40/44
出口 - 1
王宮へ続く回廊は、やけに静かだった。
石畳に響くイリスの足音がやけに大きく、イリスは違和感を覚えていた。
……人の気配が多すぎる。
「止まりなさい」
低い声が前方から響くと、回廊の両脇から一斉に鎧を纏った人影が現れる。
王家直属の護衛隊だ。
イリスは完全に包囲されていた。
「……カシウス。これは、どういうつもり?」
イリスの問いに、隊の中央に立つ男が一歩前に出る。
彼はレオナルト王の右腕・王宮護衛隊長のカシウスだった。
「国王陛下の命です」
命令の内容も、理由も語られない。
カシウスは元から無口な性格ではあるが、その話し方はどこかレオナルトに似ていた。
「私を拘束する……と?」
「抵抗はお勧めしません」
淡々とした声に、感情はなかった。
イリスは剣に手をかけることは、せず、ため息をついた。
ここで抗えば、誰かが傷つく。
それを父は、きっと織り込み済みだったのだろう。
「随分と用意周到ね」
「王宮は、常に陛下の掌の上にあります」
護衛隊が一斉に距離を詰める。
逃げ道も、選択肢も、ない。
「……分かった」
こうして、“王の意思”によって、イリスは確保された。
彼女を助ける者はいなかった。




