです?」莉子はベットから起き上がりながらそう言った。


「いや、少し暇だったんだ。莉子ちゃんと話したいと思ったんだが…今、大丈夫かい?」


「いいですよ!寧ろ私も暇だったんですよ!聞きたいことありますし」目をキラキラと輝かせながらそう言った。


「そうだったのか、それは丁度良かった」遼一はその様子を見て微笑みながらそう言った。


「…それで聞きたいことがあったんですけど、菜々子お姉ちゃんは大学生なんですか?」


「いや、姉さんは魔法師だよ。委員会勤めになるね」椅子に座りながらそう言った。


遼一はそう言いながら魔力探知能力で莉子の体に標準を合わせた。すると体に溜まっている魔粒子の量に驚愕した。

彼女の魔力量が魔法師で言うAランクに匹敵しているのだ。許容量は確かに越えているが、こんな量の魔粒子を抱えていたら普通の人間だったら耐えられないだろう。まさに天性から与えられた魔力量のおかげで彼女は生きている状態だった。

僅かながら、魔力は循環しているが、遼一もギリギリ見えるレベルの魔力だった。


「へぇ~、そうだったんですか。すごいですね~。美人だしモテるんじゃないですか?もしかして彼氏がいたりして」


「いや、姉さんにそんな浮ついた話はないよ。多分だけど今まで彼氏作ったことないんじゃないかな?」


そう言いながら、魔力の循環速度を上げて、少しずつ魔粒子を体外に出していく。


能力に関しては今のところ問題はないか…。なんか、莉子ちゃんで試しているみたいで嫌だな。若干の自己嫌悪になりながらも進めていく。


「えっ!?そうなんですか!?意外すぎますよ~」


「よく分からないがずっと一途な人がいるらしいんだ」


莉子の様子を見ながら更に魔粒子のスピードを上げてどんどん体外に出していく。


「へぇ~、凄いですよね~。でも、お姉ちゃんが惚れた人って誰なんですかね?」


「さあ、それには俺もよく分からないよ。姉さんだったら大概の男性だったら大丈夫だと思うけど…」


そう言っているうちに魔粒子の量が半分を切った様子だった。


この速度だったら問題なさそうだな。このまま行くか遼一はそう思いながら速度を維持して莉子の体内にある魔粒子を外に出していく。


「そうですよね~。あんな綺麗な人だったら、普通の男の人は誰でも惚れますよね。いいな~、私もあんなお姉ちゃんが欲しかったですよ」


「何を言っているんだ。姉と呼ぶことを許されているんだからもう姉さんだろう」


そう言いながら魔粒子の量を確実に削っていった。


「あはは、そうですかね?…でもそしたら遼一さんはお兄ちゃんですかね?」


「そうか?だったらお兄ちゃんと呼んでもいいぞ?…まあ、そうしたら哲也に怒られそうだな」


どうやらなくなったようだな。遼一は莉子の体の魔粒子残存量を確認しながら思った。今の莉子の体は自然に魔力が正常に循環している状態になっていた。


「あはは、そうですよね。―――あれ?」莉子は突然自分の掛け布団をめくりながら足を触った。


「どうかしたのか?」遼一は椅子から立ち上がって莉子の近くに寄った。


「か、感覚が…足の感覚が戻っているんです!それにいつもと比べて体が軽いんですよ!」喜びに満ち溢れた表情でそう言った。その目には少し涙が出ていた。


「と言うことは…症状が軽くなったのか?」


「はい!その可能性が高いです!精密検査を受けないとなんとも言えませんが、それでも確実に軽くなっていますよ!」嬉しそうに泣きながらそう言った。


「そうか良かったな。…哲也には言わなくていいのか?」


「兄さんにはもちろん言いたいんですけど…でも、やっぱり驚かせたいのもあるんでまだ黙っておきます」ニヤッとしながら言った。


「ふふっ、そうか目一杯驚かせるといいな」遼一は莉子の様子を見ながら微笑んだ。


「そう言えば遼一さんはいつまでここにいるんですか?できればお姉ちゃんにも報告したんですけど…」


「俺は明日の昼にここを退院するんだ。だけど姉さんは仕事から来れないよ」


「そうなんですか…」明らかな落ち込みようでそう呟いた。


「大丈夫だよ。姉さんにはちゃんと許可貰ったから姉さんのアドレスと電話番号を教えるよ」遼一はそう言って携帯端末を取り出した。


「本当ですか!?」そう言いながら携帯端末を取り出した。


二人はそれぞれ交換して登録した。


「あれ?遼一さんのアドレスと電話番号がないんですけど?」首を傾げながらそう言った。


「えっ?俺のもいるのかい?」


「はい…もしかして嫌でした?」上目遣いで涙目でそう言った。なんとも保護欲を駆りたたせる様子だった。


「い、いや、そんなことは無いよ。ただ単に俺のは必要ないのかなって思っただけさ」遼一はその様子にタジタジになりながらそう言った。


「そんなことはないです!遼一さんと話すと面白いですし、それに遼一さんのおかげで今日一日楽しめましたし!さらに症状も良くなったんですよ!最高じゃないですか!」興奮した様子でそう言った。


「症状の方はまあ、運がよかっただけだと思うけど…。楽しめたのであれば俺も嬉しいよ」遼一は微笑みながら言った。


そして再び交換し合い、


「これからもよろしくお願いしますね私と兄を」そう言って莉子は手を差し出した。


「こちらこそよろしく」遼一も手を出して握り合い握手を交わした。

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