閉ざされた真実 - 1
翌日、王城応接室。
「以上が、礼拝堂での一件の報告です」
イリスは簡潔に告げた。
ヴェイルの関与。
アルベルトの出現。
フィオが姿を消したこと。
レオナルトは、イリスの報告を聞きつつ、提出しされた報告書を一枚ずつ、丁寧に読み進めていた。
「ヴェイルは撤退。フィオは消失」
レオナルトは、報告書を置くと静かに息を吐く。
「……セラは無事か」
レオナルトが最初に口にしたのは、その名だった。
「はい。怪我はありません」
「そうか」
イリスには1つの疑問が浮かぶ。
国の安全よりも先に、なぜ1人のシスターの名が出たのか……。
「お父様」
イリスは一歩踏み出した。
「なぜセラをそこまで重要視なさるのですか」
わずかな沈黙。
レオナルトの視線がイリスを射抜く。
「必要な存在だからだ」
「理由を、お聞かせいただけませんか」
「知る必要はない」
冷たい拒絶。
だが――なにかを隠している。
「……失礼いたしました」
それ以上は踏み込まず、イリスは一礼する。
「下がれ」
扉が閉まる。
廊下に出た瞬間、イリスはゆっくりと息を整えた。
(少しだけ……)
ドアノブに触れることなく、意識を王の執務室へ向ける。
――読む。
セラたちを見つけた時にも使ったそれは、人の感情・思考の“揺らぎ”をなぞる、イリスの能力。
「ーーっ……!?」
見えない壁に触れたような感覚。
まるで先を読まれていたかのように、思考は硬い膜に遮られる。
(結界……?)
イリスは、ゆっくりと手を下ろした。
読めなかった。
父はイリスが何をしようとするか分かっていたのだろうか。
(やっぱり……)
セラの存在。
ヴェイルの動き。
そして、父の沈黙。
「……自分で確かめるしかない、か」
イリスは呟くと歩き出した。




