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母の遺したもの - 2
「いらっしゃい、王の娘」
「……やはり、私を知っているか」
「この王都で、君の“気配”を知らない者はいないからね」
仮面屋は、イリスの手元にある布に包まれたそれへと、静かに視線を落とす。
「……それで? 今日はその仮面のことかい?」
イリスは答えず、無言のまま布をほどいた。
仮面が露わになった瞬間、仮面屋の動きが、ほんの一瞬だけ止まる。
「……これは……」
「知っているのか」
「……これを直しに来たのかい?」
「違う。これを作ったのはお前か?」
「そうだね。確かに昔、ワタシが作ったものだ」
イリスの瞳が鋭く細まる。
「……依頼したのは誰だ。誰のために、何のために作られた仮面だ」
仮面屋は、困ったように肩をすくめた。
「何を言っている?これは君のための仮面だよ」
「……は?」
思考が、追いつかない。
「知らなかったのかい?これは君の母親が……君たちのために作らせた」
「“君たち”?」
イリスは、その言葉を逃さなかった。
仮面屋は、ゆっくりと言葉を選ぶように告げる。
「そう。君の母親……エリオネが、“双子の子どもたち”に与えるために作らせた仮面だよ」




