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出口 - 3
鉄の扉が、重く軋んだ。
イリスの両腕を護衛隊が挟み、無言のまま歩かせる。
そこは、王宮の奥の光の届かない場所。
赤い絨毯は、冷たい石床に変わっていた。
足音だけが、やけに響く。
イリスは、俯かなかった。
泣くこともせず、取り乱さない。
それが、最後に残された“姫”としての意地だった。
「……」
その時、足が止まる。
牢の前に立っていたのは、カシウスだった。
護衛たちは一斉に動きを止める。
カシウスはイリスを見ることはせず、扉の鍵に手をかけた。
「……王の命だ」
カシウスはそれだけ言うと、牢の扉を開けた。
中は簡素な寝台と石の壁だけ。
イリスはカシウスの前を通り、その中へ一歩足を踏み入れた。
カシウスの視線がほんの一瞬だけ揺れた気がした。
扉が、ガチャンと閉まる。
カシウス達がいなくなり、1人になったイリスは、しばらくその場に立ち尽くす。
壁に手をつくと、石の冷たさが指先から伝わってきた。
「……セラ」
名前を呼ぶ声は、小さく、掠れていた。
父に裏切られ、国に切り捨てられた。
それでも、まだ終わっていない。
鉄格子の向こう……見えない空を見つめながら、イリスは、必ず真実に辿り着くと誓った。




