残された剣 - 5
アルベルトが消えてから、3年が経ち、リオは王国騎士の中で1番と言っていい程に強くなっていた。
ただ、リオの中は空っぽだった。
剣を振るう理由が、分からない。
強くなるためでも、生き残るためでもない。
ただ、剣を手放したら、自分が空っぽになってしまう気がした。
とある日の、訓練場。
いつもと変わらない朝のことだった。
「次は、お前だ」
そう呼ばれて、リオは前へ出た。
目の前に立っていた相手は、自分より歳下の少女だった。
肩まで伸びた深い緑色の髪の少女は、剣を握り、立っていた。
ここは、子どもが立つ場所じゃない。
「……本気で来てください」
リオはそう言うと剣を構える。
少女も無言で剣を構える。
次の瞬間、空気が変わった。
剣筋が、鋭い。
無駄が、ない。
迷いが、ない。
リオは一歩下がり、すぐに理解した。
この少女……強い。
少し打ち合ったところで、リオの剣先が弾かれた。
息を整えながら、リオは少女を見る。
「……名前は?」
少女は、こちらをまっすぐ見返して言った。
「イリス」
王の娘・イリス。
わずか14歳にして、保安組織の隊長に就いた少女。
後から聞いた肩書きは、どれも現実味がなかった。
ただ1つ確かだったのは……
剣を握るその背中が、あまりにも孤独に見えたこと。
アルベルトが去ったあの日以来、初めて胸の奥がざわついた。
“守りたい”
それは、命令でも役割でもない。
リオが生まれて初めて抱いた、個人的な願いだった。




