12.タキちゃんと入浴
で、ヒタチの主と、タキちゃん、略して神獣の巫女二級免許保持者タキちゃん『長くなってますが、略ってどういう意味でしたっけ?』は、アタ川の温泉にしばらく逗留することになった。
初めて聞いたヤタガタスを近隣の神獣様に飛ばしている最中でござる。
近隣の神獣様へ緊急招集のお知らせにござる。初めて聞くヤタガラスとやらを飛ばして。
「ミウラも飛ばせるのな」
『神獣ですからね、当然です!』
そういえば、こやつ神獣であった。
『なんだと思ってたんですか?』
「最近は某の上に乗っかって腰を振る大人の玩具かと」
『なんてことを! でも、それで良いです!』
『羨ましいぞ、ミウラの主!』
『もっと褒めてください!』
某の中で、神獣様の評価がどんどん下がっていく。フシミの主は「神獣様」でござるが、ミウラとヒタチの主は「神獣」と呼び捨てでよかろう。いずれカタカナ表記になるであろう。
「ミウラの主よ、一度にバーっと飛ばすことは出来ぬのか?」
『ヤタガラスは1回1羽だけで、ファンネルのように複数飛ばすことは出来ません。距離も精々、お隣の神獣様に届かせるのが限度です』
「そういう後付設定でござるのだな?」
『後付設定って何ですか? ヤタガラスは最初からいましたよ。説明してなかっただけで。だってこれ、イオタさん視点でしょ? 神視点だったら行き違いがなかったんだけどなー! おしいなー! 神視点だったらなー! だいいち、ヤタガラス無しでどうやって連絡を取り合っていたと思ってたんですか?』
「それが不思議だなーと。この前、出かけるときミウラの主自ら近隣の神獣様へ挨拶に行ってなかったっけ?」
『やだなー。隣近所はヤタガラスで済ませましたけど、離れた方々には近くまで行かないと届きませんから。ヤタガラスは中近距離用なんですよ。整合性がとれてますよ』
「……そういうモノでござるか?」
『そういう設定です。ねえ、ヒタチの主?』
『ミウラの主の言う通りだ。なんだ、イオタは知らなかったのか?』
「……知りませんでした。タキちゃんも知らぬはず」
「あたし、知ってました」
……力業でござったか。
して、ヤタガラスの件は手に負えないので放置するとして――
「タキちゃん、お腹もいっぱいになったことだし、お風呂に入って綺麗にしようか?」
「は、はい……」
なんか、すっごく時間が経ってしまった気がするが、昼ご飯を食べ終わって水飲んで一服してるところなのでござるよ。濃いーぃ会話のお蔭で半日分気疲れしただけでござる。
お湯にはいるのを怖がるタキちゃんである。なんで?
芋とか菜っ葉とかと同じように茹でられる感覚で怖いのだそうな。
なだめすかししながら温泉に入る。茹で上がった頃合いを見計らって洗い場へ。
石鹸で……泡が立たぬ。温泉は何故か泡立ちが悪いのでござるが、それでも泡が立たぬ。五回も石鹸で洗うとどうにか泡が立つようになった。酷い汚れでござった。
「はーい、頭洗うよー目を閉じてー。ザパー!」
「うぷっ! あぷっ!」
はっはっはっ! 頭にお湯をかけただけで溺れそうになっておる。可愛い可愛い!
頭も何度か洗い、髪保護液で仕上げる。
もう一回お湯に浸かって、上がって、更衣室へ。
お終い。
『描写ッ! イオタさん描写ぁッ! なんで旦那はロリに対し淡泊なんですかッ!』
『せっかくの入浴場面を何だと思ってんだテメェよう!』
ミウラとヒタチの主が怒っておるが、なんで?
「ボンキュバーンなお姉さんと一緒の入浴ならともかく、こんな小さな子供に需要があるのでござるか?」
『だからッ! このネコ耳はぁーッ!』
『クッソ! 使えねぇネコがぁー!』
「何を言っておるのだ? オッパイがないのでござるよ?」
『その良さを! ちいぱいの価値が解らんのですかぁ!?』
『おっぱいの大きさで差別してはいけない。大っきなオッパイも、ちいパイも、オッパイに代わりはねぇんだ! オッパイに上にオッパイを作らず。おっぱいの下にオッパイを作らず!』
『名言です! イオタさん、ほら! ほら!』
身体を拭き拭きし、髪の毛をゴシゴシと拭き上げ、乾かすとアラマァ!
『ちょっと、無視しないでくださいよ!』
ツヤツヤフワフワの髪をした美少女! 肌のきめが細かい美少女!
『いいんじゃない?』
『うん。手を出さなくて良かった。手を出さなかった過去の俺、褒めてやるべ』
して、ココまで簡単に磨き上げられると、これまで着ていたおべべじゃ似合わない。
『イオタよ、タキのおべべは、タキの主人たる俺に任せよ』
「お任せいたす」
不安だらけでござるが、とんでもない迫力に押されてしもうたでござる。
『ミウラの主をならって……着装!』
「あっ!」
ドビュッ! ビュルルッ! ビビューッ!
いかがわしい効果音と共に、タキちゃんの全身を光の帯が包んでいく。
乳首だけのちいパイとか、ぺたんこな腰とかお尻とか、締め上げるように……
「特殊方面のイヤらしさを感じ取れるのだが?」
『完全な誤解ですね!』
『神獣の霊験を信じよ!』
「霊験の評価がどんどん下がっていくでござる」
形が整い、光が消える。
某の巫女衣装に準じた子供用巫女衣装を着たタキちゃんが、ポカンと口を開けていた。
「可愛いじゃないか!」
『姿見です。空間凍結ッ、ぬぅぅぅうううん!』
『キサマ、その技を使うか!?』
なんか、とんでもない大技が使われようとしている気配を感じる。
『キィィエエエエーッ! ブシャァー(吐血)』
裂帛の気合いと共に、等身大の姿見が現れた。支え無しで空中に浮かんでいる。素晴らしい見せ物でござる。
「ええー! これがあたし!?」
ほっぺに手を当てながら驚くタキちゃん。ビックリするくらいに綺麗になったのだ。……汚れを落としてみすぼらしさを無くしただけでござる。女性的という見地から申せば、ガキンチョに過ぎぬが。
『だからー!』
『ミウラの主の教育が悪いのでは?』
髪の毛を一本に束ね、紙縒で括った。某とお揃いの髪型でござる。
『これは良し1本ッ!』
『正式な巫女髪型に承認!』
さっきから後ろでうるさいでござるよ。
とにもかくにも、某以外でもう一人の神獣の巫女が誕生したのでござる。
「タキちゃん、よくよく神獣様にお仕えなされ」
「ありがとう御座います。イオタ様。あたし、命を賭けてヒタチの主様にお仕えします! そして美味しいご飯をお腹いっぱい食べるの!」
「はっはっはっ! 初々しいのう。そんなタキちゃんに一言もの申す。主という言葉には、様と同じ尊敬の意味が入っておる。ヒタチの主主とかヒタチ様々と呼んでおるのと同じでござるよ。故にヒタチの主様、ではなくヒタチの主、とお呼びせよ」
「はい!」
にっこりと笑いながら良い返事をするタキちゃんであった。
『そこに痺れる憧れるッ!』
『よく絡むのだぞ……もとい、励むのだぞ!』
とりあえず抜刀する。




