閉ざされた真実 - 3
夜の王宮は、昼とは別の顔だ。
月光を受けて淡く輝く白石の床。
その静寂を破るイリスとセラの足音。
「……ここから先は、立ち入り禁止区域だ」
イリスは小声で告げる。
セラは不安げに頷き、イリスの一歩後ろを歩いていた。
その時
かすかに、音がした。
低く、深く。
まるで王宮そのものが呼吸するかのような振動。
「……?」
イリスが立ち止まる。
次の瞬間だった。
セラの胸元、礼拝堂のシスターたちが身につける小さな装飾が、淡く光を放つ。
「え……?」
「……反応、している」
イリスは息を呑む。
「どうして……」
セラの声は震えていた。
足元の石床に細い光の線が走ると、迷うことなくセラの立つ位置へと収束していく。
「セラ、動くな」
イリスは即座に彼女の前に立ち、剣に手をかけるが、周りからは敵意は感じられない。
光は、拒むのではなく迎え入れるようにセラを包んでいた。
「……王宮がお前を“鍵”として認識しているのか」
イリスの声は低く、確信に満ちていた。
「そんな……私、何も」
「……違う」
イリスは静かに首を振る。
「“何も知らない”のではなく、知らされていないだけだ」
光が、さらに強くなる。
すると、回廊の奥、普段は存在しないはずの場所に、扉が浮かび上がった。
古代文字で刻まれたその扉は、セラの一歩に呼応するように、軋む音を立てる。
「……これが、父が隠していたもの……なのか」
イリスは、確信した。
この王宮にある秘密。
王レオナルトが、誰にも触れさせなかった真実。
「セラ」
イリスは振り返る。
「怖いなら、ここで引き返してもいい」
一瞬の沈黙。
セラは、ぎゅっと拳を握りしめ、ゆっくりと首を振った。
「……イリスさまと一緒なら……行きます」
その言葉と同時に、扉が開いた。




