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王の子 - 2
月明かりに照らされる王城のベランダと静寂が夜の空気を支配していた。
王城の頂で、孤独に立つ彼女は、誇りと冷たさを兼ね備えている。
誰も知らない。彼女がまだ、これから何に巻き込まれるかを……。
イリスの自室のベランダが見える場所の林の中。
その影の中に、物音も立てず一人の人物が立っている。
目は冷たく、しかし確かに彼女を見つめ微かに笑みを浮かべた。
「そう思っているうちは、まだ……」
声は風に紛れ、彼女どころか誰の耳にも届かない。
焦る必要はない。まだ、何も起こさなくていい。
今はただ、見ているだけで十分だ。
世界と世界の間で、彼女は何かを変える鍵となる。
静かに風が吹き、影はその場に溶け込んだ。
月光に反射した眼だけが、淡く光を宿していた。




