祈りの傍で - 4
「フィオ、待って!」
セラが止めるより早く、フィオは一歩、踏み出す――その瞬間だった。
風が裂けた音がした。
「……見つけたっっ!!」
鋭い叫びと同時に、凄まじい速度で影が駆け抜ける。
リオだ。
剣が閃き、迷いなく迎えへ振り下ろされる。
「――っ!」
仮面の人物は咄嗟に後退するが、間に合わない。
金属音が響き、仮面にヒビが入った。
「あなた、もしかしてヴェイルの方ですか?」
質問を投げるリオの剣は止まらない。
仮面の人物もいつの間にか短刀を取り出し、リオの連撃を止めていた。
優しい口調と話し方とは真逆な、剣術として完成された容赦のないリオの攻め。
「ほぅ……流石だな、冷酷娘の右腕なだけあるな」
「隊長のその名は口にしないでもらいたい」
すると、ヒビの入った仮面が、砕け落ちる。
露わになったのは、リオにとって見覚えのありすぎる顔だった。
それは、彼を剣へ導き生き方を教え、そして“死んだ”と聞かされていた人物・アルベルト。
仮面の人物は懐かしむように微笑んだ。
「久しぶりだな、リオ」
「……っ……アルベルト」
その様子を見ながらすぐに追いついたイリスはセラへ駆け寄る。
「怪我は?」
「大丈夫です」
セラは震えながらも、頷いた。
その目には涙が浮かんでいる。
一方、フィオはその場に立ち尽くしている。
イリスは彼女の前に立ち、見下ろした。
「……何をしている」
声は低く、感情を抑えているが怒りは、隠しきれていない。
フィオは唇を噛み、叫ぶ。
「だって……!あそこにいたら、ずっと子どものままだって……!」
「黙れ」
氷のように冷たい声にフィオが怯える顔を見せ黙る。
その様子を見たアルベルトは構えていた短刀を下ろすと、小さく息を吐くとマントを翻し、フィオの腕を掴む。
「え……?」
「約束は守る」
アルベルトとフィオの足元に、黒い影が滲む。
「フィオ!!」
セラが叫ぶが、影が広がり、2人は溶けるように消えてしまった。




