星々を見続ける
ある惑星の周りを回る衛星の岩石や撃破されたパワードスーツやその破片、それに軽乗用車ほどの大きさの敵性蜘蛛型宇宙生物の死体がそこら中に転がる荒地に、破損したパワードスーツが1体横たわっていた。
惑星の影から出た衛星を太陽が照らす。
パワードスーツの中にいる男は太陽光に照らされ目を覚まし、パワードスーツごと身体を起こしながら呟く。
『あ、朝か……』
衛星の地平線の彼方では時たま閃光が上がる。
未だ戦闘は継続中なのだろう。
衛星と惑星を隔てる宇宙空間には、数千の太陽系宇宙軍の艦艇が展開して惑星を攻撃しているのも見える。
太陽系宇宙軍の艦艇を見ていた目を星々が瞬く空に向ける。
暫く瞬く星々を見つめたあと呟いた。
『綺麗だなぁ』
男は幼いころから夜空で瞬く星々を見るのが好きだった。
それが高じて成人した日に宇宙軍に志願兵として入隊する。
宇宙軍の歩兵になれば宇宙の彼方の植民地惑星に派遣され、その惑星を警備する任務をこなしながら、故郷で見ていた星々とは違う星々を見られるだろうという思いから。
だが男が入隊した日宇宙の彼方で、植民地にできる惑星を探査していた太陽系連邦宇宙軍の偵察隊と、同じように勢力を拡大中だった蜘蛛型宇宙生物の軍との間で戦闘が勃発していた。
だから男は戦いにつぐ戦いに身を投じ叩き上げの下士官になって、蜘蛛型宇宙生物が支配する惑星と衛星を攻略する今回の戦闘に従事。
戦闘中パワードスーツに一撃をくらい気絶して先ほど目覚めて、星々が瞬く宇宙を見上げるまでその事を忘れていたのだ。
男はパワードスーツが発する酸素が無くなりかけている事を知らせる警告音を無視し、何時までも頭上に瞬く星々を見続けていた。




