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王の子は世界と世界のあいだで鍵となる  作者: 浅 眠瑠
エピソード6:檻の記憶
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檻の記憶 - 3

闘技場と呼ばれたそこは、建物というより、崩れかけた倉庫を無理やり改造したものだった。

入口の鉄扉が開いた瞬間、熱気と歓声が一気に押し寄せてくる。


「いけぇぇぇ!!」

「殺せ!!」

「次は右だ、右!!」


怒鳴り声。

笑い声。

罵声。

金属がぶつかる音。


円形に組まれた観客席の中央には、簡素な柵で囲われた闘技場があった。

その中では2人の人影が激しくぶつかり合っていた。

2人からは血が飛び、拳が当たるたびに鈍い音が響く。

観客はそれを娯楽として楽しんでいた。


「……賭けは成立だ!」

「次、能力者だぞ!」

「生き残った方に全額だ!」


観客の手には札束。

勝敗と同時に金が動き、人の命が数字に変わっていく。


「ひどい場所だな」

「ここでは、これが“日常”なんですよ」


案内役の男は平然と答えた。


「食べるために守るため……それだけで戦う者もいますし、売られる前の“見世物”という場合もあります」


その言葉に、セラの身体がぴくりと反応する。

彼女は闘技場を見つめたまま、呼吸が次第に浅くなっていく。

イリスは、そっとセラの肩に手を置いた。


「セラ、無理をするな。すぐ出る」

「……だ、大丈夫です……」


そう言いながらも、セラの表情は明らかに不安定だった。

その時、観客がざわめいた。


「次だ!!次は“商品候補”だ!!」


闘技場の中央へ、鎖をつけられた少年が引きずり出される。

明らかにセラよりも幼い少年だった。


「能力持ちか?」

「まだ子どもだぞ?」

「値がつくな」


その光景を見た瞬間、イリスの胸に込み上げたのは、怒りとは似ても似つかない感情だった。


これは闘技場じゃない。

人を壊して売る場所だ。

ここを壊してしまおうか。


そう思い、腰に仕込んだ銃に手をかけた。

その瞬間だった。


「……っ……」

「セラ!!!!」


セラの膝が、がくりと折れ、彼女の意識は完全に途切れた。

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