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魔力がない魔法生  作者: とんび
2章 選考会編
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十一話 テスト前

最後の投稿から約三カ月大変長らくお待たせしました。大学受験というのはかなり大変ですね。もう時間があまりなくて泣きそうです。志望大学受かるかな…

死神襲撃事件から約二カ月、現在は六月の下旬を迎え、夏に近づいているのが分かるくらい気温は上がっていた。

死神の事件から雲居家の名声は一気に上がった。一時期は偽の情報ではないかと言われていたが、死神が肯定したら一気に噂が委員会の間で広まった。

雲居正平は次期候補にはなっているがまだ立場が微妙な感じであった。簡単には伝統は覆さないのであろう。あれから、『もしかしたら死神を倒せるんじゃないか?』と思う連中が出て来て、死神を襲う相手が増えてきたが難なく遼一は返り撃ちをしている。


色々な行事予定や学校は部活の勧誘も落ち着いて、生徒会と風紀委員の仕事も減った。なので最近はすぐに家に帰ったり、いつものメンバーと遊んだりしている。


「りょ、遼一助けてくれ~。魔法理論とか全然分からん」遼一にすがりつくようにしながら哲也が言った。


現在は放課後、テストまであと一週間に入っているので教室に残って勉強をしている生徒が見受けられる。


「普段から授業をまじめに受けていないからだろ?復習はしているのか?」


「…復習?ああ、復習な…してないけど?」一瞬キョトンとしながらそう言った。


「してないのかよ…」呆れながらそう言った。


「どうかしたの?」静香がノートを抱えたままやってきた。


電子化が進んでいる今でも紙のノートは存在している。ただ電子ノートの方もあるのでほとんどの人は電子ノートを使っている。紙のノートは珍しいだろう。


「いや、魔法理論が分からないと哲也が言ったから復習はしているのかって聞いたんだが…」


「やっていないと」


「ああ、そうだ」憮然とした態度で哲也はそう言った。


「…自業自得だよ。人に頼るのが間違っているよ」静香はジト目で哲也を見た。


「と、友達って言うのは助け合うもんやろ?なあ、頼むよ~」手を合わせながら遼一にねだった。


「…いいぞ、どうせテストも近いし教える俺も復習になるからな」


「ほ、本当か!?やったぜ、これでテストは勝てる!」自信満々の表情で高々と宣言した。


「…遼一君も甘いよ。少しは厳しくしないと…」批判するような目で遼一に訴えた。


「問題ない。ちょっとしたきっかけでも与えてやれば勉強はするだろう。哲也は物覚えはいいからな」


「ふふふっ、まあな!じゃあ、さっそく勉強しようぜ!図書室なんてどうや?」


「ああ、それだったら集中できるだろう。だが、テスト前は多そうだが」


「問題ないで~ちょっとしたコネがあるんよ」


「コネ?なんで図書委員でもないのにそんなものがあるの?」静香が不思議そうにそう言った。


「まあ、それは行ってから分かることや。静香ちゃんも一緒にするか?」にやにやしながらそう言った。


なんでそんな顔をするんだよ…。静香を怒らすだけだぞ。遼一は呆れた視線を哲也に向けた。


「ふ~ん、今すぐにでも殴りたくなるほどの顔だけど今回はしないよ。色々と気になるしね。まあ、そのコネが嘘だったら全力で殴るけどね」笑顔を浮かべながら拳を震えるほど握り締めていた。


「よ、よし、静香ちゃんも行くってことやし、さっそく行こうや」冷や汗を流しながらそう言って哲也は図書室に向かった。


あまり自信がなさそうな感じだな…。あまり期待するのも可哀そうだな。遼一は哲也の様子からそう思った。












図書室に着き、哲也が静香と遼一に対してここに待つように言った。図書室の入り口からでも分かるくらい人で溢れていた。これでは中で勉強をするのは難しいだろう。


「一体なんだろうね?ここに待つようにいわれたけど…」


「さあ、俺にも分からん」


二人は疑問の表情を浮かべて哲也を来るのを待った。


「よっしゃ、二人とも来ていいで~」そう言って自信満々に哲也が歩いてやってきた。


「一体どこでやるんだ?」


「ついてきたら分かるで~」笑顔でそう言いながら受付カウンターの方に向かった。


哲也は受付カウンターに着くと躊躇なくカウンターの裏を通った。


「え?て、哲也君ここには入っちゃダメなんじゃない?」


「問題あらへんで?俺のコネを使ったからな」ニッと笑ないがらそう言った。


「そ、そうなんだ…」引き攣った笑みを浮かべながらそう言った。


「まあ、そう言うわけやからここの中に入って勉強していいんや」そう言って自動ドアをくぐった。


中に入ると長机と椅子が並べられていた。


「まあ、ここは図書委員室や。特別に入らせてもらったけど、なかなかええとこやな~」感心するようにしながらそう言った。


「まさか本当にコネがあったとは…」遼一は少し驚いた表情をしながらそう言った。


「ま、まあ、本当はいけるかどうか怪しいところやったんやけど」ははっと乾いた笑みを浮かべながらそう言った。


「それよりも早く勉強しよう?哲也君分からないんでしょ?」


「そうやな、さっそくで悪いんやけど魔法理論を教えてくれ」


「全部なのか?」


「ああ」笑顔で元気よく頷いた。


「…わかった」やや呆れながらそう言った。


魔法理論は大きく分けて三つに分かれる。魔法論、魔法式、幾何学だ。

魔法論は魔法についての知識や語彙を覚えるもので暗記モノだ。


魔法式というのはイメージだけでは処理できない魔法やより効率的に魔法を放つ為に必要な式を覚えるものだ。これは自分のMWに組み込むことによって発動する。

この魔法式は国によって違ってきたりする。さらに、この式は自由に組み合わせができるためより効果の高い式を作るため現在研究中だ。


幾何学は魔法を使うためにイメージを使うためより鮮明に明確にするために色々な図形や空間の問題を学ぶものだ。

どちらかというと魔法は理系に偏っていると言ってもいいだろう。


テストはこの三つを中心に行われる。筆記のテストは六教科600点満点だ。それと実技のテストも行われる。実技のテストは指定された魔法をどのように応用、変化をさせてより使いこなせるかを競うものだ。


この教科は全部、魔法高校からの専門課程であり、いくら中学校が義務教育とはいえ、ここまで浸透させることはない。せいぜい、MWの扱い方や基本の構造までが普通学校までだろう。

中学校の魔法学校はあるが、ほとんどが私立であり、高校から魔法を本格的に学ぶという人がほとんどだ。なので、毎年この高校から魔法師に直接なれるのは少ないというものある。




「複雑すぎるわ~。特に魔法式というのがややこしくてやってられへん」


「魔法式は魔法を使うものにとって重要なものだ。典型的な式だが日本の魔法式は綺麗だと思うぞ?」


「こんな文字だらけの奴が?これを頭で考えるだなんて本当に嫌なもんだぜ」


「これはファイアボールを強化するための基本式だ。これを後は炎系の式に自由に組み合わせて行くべきだ。自分の式を作って得意な魔法を作るのは基本だろう?」


魔法式と言うのは組み合わせが自由にできるため、自分の得意な系統の魔法式を組み合わせて作ったりするのが普通だ。組み合わせは色々とあるので個人の自由だろう。

魔法式は自分でMWに入力するのが基本だ。そして入れた魔法式に登録名を入れてセット完了となる。


「遼一君の言うとおりだよ。中学校と違ってここにある魔法式はバリエーションが豊富だから自分の魔法式を作っておくのは基本だよ」


魔法式というのは重宝されるものであまりにも常軌を逸している魔法式は公開されなかったり制限がされていたりなどする。


「そう言うわけだから文句を言わずにやることだな」


「…それならしゃーないな」


まあ、俺にはまったくを持って意味のないものだがな。遼一はそう思いながら哲也に勉強を教えていた。















「遼一~そろそろ帰らへんといかんとちゃう?」携帯端末から顔をあげてそういった。


「…それもそうだな。そしたら俺はこれを返してくるよ」遼一は携帯端末を上げながらそう言った。


現在の本はほとんどが電子書籍化としている。それだと、データにして持ち運びが楽だからだ。図書室も専用の携帯端末が置いてあり、図書室にある全ての本を検索して、見ることが出来る。


「おう、わかった」


「じゃあ、私達は入り口で待ってるから」


「わかった」遼一はそう言って図書委員室を出た。


委員室から出ると受付カウンターで携帯端末を動かしている女子生徒がいた。


「すみません。これここに返していいですか?」先輩かどうか分からないので敬語で言った。


「…ええ」携帯端末に目を向けたままそう言った。


「ああ、それと今日はこの部屋を貸してくれてありがとうございます。…もしかして、哲也の奴が無理をいいました?」


「ええ、でも問題ないわ」携帯端末に向けたままそう言った。


哲也この人と一体どんな関係なんだ?遼一はそう思いながらその女子生徒を見た。

流れるような長い黒い髪に雪を連想させるような白い肌、体は服の上からでも分かるくらいの胸と綺麗な足を交差させて組んでいる。ただやや垂れ目の黒い瞳はどこか無機質な感じがする。


バッチを見る限り一年生のようだな…。まあどうでもいいか。遼一はそう判断して帰ろうと思った。


「そうですか、では自分はこれで失礼します」


「…ええ」


遼一はそのまま図書室を出た。











「なあ、哲也あそこのカウンターにいた人の名前はなんて言うんだ?」


「おっ、遼一さんさすがお目が高いな~。あの人は黒木マリナさんや美人で無表情やからこおり美人なんて言われてるんよ」


「こ、氷美人って…」唖然としながら静香はそう呟いた。


「普通にスタイル抜群で名前の通り雪の華みたいな肌をしているやろ?罵られたいちゅう男子生徒がわんさかおるんやで?」


「…変態」そう言って静香は哲也から距離をとった。


「ちょ、ちょいとまてや!なんで俺が避けられならいかんのや!」


「誰がどう聞いてもそう思うだろ…。その情報どうやって手に入れたんだよ?」


「それは秘密やな~。教えられんこともあるんや。まあ、いい男には秘密が多いちゅうやつやな」


「……確かそれは、いい女じゃないのか?」


「遼一君の言う通りかも…」


二人してジト目で哲也を見た。


「そ、そういえば遼一、今日はみんなはどうしたんや?」哲也は焦ったのか無理やり話題を変えた。


「…哲也に勉強を教えるって言ったら照吾は苦い顔をしながら帰って、麗華と梓はそれならいいと言って帰って、美希は俺の家で夕飯を作るからいいと言って帰った」


「はあ!?」

「え!?」


哲也と美希の二人は驚いた表情をしながら遼一に詰め寄った。


「夕飯を作るってことは同棲しているの!?こ、高校生でそれは…」

「ど、どういうことや!自分モテるからってそれはあかんやろ!」


「何を言っているんだ?同棲なんてしてないぞ?」訳がわからないといった表情を遼一はした。


「え?・・・ということは付き合っているってこと?」


「まあ、それやったら納得やな。二人とも幼少の頃からの仲やしな」


二人は納得の表情を浮かべていた。


「いや、美希とはそのような関係ではないぞ?」


「ええっ!?それも違うの!?」


「夕飯作ってもらっといてそれはないやろ!」


「・・・夕飯を作ってもらったらそのような関係になるのか?」遼一は理解できないようで消化不良をおこしている様子だった。


「・・・どういうことや?親友みたいなもんか?」


「えっ?でも、美希ちゃん自身は違うような気がするけど・・・」


二人はぼそぼそと遼一に聞こえないように話していた。


「おい、聞いているのか?」


「・・・遼一質問や」哲也は真剣な表情をしながらそう言った。


「・・・ああ」遼一もただならぬ感じがしたので真剣にそう言った。


「美希ちゃんのこと好きか?」


「当たり前だ。嫌いになれるはずがない」頷きながら答えた。


「それは異性ってこと?」静香も真剣な表情をして言った。


「異性?それは女としてってことか?」


「そうだよ」


「・・・わからないと言ったほうが正しい」


「えっ?」

「は?」


「言い方が悪かったな俺は女性を異性として好きという感覚が分からないんだ。今までそんな感情を感じたことがないからな」


「つまりどういうこと?女の人を見ても・・・その・・・興奮したりしないの?」若干顔を赤くしながらそう言った。なんとも保護欲をかりたたせる姿で隣にいる哲也は思いっきり目を逸らしていた。


「ああ、そうだな。何も思わない」


「・・・嘘やろ?エッチな本ーーーゴホンッ!いや、何でもないわ」咳払いをしながらそう言った。


「・・・女の子の前でそんな話普通するかな~?」ジト目で哲也を見た。


「あはは・・・」哲也は乾いた笑みを浮かべながらそう言った。


「・・・おい、うるせえぞ静かにしろ低クラス」気分悪そうな表情で男子生徒がそう言った。胸のバッチから一年のBクラスというのが分かった。


「…低クラスってなんや?上のクラスだけっちゅうだけでそんなに偉いもんなんか?」哲也も馬鹿にされて怒ったのかそう言って男子生徒を睨みつけた。


「あ?何言っているんだ?喧嘩売ってんのかお前」男子生徒はそう言って哲也の胸に掴みかかろうとしたが哲也はその腕を持って反対側に捻った。


「いてててて!」男子生徒は苦悶の表情を浮かべながらそう言った。


「俺はな見下されるのが一番嫌いなんだよ。・・・本当にムカつくなぁオイ」ぎりぎりっと捻っている手に力をさらに加える。


「痛い痛い!折れる折れる!」男子生徒はそう言って暴れだしたがどうやら逆効果みたいだった。


「て、哲也くん!そこまでにしようよ。流石にやりすぎだって!」静香はそう言ってとめに入った。


「いや、こいつが反省するまでやめる気はねえ」男を睨みつけながらそう言った。


なんだ?いつもと雰囲気が全然違うぞ?遼一はそう思いながら哲也を見た。


いつもの飄々とした雰囲気は微塵もなく。完全に獲物を狩るハンターのように威圧的で近寄りがたい雰囲気を出していた。静香もいつもと違う哲也を見て驚いて、今にも泣きそうな表情をしている。


「・・・哲也、そのへんにしておけ流石にこれ以上やったら風紀委員として見逃せなくなる」遼一はそう言って哲也の肩にそっと手を置いた。


「・・・ああ、わかった」哲也はそう言って渋々手を離した。


「チッ、全くこれだから低クラスは・・・」男子生徒はそう言って腕をさすりながら哲也から距離をとった。


「おい、それ以上の暴言もなしだ。差別用語を使ってはいけないはずだが?」


「ふん、お前こそ低クラスの分際で風紀委員になったことで調子づいているんじゃないのか?」男子生徒はにやにやしながら遼一に言った。


「上のクラスにいるから俺は大丈夫だと思っていたらテストで足元すくわれるぞ?」


「ハンッ!低クラスの奴らに負けるわけねえよ。まあ、せいぜい頑張るんだな俺たちの下でな!」


「おい・・・お前あんまりふざけたこと抜かすとぶっ殺すぞ?」哲也はそう言って片手剣のMWを構えた。


「そ、それはこっちのセリフだぜ!低クラス!」一瞬怯みながらもそう言って片手銃のMWを構えた。


二人が対峙してMWを構えている時に遼一は素早く二人のMWを叩き落して双剣にしたMWを二人の首元に当てた。二人は驚いた表情を浮かべながら遼一を見た。


「これ以上はやらせないぞ?」遼一が威圧的な雰囲気を出していたため流石に二人は落ち着いた。


「・・・ちっ、気分わりい」男子生徒はそう言ってMWを拾いながら帰っていった。


「驚いたぞ哲也・・・。お前らしくもなかった」


「・・・ホントすまんかった」俯きながらそう言った。


「そ、そうだよ。なんか雰囲気も全然違ったし・・・」


「わ、悪かったわ。・・・そのゴメンな、今日は一人で帰るわ」


「あっ、おい」遼一は哲也にそう言って声をかけたが哲也はそのまま一人で帰っていった。


「・・・・・・行っちゃったね」寂しそうにそう呟いた。


「ああ・・・」遼一は心配そうに哲也の後ろ姿を眺めていた。


「・・・なんかちょっとさっきの哲也君おかしかったよね」


「確かにそうだな」遼一はそう言いながら頷いた。


先程の哲也の表情は憎悪に満ち溢れていた。この前の雲居正平との比ではないくらい。そうあまりの睨みに一瞬Bクラスの男子生徒が怯む程のものだった。


「怖かったな・・・」静香は小さくそう呟いた。


静香はあまりの哲也の豹変で先程からずっと体を震わせていた。


「ああ、そうだな。でも、それは本人の前で言ってやるなよ?絶対にあいつ傷つくからさ」


「そうだね」少し笑顔を浮かべながらそう言った。


「このことに関しては忘れることにしよう。あまり詮索しないほうがいい感じだからな」


「そうだね」静香は悲しそうにそう言った。

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