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王の子は世界と世界のあいだで鍵となる  作者: 浅 眠瑠
エピソード7:母の遺したもの
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母の遺したもの - 3

仮面屋は、割れた仮面を指先でなぞった。


「……双子って、どういうことだ」


イリスが低く問いかける。


「そのままの意味さ。なに、15年以上も前の話だ。君が覚えていなくても無理はない」


仮面屋は、遠い記憶をなぞるように語り出す。


「15年ほど前にとある美女が、この店を突然訪ねてきた。君と同じ、深い緑の長い髪。純粋でどこか危うい瞳をしていたよ」


仮面屋は、低く息を吐いて続ける。


「彼女はひどく息を荒らしていてね。ワタシに言ったんだ。『この子たちを守る仮面を作ってほしい』と」


イリスの指先がピクリと反応する。


「彼女は小さな赤子を抱いていた。男の子だったよ」


「でも、この子たちと言ったんだよな?」

「ああ、子はもう1人いると言っていた。名はイリス。君と同じ名の女の子だと」

「……」

「ワタシは売り物の仮面を2つ渡した。彼女はそれを抱きしめるように受け取って……嵐のように去っていったよ」


仮面屋は、淡々と続ける。


「まさかその女が、亡命直後の妃様だったとは……その時は、思いもしなかったがね」

「……その後、お母様とその子は?」

「さあな。噂では……死んだとも聞く」


仮面屋は、真っ直ぐにイリスを見て、ぽつりと呟いた。


「君も、彼女も、あの赤子も……“こちら側”に留まりきれない目をしている」


イリスの胸の奥で、嫌な感覚が広がる。

双子。

亡命。

聞きたいことは山ほどある。

それに気づいたのか、仮面屋はくすりと笑った。


「とにかく、この仮面は君を守るためのものだ。そして君が“選ぶ側”になるための鍵でもある」

「……選ぶ?」

「王の娘として生きるか、それとも……」


画面屋はそれ以上言うことをやめた。


「これ以上、話すことはないよ」

「なぜだ。私はまだ聞きたいことが」


画面屋はくすりと笑う。


「ここの住人にしては、ワタシは約束は守るんだよ。いくら金を積まれても、これ以上は話せない」

「お母様との約束ってことか?」

「そうだね。まあ、あと1つ言えるとするなら……王宮は嘘をつく。だけど場所は嘘をつかないよ」


イリスは、仮面を強く握りしめた。


「……次に来る時は、全て話してもらうぞ」

「……生きていればね」


仮面屋はそう言って、再び仮面の影へと溶けていった。

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