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残された剣 - 1
まだ小さな手には重すぎる剣。
それを「落とすな」と言われた記憶だけが、今でも鮮明に記憶として残っている。
はじまりは、リオが5歳の時だった。
王宮の裏門は、幼いリオにとってあまりにも大きく見えた。
その前に立つ大人たちと、父が会話をしていたが、何を話しているのかは分からない。
母はしゃがみ込み、リオの頭を撫でると口を開いた。
「いい子にするのよ」
それが、両親を見た最後だった。
“リオはこの日、親に売られた”のだ。
「……名前は?」
裏門をくぐったところで、男の1人が声をかけてきた。
感情のないその人物は、無駄なものをすべて削ぎ落としたような目をしている。
「……リオ」
名を聞くと、男はなにも言わず片手に持っていた剣を、リオの足元へと投げる。
「今日から、お前は王国騎士の一員だ。生き残りたいなら、これを握れ」
それは、脅しではなく、ただ事実を告げるだけの淡々とした声だった。
リオは身の丈に合わない剣を拾う。
……王国騎士。
国のために剣を振るう者たち。
強くて、かっこよくて、皆に必要とされる存在。
それは、リオに与えられた“新しい居場所”だった。
幼いリオは、その言葉の響きだけを信じて、小さな胸を、少しだけ高鳴らせた。




