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【外伝-2】 (ネコ耳サムライTS転生物語。ニホンは摩訶不思議な所でござるなー)スルガの国のミウラの主でござる  作者: モコ田モコ助
熊野詣で(夏)編

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1.花嫁御寮

再開しました

 歴は、葉(7)月初旬『西暦で8月の初めです』まで進む。

 

「日が沈むというのにまだ暑いでござる。ミウラ、風!」

『へいへい』


 両方を開け放した部屋でござるが、暑い。そこで、ミウラでござる。ミウラは雷を使う。雷は風に属する。ミウラは風属性でござる。何で風が雷かは知らぬが、風を起こすくらい朝飯前でござろう。

 現に風が吹いてきた。


「ふー、涼しー!」

 胸元をくつろげ、風を取り込む、汗が消え、涼しくなった。


「……何をしておる?」

『いえ、別に』

「いえ、別に」

 ミウラとお付きの方々が、風下に移動して、鼻をクンクンさせておる。


「……変質者としてイマガワ館警邏係に通報すると致そう」

 どっこらしょと立ち上がると、ミウラ含め全員が「申し訳ございませぬ」とゲザーしおった。


 若いおなごの体臭をかぎたいという気持は解る。(それがし)もクンクンしたいでござるが、対象が某だと引くでござる。ああ、それにつけてもイズモの巫女さまは惜しいことをした。事前に一言相談してくだされば、修行という名目でお持ち帰りいたしたものを……。諸行無常にござる。


 さて、ミウラと若い衆のお説教でもして憂さ晴らしをするか……


『おっとイオタの旦那! 魔獣反応有り! 魔獣出現でございます!』

「良い子は、誤魔化してはいけない」

『本当です! 信じて! スンプの町、いわゆるご城下です!』

 ミウラの顔が必死でござる。本物のようでござる!


 縁側に出て、町の方を見る。何も見えん!

「出動するぞ! お方々、魔獣出現! 場所はスンプご城下!」

「はっ!」

 二人組の内、一人が走られた。係の方への連絡でござる。


『イオタさん、いきますよ! 変身!』

「ちょととまて、某、今、外に出て――」


 ビュルルッ! ドピュッ! と、いかがわしい音を立て、服が引き裂かれ、おっぱいポロンでござる! おパンチュまでブッ裂けでござる!

 光の細帯が裸体を縛り上げるように巻き付き、特におっぱいを持ち上げるように巻き付き、ブルンとふるわせてから一際強く光る!『イオタさん戦闘服モードです!』


 残ったお付きの若いのが手を合わせて拝んでおる。


「ええい! 急ぐぞ!」

 だがしかし、事は一刻を争う。遅れれば遅れるだけ人的被害が出る。

 拝領の太刀を腰に差し、ミウラに跨った。


『ミウラ、行ッきまーす!』

 虹の輪に飛び込む。



 現場はスンプの町、南側にござる。時は日が暮れて夕闇迫る頃。

「いかん! 人が集まっておる!」

『フォーメッションA。分離ッ(オープンゲッツ)!』


 ふぉぅめいしょんえぃが何を指しておるか分からぬが、虹の輪を潜り、着地する前にミウラの背より飛んだ!

 飛んでる最中に抜刀。ナリソコナイに斬りかかる!


『だっちゃー!』

 ミウラの雷撃が魔獣を倒す。

 

 して――

 被害者らしき被害者はおらなかった。被害と言えるものは、尻餅をついたとか、走って転けたとかその程度。


『パーフェクト。完全試合でございます!』

「そうとも限らぬ」


 なぜ人が大勢集まっておったか。すぐ向こうに嫁入りの行列がいた。花嫁御寮を男共が身体を張って守っておった。なかなかの出来者共でござる。……が、花嫁が怯えておられる。


『それに、ケチが付いたと言われるかも?』

「では、ついて良い嘘をついてまいろう」

 某は刀を収めてから花嫁行列へ近づいた。


「怪我はござらぬか?」

「はい。危ないところをありがとう御座いました」

 行列の代表者らしき年嵩の男が代表でござった。案の定、情けない顔をしておる。


 花嫁御寮は……泣きそうになっておられる!

 暗い空気を吹き飛ばすように丹田に力を込め、声を張り上げた。


「ミウラの主からの伝言にござる! 傾聴せよ! 花嫁御寮はそのままでよい!」

「へへー!」


 一同ゲザー。花嫁御寮だけ、そのままで低頭でござる。お顔が引きつっておられる。


「美しき花嫁殿に幸多からんことを祈る。とのことでござる! 幸先良いの! 魔獣を退けた花嫁でござる。もらう花婿は羨ましいほど縁起がよいのう! 某からも言葉を贈りたい。お幸せに」

 にっこりと笑った。

 ようやく、花嫁御寮がはにかむように笑った。


 してて――

 夜の帳が降りたミウラの部屋にて、でござる。


「金襴緞子の帯しめながら、花嫁御寮はなぜ泣くのだろう……」

 昔、ミウラが歌っておった歌でござる。デイトナ殿が嫁入りして泣きじゃくっていた某に歌ってくれた歌でござる。文金島田に髪結いながら、花嫁御寮はなぜ泣くのだろ、と続く。

 

 ミウラが寂しそうにしておる。悲しそうにも見える。

 夕方見た花嫁行列でござろう。


 前前世。人だった頃のミウラは、研究と勉強ばかりしておったせいで、結婚することなく異世界に転生したと言っておった。

 今でこそオスのスケベネコでござるが、前前世のミウラはおなごでござった。花嫁衣装を着て歩きたかったのでござろう。……相手はおらぬが。


『いまは可愛いイオタの旦那がおられますので、ヨシと致しましょう!』

 いきなりガバリと抱きついてきおった。そしてそのまま、目を瞑り、眠りに入りおる。

 今宵は致すことなく寝てしまおう。……あと、飯と風呂も無しにした。

 

 してて、翌日。

『くっそ暑い! もう暑い! 毛皮着てるネコのことを考えろや太陽! 地球温暖化で脅そうたってそうはいくか! スッゾオラぁ!』


 日陰の中で、毛を逆立て、日に向い、吠えておる。

 ……一晩寝たらスッキリしたようでござる。ネコは過去を引きずらない生物でござる。


 朝の所用を済まして、薄い綴り本の読書などをしておったら、セナ様がみえられた。

「これはセナ様。ご用の向きは? なんぞありましたか?」

「む? いや……イオタ殿のご機嫌伺いとでも思うてくだされ。見たところ、ご気分は晴れたご様子ですな」

 晴れたご様子?


「はて?」

 無意識に袖の中で腕を組み、小首をかしげておった。


「御台様がお呼びでございます」

 セナ様は、軽く頭を下げられた。

 

 しててて――

「イオタ、御台様のお呼びより参上仕りました。して、ご用の向きは?」

「面を上げなさい。遠慮せずに。妾とその方の仲ではないか、水くさい」

「ははー!」

 御台様が屏風を背にし、一番の上座に座っておられる。左右に幾人かの女官の方々がお座りでござる。なぜか皆、困ったような? 某を慈しむような? 生暖かい目で見ておられる。


「うむ、まあ、なんというか、……気を楽にしなさいイオタ」

「はっ!」

 楽にしなさいと言われても、圧迫面接にござる。楽に出来ないでござる!


「今日ここへ、そなたを呼んだのは他でもない。えーっと、ほら、アレですよ、ねぇ?」

 ねぇ? と言いながらお付きの女官様を見られる。

 見られた女官様は困った顔をされて、それでも意を決した顔に変わられ、おちょぼ口を開かれた。


「御台様、イオタ様には、遠回しにお話しされるより、直接お話しされた方がよろしいかと」

 と、言いつつ口元を扇子で隠される。


「それもそうですね。ではイオタ、お話しというのは他でもございません」

 と、言いつつ、御台様も口元どころか顔の半分ほどを扇子でお隠しになった。


「昨日、スンプの町で花嫁の行列を見たとか?」

「よくご存じで」

「帰ってから、寂しそうに歌を歌っていたと、下の者が申し出ております」

「えーっと……」


 歌ったっけ? あ、歌った! 花嫁御寮がなんたらの中途半端にしか覚えてない歌! そういえば、もの悲しい歌でござる!

 あれ、聞かれてて勘違いしたお付きの方がご注進したのでござるか?


「やはりイオタも……嫁に行けなくなったことを気に病んで……」

「いえ、そうではなく!」


 そうではなくて! 前世でデイトナ殿が嫁に行ったのを悔やんで!

 女同士だったのに何もなかったのを悔やんででござる『公式にはですね』。

 どこからかネコの声が?


「寂しい歌だと聞きました。……着飾っている花嫁を見て、イオタも羨ましくなったのですね? 解ります! あなたの辛い気持は、この御台にぶつけて! 妾の責任でもあるのですから!」

「あの、あのッ!」

 修羅場でござった。

 


 してててて――


「という目にあったでござる」

『大変でしたね。あ、ちなみに御寮は関西の言葉で「様」みたいな尊敬語ですからね』

「知らずに使っておったでござる。もといして……」


 縁側に出て、控えているお付きの若い衆に声をかける。


「某のことを大事にしていただけるのは大変ありがたいが、いちいち上に上げないでいただきたい。見て見ぬ振りをして、そっと心にしまっておくのも、男の優しさでござる」

「申し訳ございませぬ! されど! これも拙者らのお役目にて!」

「武士たる者、お役目を投げ出すわけには参りませぬ!」

「「武士の意地でございます!」」

 ゲザーでござるが反論してきおった。


「見られながらの生活は心を病むのでござる。あまりなことが続けば――」

「あまりなことが続けば?」

 

「何処かその方らが知らぬ遠くで致しを致すことにする」

「申し訳ございませぬ!」

「そればかりはご容赦を!」

「我ら何のために辛いお勤めをしているのか分からなくなります!」

「夜番の二人に殺されまする!」

「「どうか平にご容赦を!」」


 こうして、不可侵条約が結ばれたのでござる。



「とはいうものの、息苦しいでござる。目立つのは仕方ないのでござるが、もうちょっと、こう、ミウラと二人だけで暮らせぬものか? アタ川温泉でも、監視の目がござるし」

『花嫁御寮の流れで、いっちょ新婚旅行なんか如何です? ヨシノはクマノ神社の下見を兼ねて。一度も行ったことないので、ほとんど歩かなきゃなりませんが』


「アタ川温泉行きが新婚旅行の代わりとなっておったが? 何度も行くのは如何なものかと」

『アタ川行きは治療目的でしたし、旅行って雰囲気でもなかったし、もう一度仕切り直しと言うことでいかがでございましょう? イマガワ組組長には、ちゃんと新婚旅行と申し出て。いや、姐さんに申告する方が良いかも?』

「それ、良いの!」

 こうしてクマノ行きが決まった! 




今編は毎日1話の連続投稿をいたします。


ご意見ご感想など、お待ち申し上げております。

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