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祈りの傍で - 7
王城へ戻ったイリスは執務室で1人、座っていた。
日は暮れてしまっている。
机の上には、簡易的な報告書。
そこに記されたフィオの名前。
「はぁ……感情で動く人間は、厄介だな」
そう呟きながらも、脳裏に浮かぶのは彼女の顔だった。
(ダメだな、情は判断を鈍らせる)
ヴェイル。
アルベルト。
フィオ。
なにかが一本の線で繋がり始めている。
「……次は、逃がさない」
その声は、自分自身に言い聞かせるようでもあった。
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一方、リオは訓練場にいた。
夜の訓練場は月明かりだけが剣を照らす。
「……っ」
剣を振る。
いつも通りの型。何百、何千と繰り返してきた動きなのに、重い。
頭では分かっているが腕が僅かに遅れる。
あの仮面の奥にあった顔と、あの声。
「……っくそ……!」
死んだと、もうこの世にはいないと……そう聞かされていた。
嘘だと思いたかった。
剣を教えてくれた背中。
その彼が、今は“敵”として仮面をつけて立っていた。
「……俺は、どうすればいいんだ……」
その呟きは、誰にも届かなかった。




