出口 - 2
玉座の間は、静まり返っていた。
高い天井に赤い絨毯。
王の椅子に座るのは、父であり、王でもあるレオナルト。
その一歩後ろに立つのはカシウス。
そして、2人の前に立たされているのは、王の娘であるイリス。
鎖はないが、護衛隊に囲まれ逃げ場はない。
「イリス。随分と早かったんだな」
レオナルトの声は穏やかだったが、それが、かえって不気味だった。
「護衛隊まで出すなんて……随分な扱いですね」
「王宮は危険に満ちている」
レオナルトは指を組み、ゆっくりと言った。
「特に……裏切り者にとってはな」
空気が、張り詰める。
「私は、裏切ってません」
「だが、王の意思には従わなかった」
イリスは、ため息をつく。
「お母様の部屋にセラと行ったことも、スラム街へ行ったことも……すべて、お見通しだったんですね」
「まさか、セラが連れ去られるとは思わなかったがな」
その言葉にイリスは拳を握った。
「私は、国を守ってきた。これからも守る義務がある」
「守った……?こんなにも隠し事をして?」
イリスの声は低かった。
「今回のヴェイルの件……お父様が関係していますよね?」
無言でイリスを見るレオナルトの視線が、鋭く突き刺さる。
「お母様の話を、なぜ隠していたの?」
答えは……なかった。
「……やっぱり」
イリスは笑った。
壊れそうな、乾いた笑いだった。
「私は“娘”じゃなく……“駒”なんですね」
「……国は守らねばならん」
そして、レオナルトは言い切る。
「たとえ、お前を使ってでも」
その瞬間、イリスの中で、何かが切れた。
「それが……王ではなく、“お父様”としての答え?」
震える声で、イリスは続ける。
「なら私は、あなたの“王国”を信じない」
レオナルトは、ゆっくりと手を上げた。
「カシウス」
「は」
「イリスを、拘束せよ」
命令が、下された。
イリスは父を睨み続けた。
助けを求めず、涙も見せない。
この日、父と娘の関係は完全に切れた。




